コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.78 )
- 日時: 2011/02/11 23:40
- 名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)
・・・時間はうつる。今俺は、深夜の、真夜中の公園に一人、ブランコをこいでいた。
なにをすることでもなくそこにいるわけでもない。俺は、コーヒーを飲みながら天に光る星を眺めながら、『イメージ』を頭の中でめぐらせていた。
エルが安心しきった、美しさと可愛らしさのまじった、なんというのだろう・・・萌え?とかいうのか?そういったふうな表情で寝ているのを確認した俺は、こっそりとぬけだして、まだおきて周囲の警戒をしていたローラに後をまかせて、一人でエルの住んでいるでかいマンションの近くにあるそれまた広い公園、今そこに俺はいる。時間はさきほどからエルが寝る時間までの一時間が経過している。エルは一時間の間ずっと俺のにおいをかいだり頭をグリグリと俺におしつけてきたりしまいにはキスなんてしてこようとしたりしたのだが・・・、まぁ、なんだかんだで俺はそれを阻止して、今ここにいる。
・・・いくら、いくら俺が弱いといったって、それで納得しているようでは、いけないのだと、俺は思った。それは、【氷翼の魔術師】と【孤独の人形師】にエルが狙われていると知ったときから、思っていた。そんなんで納得していてしまっては、俺はただのまぬけでアホで馬鹿だ。自分がそいつらに絶対に勝てないからって、そんなんで・・・大切な人をあきらめてしまうなんて、本物のアホだ。
一日で、いや、たった数時間で、俺がどれだけ強くなれるかで、もしかしたら———可能性は見えてくるかもしれない。新しい魔法を覚えなくとも、魔法の詠唱時間短縮、感覚のつかみを覚えれば———もしかしたら———。そう、自分にもしかしたらの自己暗示を、俺はかける。人間とはすこし単純な生き物だ。自分でそれができるとかそれになってやるとか将来の希望をその場で口にすると、自然と体や脳がその目標にむかって全身していく傾向があるらしい。どこかしらの学者がそんなことをいっていたことを昔俺はきいて、なぜだかそれだけが俺の頭の中にのこっていた。だから俺はそれを実戦して、自身に自己暗示をかける。俺はエルのことを守り抜くと、頭の中で、思い
「守ってやるんだ———」
そしてそれを口にだす。
今まで俺は・・・誰かのために、戦ったこと、誰かのために強くなったこと、そんなことは一度もなかった。空手だって自分のためにやり、喧嘩だって自分のためにやった。誰かが襲われていたからではない。誰かを守るためではない。だけど俺は、エルと再会して、自分では認識できないほどの、小さな変化を・・・おそらく、覚えている。
俺は変わらなくてはならない。そのためにはまず、エルを守らなくてはならない。なにが大切で、なにが重要なのか・・・、昔そんなことを教えてくれたエルに・・・報わなければならない。
自分でもなにをいっているのかわからないが、それが俺の覚悟、人生の道を捨ててまで、化物しかいない道に歩んだ俺の決意。はは・・・ちょっとシリアスモードになっちまったかな、んじゃ・・・ちょいと始めますかね。なさけない、一人のヘタレの修行を。
「World shkaterrimin zjarr i madh ne dore, ne zjarr dore, ne te gjithe e hani『劫火を手に、業火を手に、我は全てを食らう』」
瞬間、手に持っていたコーヒーの缶が熱で溶ける。右手にもっていたコーヒーの缶で、俺の手をつつむかのようにして現れた炎によって、消えてなくなってしまう。そういえばまだ中身残ってたなとかいらないことを考えながら、俺はブランコから立ち上がる。
・・・前『イフリートティア』を使ったときはローラとの戦闘でだ。そのときは、腕を振るうだけで終わってしまったが———それのほかに、それには一体どんな能力が秘められているのだろうか?
まずはそれがわからない。だからこそ俺は、考える。この魔法はどのくらい強い魔法でどの程度の魔法なら打ち消せてどの程度自身の身体能力をあげることができるのか考える。考えながら俺は行動をおこす。
まずはジャンプをする。ジャンプをすると、それはもう人間ではトランポリンを使わなければジャンプでは到達することの出来ない十メートルぐらい地面からはなれる。そこで俺は、右手の炎に触れたものを全て爆発させる———劫火のほうを、『にぎる』
「———うお!?」
適当ににぎってみただけだったのに、それが吉とでた。俺の腕をつつみこむガントレット状だったものが、右手だけなくなり、手には・・・、一振りの日本刀のような形をした炎の剣が握られていた。
「これが・・・形状固定化魔法か?」
形状固定化魔法は、魔法から魔法による派生の【魔法】だということをエルはいっていた。それを使うには相当な技術が必要で、初心者である俺には使えないとも言っていたが・・・どうも使えてしまったようだ。だがそこで、まだその程度で自惚れるのは速い。これはただ、俺が少しだけ【魔法】の才能があって、できただけなのだ。まだだ、まだまだだ。
「・・・命名、『イフリートブレイド』、すべてを爆砕せよ!!」
頭の中に思い浮かんだ【魔法】の名前と、その効果を口にだし、俺は空中で剣を上に向かって振るう。すると、それによって作られた空気振動が炎による効果をうけ・・・すさまじいいきおいで爆発する。剣をふることによって巻き起こった真空刃もその炎の残留を残しているので、その空気振動に炎がまぎれこみ、さらに炎の軌跡・・・いや、爆発の軌跡を残しながら七メートルぐらい上空にあがっていった。
そのまま俺は落下する。一度中で一回転しかキレイに着地した俺は、まだ手に残る刀とガントレットをみて、左でもなにか作れるんじゃないのかと思い———流石にそれはうまくいかなかった。
「・・・うーん、結構近所迷惑になっちまったか?」
炎をしまい、ポリポリと頭をかく、今時刻は二時半だ。起きている人はいないと思うが、逆に今の音でおこしてしまったら———あー、やばい、自己暗示にかけすぎてそんな単純なことを考えるのを忘れてた———ん?
俺はあたりを見回す。そこにはなにもない、俺の爆発の音が響いていない。炎の残りかすが、煙が残っていない。———どういうことだ?
「あ、もしかしたら俺が炎をしまったから爆発とかも消えたのか?」
そう思ってもう一度炎をだしてみる。だがしかし、さきの残留は見当たらない、どういうことか?と頭をかしげながら、俺は再び辺りを見回す。すると、さきほどまで俺が座っていたブランコに———ひとつの人形がおいてあった。
『人形がおいてあった』
「・・・ん?なんで人形がこんなところに———」
そう言っている途中に、俺はあることを思い出した、エルのことを狙っている魔術師の名前・・・それはたしか———【氷翼の魔術師】と———【孤独の『人形』師】
「———っ!!焼き払え!!」
そして俺はその人形にむかって———継ぎ接ぎだらけのうさぎの人形にむかって、刀を振るった。そしてその衝撃は爆発しながら前に進んでいき、その人形を焼き尽くして———