コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 【紅蓮の契約者】※オリキャラ募集 ( No.52 )
日時: 2011/03/28 04:54
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

その声が聞こえた瞬間、俺がさきほどまでいた場所に、紫色の炎が巨大な鳥———大きさで考えたら小型ジェット機ほどの———の形をとりながら、その場所に顕現していた。形でいうと、それは鷹のような形をしていて、だがその全体が紫色の歪な炎でできている。いつのまにか、この場所は月の光、星の瞬きの加護を受けていない。何ものかが【魔法】によって結界でも張ったのだろう。むしろ今だとそちらのほうがありがたい。こんな歪な形の化物が人にでも見られたりしたら、それこそただじゃすまなくなってしまうからだ。
だが・・・それを考えると、敵は二人だけではない。ほかに結界を張ったやつをあわせて最低でも三人はいるはずだ。そいつがどのくらいの強さかなんてこのさいどうでもいい・・・なぜなら、なぜなら———この俺の目の前に入る二人は、俺の力では到底敵わないほどの強さを持っているからだ。
金髪の少女が地面にクルッと一回転して着地する。俺はその優雅な動きをみつつも、その隣で護衛のようにつきそう鳥の姿を確認していた。
こちらが隙を見せれば間違いなく一撃で殺されてしまいかねないほどの【魔力】が宿っていることは、まだまだ未熟な俺でもすぐにわかった。
結界の中は薄暗い。そもそも結界というのは、その使う奴の得意とする【魔法】の属性かなにかで色がわかれる。今は灰色・・・いや、灰色をグッと黒に近づけたような色をしていることから、この結界を張った奴はおそらく、【闇】だ。それと、金髪の少女もおそらく【闇】だ。まだ魔力の流れだとかなんだとかいうしくみがよくわかんない俺だけど、なんとなく、ただなんとなくだけど、そういったものがわかる。だが・・・、魔法人の描かれた分厚い本をもっている少女だけは、なにもわからない。
俺は後ずさりながら、敵の隙をうかがう。まだ俺の魔法のレパートリーは一つしかなく、その一撃だけで敵をぶちのめさなければならない。その魔法を何度も何度も使っていると、俺にはその魔法だけしか仕えないのかということが敵にバレてしまう。自分の弱点だけは見抜かれるわけにはいかなかった。
金髪の少女は、幼くも美しい、だがどこか狂気じみているその顔で・・・、美しく、ただ美しく笑って見せた。

「こんにちはっ、『同じ力』をもつ『契約者』さん。今日はあなたを———」

そしてその紅く美しい、だがどこか不気味な———エルと同じ瞳に、狂気が色濃くうかびあがった。

「お友達にしにきたの」

その言葉を発した瞬間、まるでその言葉が合図だったといわんばかりに巨大な炎の鳥が翼をはためかせながら真上にあがり、そのまま斜め下・・・、つまり俺のところに、急降下してくる。
それが見えたときには俺の体はもう動いていた。本能的な危険を感じたから脳よりも体が勝手に動いたのだろう。俺は横に転がりながらよける。そこから俺は攻撃をしかけるために起き上がり、手に力を込める。
だが———

「くふっ、Njerezit dorezimin deshiren e tyre te embel, e embel Ai『人は甘いあまぁい欲望にその身を委ねる』」

「っ!?」

少女が笑いを漏らしながら唱えたその【魔法】によって、俺の体は動かなくなってしまう。俺の目は真っ直ぐに少女の手の中にある・・・チョコレートに注がれていた。
そのチョコレートが食べたい、食べたい。自分のものにしたい。あれは俺のものだ、俺のものだオレのもノだオレのモのダオレノモのだおれのオレのオれのオレの俺の———狂ったように頭の中で声が暴れる。俺の意思は関係なく、その言葉が流れ続ける。するとふいに俺の体は動き出し、少女のほうに歩き出していく。———誘導、誘惑、洗脳。おそらくはそういった類の【魔法】なのだろう。そんな【魔法】が、自分のおもいのままに人を動かすことの出来る【魔法】があるとすれば、それは・・・やはり【闇】だ。
俺の体はそれがわかった今でも少女のほうにむかって歩き続ける。視界はボンヤリとしてきて、だんだんと目にはチョコレートしかうつらなくなる。そこで俺は本能的に恐怖を感じた。後ろからなにかが———きている。
そう思ったときには俺の体は動いていた。洗脳をぶち壊し、体は脳を無視して動く。その体についていくかのように脳の中の言葉はなくなっていき、洗脳が消える。俺は後ろを塗り向き、目の前までせまっていた鳥に、一か八かで、振り向きざまに、魔法の加護もなにもない、普通の一般人となんら変わらない拳を・・・叩き込む。

「ぐあぁっ!」

そのときに、俺の拳は相手の炎によって黒こげになってしまう。だがそれだけではない、俺の体の中に、皮膚を通して、毛穴を通して炎が入り込んでこようとする。だがしかし、俺に殴られた鳥は悲鳴をあげながらその炎を霧散させて、姿を消していく。それによって黒こげになったと思われた俺の拳はすぐに再生し、ただヒリヒリ痛むだけとなった。その突然の出来事に俺は驚きながらも———この鳥、物理攻撃に弱かったのか?と冷静な判断を下す。