コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【紅の魔法】 ( No.2 )
- 日時: 2011/01/27 17:10
- 名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)
パンにバターをたっぷり塗り、朝のニュースを見ながら俺は時間をつぶす。今から朝風呂しても三十分には間に合いそうだからどうしようか悩んだけど、もう制服に着替えてしまっているのでめんどくさいという結論になり、やめた。
はぁ・・・俺にも彼女とかできれば毎日が暇じゃなくなるのかもしれないが、もてないからしょうがない。もてないやつはもてないやつなりに暇をつぶせってか。神様もやなやつだねぇ・・・。
パンを食べた俺はなにか忘れていることに気がつきカバンをとりに部屋に戻る。
カバンを手にもち、再び俺は一階に降りる。部屋の中は誰も起きていないので電気はついていない。前に誰も起きていないのに俺がつけてそのまま学校に行ってしまった時電気代の無駄だろうがと軽く注意をうけているので、俺一人しか起きていない場合はつけていない。
電気もついていない、寂しいリビングを見回した俺は、脇役にはちょうどいいかもな、と自嘲気味に笑い、玄関に向かって歩いていく。
少しさび付いているドアをあけて、靴の踵を直しながら外にでた俺は、もう一度太陽の光にクラッとする。ああくそ、今日は朝から太陽もご苦労なことだぜ。
「ゆーすけぇー!」
俺が心の中で太陽に嫌味をぬかしていると、近くから昌子の声が聞こえてくる。昌子の声は声優のように透き通っていて綺麗なのだが・・・、この声を独り占めしているのは修二君で、昌子の心を独り占めしているのも修二君だ。これは俺が長年聞いてきた声だが、もう他人のものになってしまっている。
そう思った瞬間、なにかいやな感じが心の中に広がるが、俺はそれを無視する。そんなことは俺に関係ないと、拒絶する。
散々寝たのにまだ眠いな・・・。ああちくしょう。これは相当やばいぞ。———そろそろ意固地になってないで病院いこうかな。
「悪い、待たせたか?」
「ううん、あたしも今きたばっかだよ〜」
にこにこと笑いながらそういう昌子の顔をみて一瞬、ほんの一瞬だけ、俺の頭のなかにひとつの影が生まれる。それはいつも見る夢。美しい雰囲気の少女と・・・自分。影に隠れていつも見ることの出来ない少女のことが・・・一瞬だけ、頭の中によぎる。その夢の中で話している内容は覚えていない。覚えていないというか、夢の中でだけしか共有ができないものなのかもしれない。まぁ仮定の話とかをたてるのは苦手だからどうでもいいか。
なにか大切な思い出だったような気もする。だけどそれは、あまりに現実離れしていて、どうもリアルでおきたことだとは思えない。そう思い直した俺はそのことを隅におき、昌子の隣にたつ。それを合図に昌子と俺は同じペースで歩きだし、学校に向かい始める。
「なぁ昌子」
「なぁに?」
なにも話さないで歩くのは気まずいので、適当に俺は話題をふってみることにする。
「なんで今日は一緒にいきたいなんて言ったんだ?いつもは俺を起こした後チャッチャと一人でいっちまうくせに」
「え、えっとね。今日は裕介と一緒にいってあげてもいいかな〜って、思ってね」
俺の何気ない質問に少しだけ陰をみせて昌子だが、すぐに平気な顔にもどってそういう。まぁ長年の付き合いだ。昌子が嘘をついていることぐらいわかる。だけど、俺はべつにこいつの恋人でもなんでもない。ただの幼馴染だ。そういう深いところには突っ込まないさ。
「そっかそっか。彼女のいない寂しい俺に同情してくれたんだな?」
「そうそう。もてない君のために昌子ちゃんがわざわざ声をかけてあげたのだ〜」
「お前・・・ぶっとばすぞ?」
「はっはっは、やってみなさい裕介ちゃん」
そういいながら昌子は宮西高校の女子の制服であるセーラー服と青色のミニスカートをなびかせながら振り向く、そしてカンフーかなんかのみょうちくりんなポーズをとり、こちらにむかって差し出された手をコイコイ、といったふうにふる。
俺は周りに人がいないことにホッとし、昌子の馬鹿さ加減にため息をつく。
「昌子・・・、高校生にもなっておかしな行動するなよな」
「え〜、大丈夫だよぉ、こんなことするのは裕介の前でだけだもん」
「お前・・・俺以外の男にそんなこといったら誤解されるぞ?」
「ふぇ?誤解?どんな誤解されるの?」
「・・・わかんねーならいいっす」
ハァ・・・、テンションが最高に低い奴とテンションが最高に高い奴とでは感じるものが違うのだろう。正直こいつの相手するのはめんどくさい。
五分ほど歩いていると、チラホラと宮西高校の制服をきている生徒を見かけるようになってくる。それを確認した俺は、ほかの生徒に誤解のないよう少しだけ昌子の後ろを歩く。意識のしすぎだって?ははは、お前らもこんな状況になってみればわかるさ。過剰ぐらいが丁度いいってな。
「あれ?なんで裕介後ろ歩いてるの?」
「そういう気分なんでな」
「ふーん・・・変なの」
・・・ま、後ろを歩いたところで昌子が話しかけてきては全く意味がない。通りかかる男子生徒からは嫉妬の眼差しが送られてくるし、女子からはなになに?あの二人ってそういう関係なの?とか変な誤解をもった視線が送られてきている・・・いやね、こいつには修二君っていう彼氏がいるんですよ?俺はただの幼馴染ですよ?とか大声で言おうにも・・・ヘタレな俺はそういった思い切りのいい行動をとることができない。はぁ・・・実に不愉快だ。
「そういえば、裕介とこうやって二人で歩くのは久しぶりだね〜」
昌子が笑いながらそういってくる。その言葉は俺の心にチクリと、針が刺さったような痛みを与える。それを不快に思った俺は、若干吐き捨てるようにその言葉を言ってしまう。
「フン、お前は修二君がいたからな。俺にかまってる暇なんてなかったんだろ」
それは男の嫉妬だったのかもしれない。可愛い女の子を誰かに独り占めにされているということが不愉快に思ったのかもしれない。男ならば誰もがそう思うだろう。その例としてさきほどの男子生徒が俺たちに送っていた視線だ。だからそれは当然の発言だったのかもしれない。
だけど———昌子の顔には、怒りともいえない・・・、悲しみの色が顔を覆っていた。
「・・・裕介、もしかしてあたしに彼氏がいたこと、怒ってるの?」
だがその顔色とは裏腹に、そんなことを昌子が聞いてくる。昌子の突然の変貌に驚いていた俺は、一瞬どういった反応をすればいいか困ったが、ここはハッキリと言わせてもらうさ。