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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【企画終了】 ( No.172 )
日時: 2011/05/02 00:14
名前: だいこん大魔法 (ID: OkVLMN/u)

「あー・・・あのね、私が今まで裕介に説明したのは・・・ほんの、三分の一ぐらい・・・かな?」

「・・・まじすか?」

頭が痛い話だった。もともと頭の悪い俺にとって、そんな量を覚えられるとは思えない。ていうか今まで教えてもらった魔法でさえも覚えられている自信がない。

「あー・・・じゃぁ今この状況でいろいろ質問するのはやばいから・・・ひとつだけいいか?」

「うん、いいよ」

「その【封呪】は俺にも使えるのか?」

「ん〜・・・裕介はもとから魔術師ではないから無理だね〜。魔術師にはもとからうまれ持っての魔力があるけど、契約者にはそれがないからね〜」

「うーん・・・簡単に強くなるいい方法だと思ったのに・・・」

「ん〜、裕介はもう十分強いと思うよ〜?だって【禁呪】覚えてるし」

「あ、そうか」

そういって俺はまだ右手にのこる炎を確認する。白い火焔はエルに受け渡した結果、左手から消滅している。今だこの魔法にはどのような能力があるかわからないが、魔法の受け渡し、攻撃、形状固定・・・などなどその程度のことならわかっている。ていうかいまだにこれが【禁呪】なのかどうかさえ曖昧だけど、エルがいうからには・・・だいたい間違いは無いだろう。

「ぬううぅぅぅああああ!!!」

聞こえたのは絶叫。それに俺たちははっと振り向く。今はもたもたと話している暇ではなかったことを思い出す。俺が放った炎の柱の中心から、青い光が見えている。それはグレンがついに、俺の魔法を打ち破ることに成功した、という証だ。今の攻撃でどの程度のダメージをやつにあたえたかなんて俺には見当もつかないが、【禁呪】どうしの力ではやはり、グレンのほうが上だったようだ。

「エルシャロンさま!!鎖牙さま!!きますよ!!」

「———!!各自防御魔法の展開!!ルミとレイは私の後ろに隠れろ!!」

ローラと蛍が同時にさけぶ。あの二人ならば相手の攻撃を先読みぐらいはできるのだろう。・・・蛍はまだ最大限の力を発揮できない時間帯だというのに、それが可能なのか・・・と少しその能力に嫉妬しながらも俺は、エルの後ろにそそくさと隠れさせてもらった。

「・・・裕介?ちょっとなさけないよ?」

「う・・・うるせー!!まだ俺は防御魔法なんて覚えて無いんだよ!!」

「ふーん・・・まぁ、いいよ。私が裕介を守ってあげる!!」

「うへぇ、やっぱなさけねぇなぁ、俺・・・」

・・・エルを守るために戻ってきたというのになんだこの有様は・・・とか心で思っちゃったりして、俺はどんよりとした気分になる。だが、次の瞬間に聞こえた爆音によって、俺の意識は一度逃げ出した、戦闘のほうにむけられることとなった。
それは蒼き衝撃だった。氷の波が俺の炎を押しつぶし、辺り一体を凍てつかせながら広がっていく。その量はハンパなものではなく、間違いなく当たれば一撃必殺ものに間違いなかった。だが俺は、エルがはなった防御魔法、主に【封呪】の能力で作り上げられたその防御魔法によって無傷ですんだ。
・・・これが、グレンの【禁呪】、ロンギヌスの実力か。・・・やっぱり、足がすくんで動けなくなってしまいそうなほどに強大な魔力をもっている。だけど、今の俺には・・・エルがいる。エルが前で俺のことをかばってくれている。大切な主が、俺のことを守ってくれている。ただそれだけのことなのに、俺とエルとつながっているように感じられて・・・心が暖まっていくような感じだった。そのことによって俺のなかに芽生える恐怖は潰されていき・・・再びの戦闘への意欲がわきあがってくる。

「『アスカロン』の片割れ・・・『アバロンの劫剣』よ・・・辺りに押し寄せる邪の元を焼き尽くせ!!」

【禁呪】の使用にあたって、注意しなければならない点があると、エルはいっていた。それは、【禁呪】を使用するさいに、その技を使うんだぞと体に言い聞かさなければならないことだ。それをしなければ、咄嗟の行動によって放たれた【禁呪】はその本人の自我を喰らい、自らの欲望のままに暴れまわってしまうのだ。それを防ぐために、簡単な方法が一つある。それは・・・今からやる行動をただ、口にするだけだ。
俺はエルの後ろでそうつぶやいて、凍りの波がおさまってきたところでジャンプをする。そのまま右手にもった刀に意識を集中させて、その刀の大きさを二周りほど大きくする。そのさいに刀を形作る炎が荒れ狂い、俺のことを飲み込もうとするが、それはすぐに軌道をかえて、再び刀の形を作る。そしてそのとき出来上がったのは、俺の身長よりもはるかに大きい、紅き炎でできた太刀だった。
俺はそれを両手でにぎる。【禁呪】を使用するためにもうその行動を口にした。だから———俺はそれをまるで樵が斧で薪を縦からかち割るように・・・大きく上に振りかぶり、両腕が限界まで後ろにいったところで、それを思い切り、体をそのまま空中で回転させる勢いで、縦に円を描くように、振り下ろした。
そうして振られた太刀から炎がこぶれおちる。その炎は剣を高速で振ることによって発生した縦に弧を描く鎌鼬に魔力でくっつき、炎の鎌鼬となってグレンにおそいかかる。グレンはもう炎の柱からぬけだしていて、荒い息をはきだしている最中だった。
尋常ではないほどの大きさをほこる・・・縦に弧をえがく炎の鎌鼬、その大きさは大型トラックの比に値するもので、相当量の切れ味、火力、魔力が宿っていた。二つでひとつの『アスカロン』、【禁呪】といえども、片方だけでも相当な力をだすことはできる。おそらく・・・『イフリートティア』の最大質量よりも、強大なことだろう。

「奏でよ蒼炎」

その俺の行動をしたからみていたエルが、そうつぶやくのが聞こえた。その瞬間、エルが今まで展開していた防御魔法は形を変えていき、エルを中心として円を描くように燃え上がる。その美しい蒼い炎はどんどん凝縮されていき、最終的にエルの差し出した手に集まっていく。
その小さな炎をエルは、グレンにむかって投げつける。その炎は真っ直ぐとグレンに向かって飛んでいき————その途中、巨大な、それはもうあらわせば大の大人の人間が十人ぐらいあつまった体積よりも大きい、竜の顔に変わり、その巨大な竜の頭は口を開いて、グレンにおそいかかっていった。