コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.138 )
日時: 2011/03/27 18:00
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

「まぁ今日のところはいいよ、別にすぐに広める気は無いしね。そうだねぇ・・・バレンタイン当日に、俺に手作りチョコレートを渡して、みんなが見ている前で告白してくれよ、そしたらこの人生の負け組のあることないことの噂を広めるのをやめてあげるからさ」

そういい残して愛の手首を離す。愛は・・・完全に怯えきってしまった表情で西島のほうを見ている。・・・愛は、見た目も心もまだ幼い。
それを知ってか知らずか西島は愛を脅している。完全に悪だ。どれを基準に正義か悪かなんて決められないけど、確実にこいつは・・・、か弱い愛を脅し、脅迫するこいつは・・・悪だ。
満足した様子、今日は運がいいなぁとかいいたげな様子で去っていこうとする西島を、俺は睨む。睨みながらも、愛の手首をそっとさすりながら、怖くない、怖くないよ、と子供をあやすように頭を撫でてやる。
・・・俺には言い返すことは出来なかった。結局俺はただの『脇役』で、悪だが、自分の人生を謳歌している西島に一度拳を叩き込むことは出来なかった。そう・・・俺はただの脇役。俺の友人である愛が、どんなやつとくっついても、それを応援して、いい奴を気取る・・・ただの汚い、穢れた心をもつ・・・脇役なのだから。




 〜バレンタイン二日前〜



その日、愛は学校にこなかった。
それは当然のごとく、昨日の出来事が関係しているはずだった。それなのに、その原因を作ってしまったであろう俺は、のんきに学校にきて、のんきに歩としゃべって、のんきに一日をすごそうとしている。
実際、俺も昨日は悩んだ。愛が、あんな最低な男とくっついていいのかと、さんざん悩んだ。だが、それは愛が決めることで、俺が決めることではない。双思わせるのに当然のごとく苦労もした。俺が原因でこうなったのに、なにが愛が決めることだ、だ、とさんざん自分で自分を罵った。だけども、俺は口をだせる立場ではないこともわかっていた。この件については、俺がほぼ間違いなく原因で、愛はそれに巻き込まれただけだ。だけども、西島は愛を的にしている。自分の人望をつかって、愛を脅している。それに、ただ脅しの材料とみなされた俺が、どう口をだせよう。実際、俺は愛が傷つかないならいくらでも女子に罵倒されてもいいし男子に殴られてもいい。それが脇役のできることなら、甘んじて受けようと思う。だが愛は心優しい女の子だ。俺が傷つかないためにはどうしたらいいんだろうと、悩んでいるはずだ。考えることは俺と同じ、愛が、それとも俺が・・・たったそれだけの違いなのだから。
実際愛は、これまでに西島の被害にあっている中でもっとも強い被害者なのだ。愛が西島を振ることによって西島のことを好きだった女子たちからいじめや罵倒をされて、さらには西島のことを好かない女子からも、自分達もいじめられたくないからといった理由で愛を避けた。
別段男子は愛のことが嫌いではなく、むしろ愛のことを庇うやつのほうが多いい。男子のほとんどは西島のことが嫌いで、今にでもぶっ殺したいと思っているほどの奴もいるぐらいだから、そんなやつに味方をして女子に好感をもとめるよりも、健気で愛らしくて、そしてなんとも可愛そうな愛一人からの好感を得るほうが、いいと思っている心優しいやつらが多いからだ。
当然、そいつらは俺たちの味方だ。そいつらが西島のことをとっちめてくれれば万事解決、愛は西島に無理な告白をさせられることもなく、今までどおり中学校生活をおくれるのだ。だけども・・・それは聊かぶしつけなものである。
第一問題は俺なのに、他人に頼るなんてことはどうかしているのだ。俺がどうにかしなければならない問題なのに、他人に頼るなんてどうかしている。
そんなことから・・・俺は帰ったら愛の家によりたいと思う。愛に、前のことでは本当におこっていなくて、俺はむしろお前のことが好きなぐらいだと言ってやろうと思う。そうすることによって愛の気が軽くなってくれればいいのだが・・・もしも軽くならないのなら・・・あることを言わなければならない。それは諸刃の刃で、いつも自分のことよりも他人のことを優先して考える心優しい愛には効果が抜群ともいえないが・・・できることはやってやろうと思う。あいつの人生が狂わないように、あいつの人生を他人に左右されないように、選択させるには・・・もう、それしかないのだから。





ピンポーン、という、軽い音がオートロックのマンションの入り口玄関に中に響き渡る。1004という数字が浮かぶ、大きな電卓みたいなものが置かれている台の横にある、スピーカーの中から、ガチャッという音がなり、どちら様ですか?と愛のお母さんの声が聞こえてくる。

「えー・・・愛さんのクラスメイトの、鎖牙裕介です」

何度か愛の家にら訪ねているし、お母さんとは顔見知りなのだけれども、どうしてか俺はこんな挨拶しかできない。もっとフレンドリーにしようものなら軽い男と思われ、即刻愛との縁を切られてしまうという可能性をなぜか思い浮かべてしまうからというのが一番おおきな理由かもしれない。

「あ、裕介君?どうしたの?愛の具合、診に来てくれたの?」

「ええ・・・まぁそうなんすけど」

「あらまぁ!!ほら、愛!!愛しの裕介君がきてくれ———」

「ママ!!」

「・・・ま、まぁ入ってちょうだいな、愛も裕介君が来てくれてうれしいみたいだし、具合もよくなってきているからね」

「・・・了解っす」

元気はつらつな嘉子お母さんの声とともに、オートロックマンションのガラスのセンサー式自動ドアが開く。俺はそこを通って一階でちょうど止まっていた、赤いドアが目印のエレベーターにのり、十階のボタンを押す。このマンションは十五階建てで、愛の家は十階にある。
いかにも高級そうなマンションで、毎回俺は気後れしてしまう。まぁ高級そうな外見から見て分かるのだが、愛の家はなかなかに金持ちだ。
警視総監の父親、カリスマ脚本家の母親。どちらも俺の両親の合計金額ぶんぐらいは稼いでいるという、なんというか恵まれた家庭だ。
エレベーターは十階に到着すると、チンッという音を鳴らす。それとともにドアがスライドして開き、俺はその狭い空間からでる。愛の家はエレベーターから見て右側一個目のところだ。俺は右側に歩いてすぐにある愛の家の玄関前にあるインターホンをもう一度おす。

「はーいはい、いまでますよー」

という嘉子お母さんの声がくぐもって聞こえてくる。と思ったのもつかの間、すぐに玄関のドアは開かれ、見知った、一個人の母親とは思えないほどに美しい、美女がその姿を現す。
目鼻立ち、顔立ち、体つきはどれもとっても美しい。だがそこにはどこか愛を連想させるものがあり、愛の将来はこんな感じになるんだろうなと思わせるところから、ちゃんと血がつながっていることが分かる。セミロングの髪の毛は小さなポニーテールにまとめられており、見た感じだとまだ二十歳ぐらいにしか見えないが、これでも立派に三十五歳なのである。信じがたい話だが・・・。