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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【本編再開】 ( No.184 )
日時: 2011/05/24 21:53
名前: だいこん大魔法 (ID: OkVLMN/u)

・・・場所は移る。
【氷翼の魔術師】の胸に、【紅の魔術師】のなげた【禁呪】の剣・・・『ブリューナク』が貫くのを、屋上の給水タンクの裏側から———、こっそりと伺う影が三つあった。
それは、魔術でコーティングされたコートをきていて、気配を消す効果をもっていた。当然のように、裕介たちが気がつくはずもなく、この戦いを、最初から最後までずっと見ていた。
コートをきた三人組のなかにいた一人が、顔をおおいかくすほどにふかぶかとかぶっていたフードをはずし、はぁ、とひとつ、ため息をこぼす。それは、【氷翼の魔術師】に対する嘲笑がまざったようなため息で、当然のように・・・そのフードをはずした・・・女の口元は、少し笑っていた。

「結局のところ、【氷翼の魔術師】もたいしたことないんやなぁ?」

それは、少し方言がはいったようなしゃべり方だった。だがその声には、あきらかな嘲笑がふくまれていて、むしろ、【氷翼の魔術師】が負けたことに対して喜んでいるようでもあった。

「ちょっと期待はずれでもあるんやけどなぁ・・・ま、あれがあいつの実力っちゅーことやな」

「・・・【氷翼の魔術師】は、自分より強いやつを捜し求めすぎたせいで、ろくに仕事もしてなかったからなぁ?まぁ弱くなっちまっていてもしょうがないだろうが・・・あほらしい。強いやつを捜し求めるんだったら最初から【紅の魔術師】にターゲットをしぼればよかったのになぁ?」

「まぁそんなこといわな、格の下がった、出来損ないの強者の末路でもみとこうや、なぁ?【好戦的な日陰】」

「わざわざ負けるために努力をしてきた雑魚の末路なんてみたくもないね・・・それより、あのなかに【幻影虫】がいやがるな・・・、なぁ、今すぐ俺たちであいつらを潰さないか?十二分に戦力は足りているはずだからよ」

そういいながら、もう一人がフードを外す。その外見はまだ幼く、十二歳から十四歳、といったぐらいに幼い男の子が、瞳を歪な紫色に染め上げ、手から漆黒・・・人間の影よりも、闇よりも、なによりも暗い———影を、手に宿し始める。それを、女はみて・・・

「あんたのいいたいことはよぉくわかる。だけどな、ここでウチらが動いたらちょいとお偉いさん方が怒るんでな、ちょいと抑えてくれへんか?」

完全におちゃらけた口調だが、【好戦的な日陰】といわれた少年は、その重大さがわかっているからこそ、手に宿し始めていた影をひっこめる。今は手を出すべきときではない。だけどもいずれくるで有ろうそのときにそなえるためにも・・・少年は、影をひっこめた。

「・・・そうですね、ここは手を出すべき時ではありません、鈴茶様のいうとおり、一旦ひきましょう」

そして、最後にフードをはずした、まだ十五歳ぐらいの少女が、そういう。二人に攻められては、流石に少年はもうなにも抵抗ができないのか・・・

「そう・・・ですね、では、【氷翼の魔術師】の敗北の件を上に報告してから出直してきましょう」

と、突然口調をかえ、歪な紫色の瞳を普通の黒の瞳に戻し、身を翻しながら崩れ逝く結界にむかってジャンプする。それに、最後にフードをはずした少女が続き・・・、最後に、鈴茶と呼ばれた少女が・・・

「鎖牙裕介・・・【紅蓮の契約者】、か。これはまた・・・【壊れてしまった裏切り者】並に厄介なやつがでてきたもんやなぁ」

と一言つぶやき、少年たちのあとに続くのだった。