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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.79 )
日時: 2011/02/12 00:18
名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)

「・・・ラーク、その炎を飲み込んじゃって」

焼き尽くせなかった。それどころか炎は———さきほどの兎に、『すべて吸い込まれていた』

「・・・っておいおい、うそだろ?こんなときに敵さん登場ってまじかよ?」

うさぎの人形は炎を吸い込んで、わざとらしく、ゴクリ、という音をたててくる。それは人形の癖に、自らの意思をもっているかのような行動で———俺は本能的な危険を感じた。
・・・【魔法】、か。
こんな早くに———くるなんてな。
コツ、コツ、コツ
・・・コンクリートでできているこの後援の地面に足音を残しながら、何かが近づいてくる気配を、俺は感じた。それはブランコの近くにある入り口方向から響いてきていて・・・、俺は自然と間合いを取るようにして後ろに跳躍した。
その間にも炎はしまっておく。相手に俺の魔法のひとつを知られないために、しまっておく。

(・・・もしも、もしもこれが【氷翼の魔術師】と【孤独の人形師】二人だった場合———もうどうしようもねぇぞ?)

そもそも一人ではそのどちらかを倒すことも出来ないのに、俺はそんなことを思う。もしも一人だけだった場合ならば、俺が戦っている、というかなんとか生き延びている間にも音や魔力の流れを感じたローラたちが助けに入ってくるはずだ。だから大丈夫———。そこまで思ったとき、俺は思考を止めた。
・・・誰かがいるから、大丈夫?誰かが助けてくれるから、俺もエルを守れる・・・?俺はなにを考えてやがるんだ?それじゃだめだろうが、一人でもなんとかしなければ、だめなのだ。そんな甘ったれた根性だから俺は、昔———死んでしまったのだ。エルを悲しませてしまったのだ。だがもしも———もしも一人ではだめなようならば、自分の力で、自分の足でローラたちの力を借りにいけば———いいのだ。
助けに来てもらうんじゃない。自分の力で、力を求めにいくのだ。そうでなければ———俺はいつまでもヘタレ男のまんまで、クラスメイトから、いや、クラスから空気扱いされたまんまで、昌子にはいつも世話やかせてばっかになってしまう。かわらなければならない。この俺の腐った根性をまず、かえてみせなければならない。

(足音は・・・ひとつ、だけど、もしかしたら片方が飛んでいる可能性もある・・・)

俺は左手に力をためる。左手の中に隠れている炎はそれに反応して、空気中にかすかにある魔力をかきあつめていく。少しでもいい、少しでもいいから、あがくのだ。相手の姿が見える前に、できるかぎりの準備はしておくのだ。

「・・・ラーク、はきだして」

だが———そんなはためで、うさぎが俺にむかって炎を、さきほど俺がはなったそのまんまの爆発の炎をこちらにむかってうちはなってくる。うそだろ、とかいいながら俺はその爆発の衝撃をなんとかジャンプしてかわし———左手だけに炎を宿す。

「喰らえ!!」

そしてガントレットのように炎に包まれた手を振るう。それは爆発の端っこの煙をとらえ、グイグイと吸い上げていき、跡形もなく爆発を消し去り———炎の量を増加させる。

「深紅の炎のガントレット・・・ああ、やっぱりあなたが≪紅蓮の契約者≫だったのね」

俺が落下している最中に、そんな声が公園に響き渡った———いや違う。辺りを確認したときに気がつくべきだった———、今は、結界の
中、透明な、一見したらなにもないように見える・・・結界の中に、その声は響き渡った。
それは幼い、中学生ぐらいの女の子の声だった。だけどそれはどこまでも可憐で、美しく・・・感情がこもっていなかった。

「・・・そういうお前は【孤独の人形師】、か」

その声にたいして俺はただそう呟くだけだった、。相手にむかって軽口を叩いている場合ではないからそういった態度に自然となってしまったのだ。