コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【紅蓮の契約者】※オリキャラ募集中 ( No.74 )
- 日時: 2011/02/09 19:12
- 名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)
「・・・そのあたりは今の話には関係ないからまた今度の機会があれば話すようにする。これから私が話すのは———『私が≪結社≫の中にいる間に噂で聞いた【氷翼の魔術師】の【禁呪】についてだ』」
その禁呪、という単語を聞いた瞬間、ルミの顔からサっと血の気が引いていくのが見えた。レイがそのルミのことを大丈夫か〜?てきな感じで見つめていて、俺も少しだけルミのことが気になったが、・・・【氷翼の魔術師】の禁呪・・・というものに、耳を傾けた。
そしてそのとき同時に・・・エルは、俺に縋り付くようにして抱きついてきていた。
「世界消滅の五大元素のことはローラから聞いているから知っていると思うけど、例としてそれはルミが使った【ゲイ・ボルグ】だ。それが【大魔法】とも呼ばれ、【禁呪】と呼ばれるものだ。だけど・・・【禁呪】はその五大元素の力だけじゃない、ほかにもたくさんあるんだ」
・・・それはだいたい予想がついていた。【魔法】の量がハンパではないほどあるというのに、どうして【大魔法】は五つしか例がないのだろうかと、疑問に思っていたのだ。それはただの俺の勘違いであって、ただその【五大元素】という言葉に締めくくられた【大魔法】だったのだ。ということはつまり、まだまだ締めくくられた【大魔法の種類】というのはあるのだ。
「私が聞いた噂はただ一つ・・・、【氷翼の魔術師】が【絶対零度の力を宿した魔槍を使う】ということだけだった。そこから先はローラに調べてもらっているから、後の説明はローラに聞いてくれ、・・・もともと私は説明が苦手なんだ」
ポリポリと頭をかきながら、そういう蛍。蛍はなんというか・・・少し男っぽい感じの女の子だな、と俺は今思うべきではないことを思ってしまった。それを頭の隅にやり、俺が質問の目をローラにおくる、するとローラがあつめてきた資料のうちひとつだけぬきとって、それを俺に渡してきた。
俺はその紙を手にとり、目に通す、その間に、ローラが口で説明もしてくれた。
「【絶対零度の魔槍】・・・それは、触れた相手は空気であろうとなんであろうと凍らせてしまうほどの威力をもつ。ルミの使った【ゲイ・ボルグ】の力は憎しみの相手、恨みの相手、自らの邪魔をするもの、自らにあだなすものを排除する力で、その【絶対零度の魔槍】は、それの排除ではなく、氷結に変えた感じのものです。そして私は・・・とある神話の一説から、その魔槍の、【禁呪】の名前をとりました。その名は———」
「・・・【ロンギヌス】」
ローラがその【禁呪】の名前を口にしようとした瞬間、俺の隣から、エルがボソリとそういう。ローラはそれに、なぜわかった?とかいったふうな感じでエルのことを驚きの眼差しで見つめ、俺は資料に書いてあったその【禁呪】の名前とエルが言ったその【名前】が一致していることに驚いて、俺にすがり付いているエルを見下ろす。
「ラグナロクの時に女神を封印し、そのまま殺した【魔槍】。世界封印二大元素の片割れ。その威力は・・・私の【禁呪】、【ブリューナク】を圧倒的にしのぐ———」
・・・それが、エルが【氷翼の魔術師】に怯える理由だということを、俺はすぐに知る。エルが【禁呪】を使えるということには驚きはしなかったが、・・・エルのその【ブリューナク】という【禁呪】を圧倒的にしのぐともなれば———もう、普通の魔法しか唱えることの出来ない俺には、どうすることもできないだろう。だけど、今ここであきらめてはいけない。なにか打開策があるはずだから———。
「・・・それが、エルシャロンさまがグレン・ユーリッドに怯える理由なのですか?」
ローラがもう説明はいらないだろうとふんだのか、エルに踏み込んだ説明を求めめる。それは自分の恩人だからこそ、その恩人が怯えている姿を見たくないからこそ、の質問だったのかもしれない。俺も、ローラみたいにそういうことができるようにならないとな。いつまでもヘタレでいられるほど、この【魔術師】の世界は甘くないようだ———。
こくり、とエルが気弱に頷く。それをみたローラは、まず蛍に目配せをする。すると蛍はなにもかもわかっているかのように頷き、次にルミに目をむける。ルミもその隣にいたレイも、やることはわかっている、といわんばかりに頷く。
そして———最終的に俺に、目をむけてくる。その瞬間、俺もアイコンタクトによって、その内容のすべてがわかったような気がした。
そして俺は口を開く。俺に抱きついて怯えるエルにむかって、男らしく、けしてヘタレに見えないように、声をだす。
「エル・・・、一人ですべてを背負おうとするのはやめろよ?今まで一人で、『孤高の翼』を背負って生きてきたかも知んないけど・・・、俺もお前の仲間なんだ。お前を暗殺する計画があるって?もしもお前が殺されたら俺も死んでやる。それなら何の問題もねぇ、だろ?」
「そうです、私達はエルシャロンさまに命を救われました。なら、その命はエルシャロンさまのために散らすのも当然のことです。どうか恩返しをさせてください———」
「エルさまにはいろいろ感謝してるし、グレン・ユーリッドだって六人がかりでやれば倒せるでしょ」
「エルのために私がんばるよ!!」
「ふん、最強のアタイの力があればどんなやつでもイチコロだい!!」
俺の言葉に続いて次々にローラたちがいう。・・・お前ら、本当にいいやつなんだな。会ってから二時間ぐらいでお前らの人間性がわかったような気がするよ。・・・お前らは、本物の、今現代に足りない、善良な人間だ。
そしてエルは・・・その言葉に、初めて自分に仲間がいるんだと、初めて本当に俺が自分の側に帰ってきたんだと思うかのようにして・・・泣きじゃくるのだった。
さぁ・・・打開策を考えようじゃないか、いつくるかわからない、だけど絶対に対峙することになるだろうその【氷翼の魔術師】と【孤独の人形師】に勝つために。