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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【本編再開】 ( No.176 )
日時: 2011/05/05 11:55
名前: だいこん大魔法 (ID: OkVLMN/u)

俺の炎の鎌鼬、エルの蒼き炎の竜の頭は———どちらも瞬間的な速度でグレンにせまっていき———

「・・・なめんじゃねえよヘドロ以下の価値しかネェ魔術師どもがぁ!!」

まるで、その攻撃を予想していたかのように、グレンはロンギヌスを地面につきさす。その刹那、グレンの半径一メートルぐらいのところに巨大な氷の防御壁が生まれる。それはことごとくに俺の炎の鎌鼬と、エルの蒼き炎の竜を防ぎ、消し去る。だが、その使用時間は長いものではなく、すぐにおさまってしまった。・・・あれが、もしもいつでも使えて使用時間が長ければ・・・おそらく、打つ手はなかっただろうから、今はこれでよしとしておこう。

「・・・エル!!ローラたちをつれて後ろに下がれ!!その間に魔力の吸収、及び【禁呪】の使用準備をたのむ!!」

「・・・わかった!私が【禁呪】を発動するまでそれなりに時間かかるし———」

「わかってる。ちゃんと俺が守ってやる!!」

そういいながら、俺は地面に着地する。エルはローラたちを意思をこめた小さな炎を飛ばし呼び寄せて、後ろに下がっていく。それを横目で見ながら俺は———単身で、さきほど、あまりの恐怖で逃げ出してしまうほどの力の差があるグレンと———対峙する。
俺は武器をちゃんと持っていることを確認しながら、グレンの真正面に立つ。身長、気迫、魔力、精神・・・そのすべてが、グレンのほうが俺に勝る。それが、魔術という世界を生きぬいてきた主人公と、平凡な人間の世界で脇役に堕ちた俺との・・・差だ。だけども、俺は這い上がった。かつて一度だけ、主人公にもどったことがある。だけどもそれは、誰かのためで、自分のためではなかった・・・だけども・・・今回はエルのため・・・それ以上に、自分のために———俺は魔術という世界でもう一度自分の道を見つけようとしている。だからこんなところで負けてはいけない。年忌が違えども、同じ能力者だ。生きてきた世界が違えども、今は同じだ。だったら———やってやろうじゃないか。まだこの世界に入って間もない俺がどうにかできる相手ではないこともわかっている・・・だけど、やるしかないのだ。それが俺の残された選択肢で———自分が選んだ、道なのだから。
刀から紅蓮の炎が暴れ始める。自らの名前の元となる紅蓮の炎は、俺の決意を察知したかのように———この量を増した。
一方で、グレンのロンギヌスから放出される魔力の量も増していた。それは、グレンが本気になったという証なのだろうか、さきほどまで感じていたグレンの力が———圧倒的に増していた。それと同時に———サングラスを外し、封印が開放されているグレンの瞳は———白目がなくなり・・・その目のすべてが、青に染まっていた。
グレンの周りの空気が、うねりを上げる。水色に染まった空気はグレンの周りでうねり、まるで竜が咆哮を上げているかのような音を上げ始める。空気さえも自らの支配下にグレンは置いてしまった。ロンギヌスの周りにあるもの全ては氷りつく。空気は次第に薄い氷の膜をつけ始め、固まっていく。そう———俺の炎の力でさえも溶けないほどの強さで———凍り付いていく。それは何を指すのかというと・・・

「さあぁてぇ・・・?この結界の中、お前らが息を吸えるのはいつまでだろうなぁ?」

・・・そう、空気の量が、減っている。いや違う・・・空気の量が減っているのではない。空気が氷に支配されることによって———結界の中の空気を、一時的に吸えないものに変わっているのだ。
俺はそれに顔をしかめる。それから後ろをむいてエルたちは大丈夫かと見る。すると、エルのところにはオレンジと赤の間のような色の空気の幕ができており、その影響を受けていないようだった。・・・だとすると、今空気が吸えなくなるという現状で、一番危険なのは———俺か。
だが、そんなのは些細な問題だ。戦いが始まった息をする暇なんてないだろうし、なによりも———コイツ相手に、呼吸なんていうものは、ただのお飾りでしかないからな。

「ハッ・・・、それで勝った気になってんのか?呼吸なんて意識すれば五分以上はいけるもんなんだぜ?」

だから、俺は今もつ魔力をすべて刀に注ぎ込んでいる間に、そう無駄口を叩く。グレンは、それが苦し紛れのおしゃべり、時間稼ぎだとでも思ったのか、ニヤァ、と口を歪めて

「じゃぁ・・・テメェはあれか?空気か完全に凍るまで数十分、そしてお前のいうその五分を合わせて十五分ぐらいで俺をどうにかしようっていうのか?」

それに俺は、同じように口元を歪めて

「ああ」

とキッパリという。だけども、グレンはそれに笑いはじめる。そんなのは無理だといわんばかりに、笑い始める。・・・そうだ。そんなのは不可能だ。エルでも倒せなかったこの男を、俺一人で、しかもたった十五分程度で、倒せるわけがない。だけど・・・まぁそんときはそんときだ。この命はエルから貰った命・・・だったら、最後の最後にエルの役にたって死んでやるさ。それが———俺がエルのためにできる、唯一の償いだからな。