コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【紅蓮の契約者】※オリキャラ募集 ( No.43 )
日時: 2011/01/30 22:04
名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)

「えー・・・以上を持って帰りのHRは終了だ。部活がんばる奴はがんばって帰宅する奴はそのまま帰れ。とっとと帰らないとだめだぞ。そうしないと先生のような頭になっちまうぜ〜」

不気味な笑いを残しながら消えていった雉田のことを冷めた目で見つめていた俺は、気が抜けたかのようにして机に突っ伏する。今日一日、おきてから色々あったなぁとつくづく思う、というか、一日でどんだけ俺を取り巻く空気が変化してんだよっていう話だ。
えーと・・・最初の異変は昌子が俺と一緒に学校に言い出したところからだ。いや、それ以前の夢なのだろうか?いや・・・でも夢は毎日のように見ていたから、それはまぁ関係ないとして、やはり昌子が俺と一緒に学校に行こうとしたところからだろう。いつもは一人でいってしまうくせに、昌子は何を思ってか、俺と一緒に行こうと言い出した。その後の俺の質問で昌子は、口をつぐんだ。次に転校生でやってきた。それはいつも俺の夢の中にでてくる少女・・・エルシャロン・ユアハーツだった。
俺はエルと再会し、忘れていた記憶を取り戻した。それは俺がエルとであったことによって、『頭の奥底に無理矢理封印させられていた』記憶が、封印をこじ開けてきたかのように、唐突に起きた。
記憶が元に戻った俺達は、九年前に、完成しなかった、不完成で終わってしまった契約を、完成させた。九年前、エルは俺のことを好きだといった。だが俺は、そのとき言っていなかった。いや、自分から言わなかったのではない。そのとき俺は・・・『なにかの攻撃』によって死んでしまったからだ。その攻撃は【魔法】といわれている非日常、非科学的な力によってのものだったと、今ならわかる。まぁそんなこんなで俺は死に、エルの【魔法】によってよみがえったが、九年間エルとの契約を保留にしていた。
だが、俺はエルのことを・・・いや、自分でいうのも恥ずかしいのだが、好きだといった。それによって第一段階の契約は完成し、俺は【魔法】を使えるようになった。正式に使えるようになった魔法は【フレイヤバースト】の一つだが、それは俺がエルを守りたいという意思にしたがって生まれた魔法で、自分でもなんとなく気に入っている。
エルの力を解放し、【魔法】を使えるようになった俺は、エルと第二の契約、つまり、覚悟の確認を行った。それは、人生の道、日常の道、平凡だが命をかけなくてもすむ平和な道に残るか・・・それか、エルとともに、化物しかいない、いつ命を落とすか分からない最悪な道に進むかの・・・確認。
そして俺は・・・エルとともに、化物しかいない。最悪な、人生でもなんでもない道に進むことを決めた。九年間もエルを一人ぼっちにして、俺は忘れていたのに、ずっと一人で俺を探してくれていたエルのことを、これ以上悲しませないために・・・寂しい思いをさせないために、俺はその道を選んだ。後悔しても遅いかもしれない。だけど俺は・・・記憶の中にいた俺は・・・エルのことが、好きだったから。好きな女の子を、守りたいと思っていたから・・・いいんだ。
今の俺の気持ちがそこにはないのかもしれない、だけど、それでもいいと思っている。だってなぁ・・・そんな些細なこと気にしてたって何にも始まんないだろ?
一日で・・・たった一日で人生の道から化物しかいない道に進むことになった俺は、それでも回っている日常の風景・・・、これから部活にいこうとしているクラスメイト、廊下で友達としゃべっているクラスメイト、家に帰ろうともしないで友達と話しているクラスメイト、入学一ヶ月でさっそくできた彼氏や彼女と一緒に帰り始めるクラスメイト・・・。それはいつもと同じ光景だった。当たり前だろう。こいつらは、なにも変わっていない。いつもと同じ日常を生きているだけだ。人生の道からはずれたりなんかしていない。変わったのは俺だけ。
日常を懐かしそうに見るのは、俺とエルだけ。

「そういや・・・今日はこれ以上昌子とかかわりたくないから・・・家に帰るのは遅めでいいか。それまで屋上で寝てようっと」

俺はそう呟きながら立ち上がる。まだ温かくはないとはいえ、それほど寒いともいえない。だからだいたい七時ぐらいまでは屋上で寝ていられそうだ。帰りが遅くなったらそれは友達の家で遊んできたと言い訳すればいい話だし、なんも問題はない。
うーん・・・よく考えたら、化物しかいない道に進んだだとかいっている俺も、まだ日常にいるじゃねぇか。とくにといって異常がおこるわけでもないし、突然エルがいなくなったりもしない。でもま・・・、それでも警戒は怠らないようにしないとな。
屋上での契約完了後、エルは俺にこう話していた。世界中には、俺と同じような『契約者』と、エルと同じような『魔術師』がそれなりにいるらしい。だがそれのほとんどは『契約者』が『魔術師』を裏切り、殺し、その力を奪ってしまうのだという。だからこの世界にいるほとんどの【魔法】を使うものは、『魔術師』ではなく、『契約者』なのだという。それを聞いた瞬間に俺はなんかとてつもなく恥ずかしい発言をしていたような気がするが、それはもう頭の中から排除しておこう。
西野はHRが終わった瞬間にとっとと帰ってしまっているため、俺に話しかけてくる奴は誰もいない。今日俺につっかかってきた中西ももういないし、教室にはほとんど人がいなくなってしまった。さっきまでは十人以上はいたのに一分でいなくなりすぎだろ・・・と思いながら、俺はエルの席を見る。
エルは窓の外を真剣な眼差しで見ていた。内側からだとどのような表情で窓の外を見ているか分からないが、雰囲気からして真剣だということがわかる。俺は出口にむかっていた足をとめ、回れ右してエルのほうにむかって歩き出す。
その気配がわかったのか、エルは俺のほうをむく。真剣な表情は消え、デレっとした情けない笑顔を俺にむける。・・・ああ、その表情、俺のいとこと似ているな。緊張の欠片もなく、信頼しきっている相手にむける笑顔だ。それをエルがやると、その・・・なんだ、破壊力抜群だ。