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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.137 )
日時: 2011/03/27 17:58
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)


「あー・・・なんだ、昨日のことなんだけど、別に俺は怒ってないからな?」

「え?」

愛はびっくりしたように目を見開く。まったく怒ってませんよてきなオーラを自然と流す俺のことをまじまじと見つめてきたかと思うと、

「・・・ほんとに?」

と聞いてくる。・・・ま、そりゃ他人から見れば明らかに愛のほうが悪くて、怒られても当然、といったふうな雰囲気はあるのだが、それは俺の体長が悪いというのを知らない奴らが思うことだ。愛はただそれを直そうとしてくれただけで、思春期男子を欲情させてぶったおそうなどという考えは当然ないわけだ。それを知っている俺は実際、自分で笑顔を取り繕わなくても自然と大丈夫てきなオーラを出していたに違いないが、まぁ練習だ。練習。

「だって愛は俺のことを気遣ってくれたんだろ?感謝こそするが恨みはしないね」

若干気恥ずかしいセリフを、ポーカーフェイスの俺はつっかえることなくいう。それに愛は顔を赤らめる。・・・他人から聞いても、女子が男子のことを気遣って・・・とかそういったセリフは恥ずかしいものだ。とくに思春期真っ盛りのやつらにとってはな。

「おかげでほら、俺はもうピンピンしてるからな」

愛のさわり心地のいい頭の上にポン、と手をおいて、俺が妹にやるのと同じようにそっと優しく撫でてやる。同年代の女子に対してやるのはこれが初めてだが、愛に大してだとやはり妹にしているのとそう変わらず、気恥ずかしい気分もまったくなかった。
愛は破壊力抜群の上目遣いでほんとに、ほんとに怒ってない?といったふうな目で俺のことを見つめてきて、それに俺はうっ・・・と一瞬ポーカーフェイスをやぶられそうになる。思えば俺は、去年辺りから女子の上目遣いに弱くなっている。最近では妹に上目遣いで見られるだけで俺はうっ・・・とうなってしまうほどだ。
大丈夫、大丈夫だから、もう安心しろ、と言いたげに頷いた俺は、愛の頭から素早く手をひいて、そそくさと立ち去ろうとする。だが、愛は俺のジャージの端をつかんできて、本当に大丈夫?と捨てられた子猫みたいな感じの目で俺のことを見てくる。・・・やばい、もうまじでこれやばい、今すぐにでも愛のことを抱きしめたい欲求が強くなってくる。・・・男にあるのかどうかはしらんが母性本能だろうか?それとも親心というやつだろうか?すごく愛が愛しく見える。自分の子供ができたみたいに思う・・・やばい・・・理性が崩れ去るぞ、いくら俺の脇役スキルが強いからって、これには勝てない・・・く・・・耐えるんだ、俺・・・!!
・・・それが、あだとなった。俺が早く愛に返事を返しておけば、こんなことにはならなかった。人生で一度しかないはずの、宮西第二中学校カップル伝説を捨ててまでも、走り回る必要はなかったはずで・・・誰も傷つけずに、すんだはずだった———
そう・・・俺が馬鹿みたいに理性を抑えるのに必死になっていたときに現れたのは・・・バスケ部の、歩よりもかっこよくて、モテモテで、・・・男子の間では女ったらしということで有名で、さらに何度も何度も女子生徒を自分の家に連れ込んで、夜遅くに帰しているというのを目撃されているという、俺がこの学校の中でもっとも忌み嫌うやろう・・・西島浩一郎だった。

「・・・おおっと、たしか君達は、二年生の中、いや、この宮西第二中学校の中でもっとも可愛い倉橋さんと、・・・人生の負け組、鎖牙君じゃないか。こんなところでなにやっているのかな?」

俺はその声を聞いた瞬間、俺は目を鋭くさせて、ジャージのはしをつかむ愛の手を思わず強く払いのける。それが間違いだった。愛はそれによってやっぱり怒ってるんだ・・・といったふうに涙を目じりに溜めて、今にでも泣き出しそうになってしまう。それをみた、中学生だというのに耳にピアスをつけていて、さらに校則であるジャージの上のチャックの位置から思い切り外れた下のほうにチャックをさげていて、いつも肩で風を切って歩いている西島は、ニヤァと顔を、おもいきり歪める。
そう・・・こいつは前々から愛につっかかっていた。一度だが、告白さえしたこともある。それをすべて、ことごとく愛はかわして、女子同士の人間関係がくずれようがなんだろうが、本当に嫌そうに西島のことを避けていた。一度か二度、先生に報告したことだってある。そのことから西島は、愛になにも与えず、ただたんに仲良くしているだけの俺たちにちょっかいをかけるようになってきている。最初は俺のシャーペンが無くなっていたことから始まり、最終的には歩のあることないことを噂して、女子の間にそれを流しているという陰険な手口で俺たちをどんどんのけ者にしようとしてきた。
まぁそんなやり取りがまだ続く中・・・この状況を、こいつに見られるのだけは、まずかった。

「・・・そうか、そうだったのか倉橋さん、さては鎖牙君に嫌われたね?いや違うな・・・鎖牙君が一方的に君のことをいじめたんだね?可愛そうに・・・ああ可愛そうに」

「ち・・・ちがう!!裕介はなにもしてない———」

西島の言葉に愛が言い返そうとした瞬間、西島の顔が凶悪に歪む。それに愛は恐怖して、俺の影にかくれようとするが、俺を無視して西島は、愛の手首を思い切りつかむ。

「そんなことは関係ねぇ。ようは俺はこういいたいんだよ。お前の仲のいい『おともだち』が実は影で女を泣かせているひどい奴だという噂を流されたくなければ・・・俺のものになれってことだよ、倉橋愛」

強引に愛の手首をつくみ、逃げようとする非力な愛に、容赦なくバスケで鍛えた腕力を振るう。当然愛はそれから逃げられるわけもなく、首をたてにふることも、横にふることもできなかった。
それをみた西島は、ニコッとさきほどまでの険悪なムードを一気にしずめて、笑う。だがその笑顔はとても冷たく、まるで愛のことを見下しているかのような笑顔だった。