コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 仮名【紅の魔法】※誤字脱字多数 ( No.7 )
- 日時: 2011/03/28 04:14
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
それは俺が小学一年生の頃のことだった。入学して、ほんの一ヶ月しかたっていないときの出来事だった。小学一年生のときといえば、ひらがなを丁度習い始めたときのことで、俺はそれで先生に(字書くのうまいねー)的なことをいわれたような気がする。
ま、幼稚園からの仲だったやつとか、小学校にはいった友達がいたから別段いじめられているとかそういった類のものはなかったと俺は思う。誰が俺のことをどうおもっていたのかは今でも検討がつかないで、そのあたりのことは今の話には関係ないのでするのはやめよう。
その日は別に特別でもなんでもなかった。俺の誕生日でもなく妹の誕生日でもなく両親の誕生日でもなくなにかの祝日でもなくただの平日だった。俺は学校が終わり、ほんの出来心で今日は違う道をとおって帰ろうとか思ってしまい、見事に知らない道で迷ってしまった。ここまでどうやって来たかわからない。どう戻ればいいか分からない。みっともなく泣きそうになってしまったが。そのときの俺は泣くことなく、力強く道を歩いていった。
その途中で、俺は空き地を見つけた。夕暮れに沈む町の中で、まるでこの世界から切り離されたかのように静かな雰囲気をまとっている空き地を見つけて、俺はそこを休憩に使おうと思って立ち寄った。
その日俺はその空き地の雰囲気が気に入り、一時間ぐらいそこにいて、さぁかえろうと思って適当な道を住んでいくと、さきほどまでまったく知らない道しかなかったのに、いつのまにか自分の知っている通学路に戻ってきていたのだ。
その日依頼、俺はその空き地までの道のりを覚え、いやなことがあったときの場合にそこで時間を過ごそうと考えた。学校が終わってからその空き地までいってなにをするまでもなく沈む太陽をみつめながら、時間を過ごした。そんな生活が一ヶ月ぐらい続いたころだろう。そのいままで俺が来たときには誰もいなかった空き地に、一人の先客がいたのだ。
はじめ俺は、幼い子供の独占欲で、ここは僕の場所だぞ!といおうとしたのだが、その先客の様子がおかしいことに気がつき、話かけたのだ。
それは当時の俺と同じぐらいの年頃の少女だった。美しく長い深紅の髪の毛、白磁のような肌に整いすぎている顔立ち。今思えば、どうして子供なのにこんなに美しいんだろうと思わなかったのが不思議なぐらいだ。
その少女は泣いていた。涙を拭くことなく、ただただ落ちていく太陽を見つめながら、地面に体育座りをして、泣いていた。まるで自分が泣いていることにも、俺がそこにきたことにも気がついていないかのように、少女はただただ太陽をその・・・深紅の瞳で見るばかりだった。
俺は・・・その少女になんて声をかけたのだろうか。泣いているよ?だったか?どうしたの?だったか?それとも・・・悲しいことでもあったの?だったか?
おそらく、さきの三つの言葉のうちのどれかを少女にいったのだろう。少女は俺のほうを始めて気づいたといわんばかりに顔をむけてきて、俺は苦笑をした。
「あなたは・・・だれ?」
そう少女は口を開いた。涙を拭くことなく、ただただ太陽から目をはずし、俺のほうにむけて、そういった。その目にはありありとして警戒心がうかんでいることに俺は気がついていた。
だから俺はちゃんと正直に答えた。初めて会った人と友達になりたければ、自分の心の中を包み隠さずいうことだ、という父親の言葉に従い、俺はまず自分の名前から答えた。
「裕介。僕の名前は鎖牙裕介だよ」
その言葉に少女は、涙がたまっている目を鋭くする。それに俺はひるみ、逃げ出しそうになる。あたりまえだろう。そのときの少女の顔はまるで虎のように強く、鬼のように威圧的だったからだ。しかし俺は逃げ出さなかった。ただなんとなく、この少女と友達になりたいと、そう思ったからだ。
やがてなにかをあきらめたのか、少女はため息をついて、自分の名前を口にする。
「エルシャロン・ユアハーツ。私の名前よ」
「エ、エルシャロ・・・ユアネーム?」
「あら・・・あなた、私が見えるのにこの名前を知らないの?」
俺が少女の名前をうまく覚えられなくて、妙なことを口走ると、少女の顔が安堵にゆるむ。涙もいつのまにか止まっており、少女は笑った。
「エルシャロン・ユアハーツよ。いいにくかったらエルでいいよ」
「うん・・・わかった!!じゃー・・・エル!!僕と友達になろうよ!!」
その言葉にエルの顔が驚きの色を示す。そのときの俺はどうしていきなり友達になろうとか言い出したのか分からないが、おそらくその言葉は正解だったのだろう・・・なぜなら。エルが・・・笑ったからだ。
「ぷ・・・プフフ、あなた・・・おもしろいのね。ふふっ・・・いいよ、あなたの友達になってあげる」
「本当!?やったぁー!初めて女子に友達ができたぞー!!」
俺は歓喜の声をあげ、エルはただ微笑む。無邪気とはいえない美しい笑顔で、笑う。そのときにはもう、エルの顔には涙はのこっていなかった———
————それが俺とエルの、不思議な出会いだった————