コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ラジオ公開 ( No.199 )
- 日時: 2011/09/01 02:18
- 名前: だいこん大魔法 (ID: qd1P8yNT)
二話スタート
プロローグ、主人公が導く一筋の夢
「お前は・・・なんのために生きているんだ?お前はなんのために人を傷つけるんだ?お前は誰のために・・・涙を流すんだ?」
月光に照らされた、ブランコ以外なにも存在しないひとつの公園の中に、二つの人影が存在していた。
月光によってある程度公園の中は明るくなって入るが、それでも影ができていて、その人影の正体を確認することはできない。だけども、片方の背が高くて、片方の背が小さいということだけはわかる。
片方の、背が高いほうの人影が、、最初の言葉を背の小さいほうに語りかける。夜の喧騒も、昼の喧騒も、なにもない、静まり返った今の時間帯では・・・その言葉は透き通りほどに響き渡っているが・・・しかし、その言葉の中には、悲しみしか宿っていないようにも思えた。
その言葉に、背が小さいほうの影がたじろぐ、だが、その背の高いほうの影は、詰め寄りながら、言葉を吐き続ける。
「お前は自分で狂ってるって思い込んでいるだけだ・・・だから・・・もう人を傷つけることなんてするなよ・・・もう・・・なくんじゃねぇよ」
その声は、まだ幼さの残る、少年の声だった。幼さが残るといっても、だいたい声変わりが終わってから結構たっているような感じで、中学生ぐらいではないだろうかと思えるほどだった。だけど、やはりその言葉には、年に似合わない、深い悲しみと・・・
「あなたに・・・あなたに何がわかるって言うの?大切なものを失った私の気持ち・・・狂ってしまうぐらいに絶望を味わった私の・・・なにが———」
その少年の言葉に、やっと背の小さいほうの影・・・まだ少年と同じく幼さの残る少女の声を出した・・・つまり、少女が言い返す。その中には、少年とは違った悲しみの色が宿っていて・・・深い、深い深い絶望を味わったかのような色も宿していた。
その少女は、少年につかみかかる。少年のほうは、少女がそんな行動をとってくるとは思っていなかったのか、驚いて、地面に倒れてしまう。少女のほうも、少年をつかんでいたせいでそれに引っ張られて、同時に倒れこんでしまう。
二人同時に倒れこんだ少年と少女は、重なり合うようにして倒れたが、まだ少女の勢いは納まっていなかった。
「なにもわからないでしょう?大切な人が傍にいて、夢があって・・・人生を主人公として生きているあなたに・・・私の気持ちなんて・・・わかるわけないでしょう!?」
少女は少年の顔を、その小さな拳で殴りつける。少年は抗うすべもなく、その攻撃を何度も、何度も何度もうけ・・・
「力のあるあなたにはわからないでしょう!?誰かを護れる力を持っているあなたなんかに私の気持ちなんてわかんないでしょう!?それなのに・・・わかったふりして・・・もう・・・私にかかわらないでよぉっ!!」
最後の、少女の心からの言葉とともにはなたれた拳を、片手で受け止めて、それを思いっきり少年は引き寄せる。少女のほうには逆にそれに抗うすべもなく、そのまま・・・少年の胸に、すっぽりとおさまった。
少女は・・・泣いていた。少年の胸にすっぽりと収まった少女は・・・ただただ、悲しいという感情とともに・・・涙を・・・少年の胸に、おとしていた。
だからこそなのだろうか・・・少年は、少女を力強く抱きしめる。かつて・・・この少女と同じように、孤独に苦しんでいた少女にやったよう
に・・・少年は、少女のことをギュッと、力強く抱きしける。かつてこれとおんなじことをした少女のことは・・・なぜかまったく記憶の中に残っておらず、自分の夢だとか幻想だとか思っていたりもしたけれど・・・今この場では、こうするのが一番だ、と少年は思ったのだ。
「人生を主人公として生きている・・・か。俺にはもう、主人公を語ることはできない・・・ただの脇役だ。お前と違う形だけど・・・俺も絶望を味わって・・・狂っちまいそうになったこともあった・・・だけどな」
少年は、少女に優しく語り掛けるようにしてそういう。少女のほうはもう、自分の思いをすべてぶつけてしまったから少年に返す言葉がない。だから少年は・・・少女を抱きしめながら、片方の手で少女の頭をなでながら・・・優しく・・・優しく、悲しみの色がなくなった声で、こうつぶやくのだ。
「力がなくったって・・・大切な人がいなくなったって・・・夢がなくなったって・・・お前はまだ・・・新しく作れるじゃないか。簡単にいっているようかもしんないけど・・・諦めたらそれで終わりなんだよ・・・。俺がこんなことをいったところでなんの説得力もないかもしれない・・・だけど・・・だけどな。俺は・・・お前がどう思っているかなんてのにはきょうみないけど・・・とりあえずは、お前の友達でいるつもりなんだぜ?友達っていう存在が大切な人、というのに分類されるかなんてのはしらないけど・・・お前はまだ、孤独じゃない!!狂う必要も・・・どこにもない・・・だから、もっと俺を頼れ」
その言葉に・・・少女は目を見開く。涙を流しながら、目を見開く。少女にとって、この少年はただの道具でしかなかった。自分の孤独感をただやわらげてくれるための道具でしか、自分の気分を晴らさせてくれる道具でしかなかったはずだったのだ・・・だけども、それなのに・・・この少年は———私のことを・・・友達だと、いってくれた。
それだけで・・・たったそれだけのことなのに・・・少女は、声をあげて泣き出してしまう。大切な存在など、いるはずがないと思っていたから、自分を友達だといってくれる人なんて、いないと思っていたから、だけど、自分を———は、優しく、優しく抱きしめてくれた・・・かつて、大切な人・・・自分の家族を失ってから、少女は他人のことを道具としか見ていなかった。もう二度と絶望を味わいたくないばかりに、自分から孤独になる道を選んだ。もう一度、あんな悲劇がおこった暁には、本当に自分は狂ってしまうからと・・・大切な者、友達を・・・作らないつもりでいた。だけども、それが自分にさらなる狂気の感情を与えていることに・・・今、この少年にいわれて・・・気がついた。
だから・・・私は、この少年のことを好きになってしまったのかもしれない。たった二年前に出会って、自分のことを友達だといってくれたこの少年のことが、好きになってしまったのかもしれない。
そして・・・この少年のことを、失った家族以上に・・・大切な存在だと、私は思う。失ってしまった家族のことを私はどれだけ大切に思っていたかなんてわからない。だけども・・・確実に、私は・・・この少年を失ってしまったら・・・狂気を、抑えられないという自負があるつもりだ。
だから・・・私は力をつけた。少年のことを、この世の理不尽から護るために・・・【魔術師】になる選択をして、私は力をつけた。私と同じように大切な人を護るために力を振るっていた魔術師と≪契約≫をして、私は魔術師となった。人間にはけして使えない力を私は・・・少年のためだけに使うと、決意した。
・・・さぁ、護ろう。私が孤独の中で恋した・・・鎖牙裕介を、護ろう。彼を護るためなら私はもう・・・世界を敵に回してもいい、それだけの決意はできている。
———————さあ、もう彼に会う準備は整った。今まで【魔術師】として力をつけるためにさまざまな修行をしていた私は、まぁ一言でいえば、転校という形で彼の元を去った。だから———もう一度彼に会うために———宮西高校に、編入という形で、入ろう。
さぁ・・・待っていてね?私の愛しい人————私に夢を希望を与えてくれた・・・愛しい人。