コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.80 )
- 日時: 2011/02/12 12:28
- 名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)
「・・・ねぇ、それはなんて【魔法】?すこしだけ気になるなぁ」
なにも感情のこもらない声で、少女は俺にそういってくる、俺は、一度空中で一回転して華麗に着地。もうバレてしまった炎を今更隠すわけにはいかず、左手の炎だけのこした状態で少女に向き直る。
・・・美しい少女だ。まるで人形のように、美しい少女だ。金色の髪の毛は暗闇の中でも美しく輝いているかのようで、整いすぎている顔立ちはまるで人形のようで、小さな体はまるで置物のようで・・・そしてそのなによりも、体には、目には、声には、何も感情がこもっていなかった。
どうやら、相手は一人だけのようだった。公園に入ってきたのは一人だけ・・・黒のゴシックロリータ風な服を着ている少女だけだった。
そのことからだいたい【孤独の人形師】だということがわかる。ていうか、【氷翼の魔術師】は男だっていってたしな、これがそいつなわけないだろ。
しかしなんでまた・・・こいつはこんなに感情のこもっていない声をだすんだ?魔術名【孤独の人形師】になにか関係しているのか?
そんなことを思いながら、俺は声をだす。
「はっ・・・、わざわざ敵に教えてやるかよ」
そういうと、少女は腕に抱えている人形、ブランコに座っていた人形より一回り小さいサイズのつぎはぎだらけのうさぎの人形をギュッとにぎって、俺を睨みつける。
「・・・教えてくれないって言うなら、力ずくで『解析』するまで。ラーク、お願い」
少女が俺にむかって指をさしながら、ラーク、という名前を口にだす。そういえば、さきほどからあのうさぎが動く条件として、そのラークという言葉がだされていた、ということは、あのうさぎの名前は『ラーク』というのだろう。
っておいおい・・・、うそだろ?こいつ———属性魔法なんてつかってねぇ、人形を操る、なんてのは属性に入るわけがない、ならばこいつもローラと同じ———『例外魔術師』か。
・・・厄介だ。ていうか一人でどうにかなる相手ではないとわかっているけど、その上での『例外魔術師』はやっかいだ———相手の属性による弱点もなく逆に有利もない、いわゆる何一つとしてすきがないのだ。それほどまでに、属性による有利不利は、大きいものなのだ。
つぎはぎだらけの巨大な人形うさぎが俺にむかって、その気持ち悪い口を開きながらせまってくる。その口はまるでどこかの化物かのようにびっしりと牙をはえそろえ、その先端からは紫色の液体が———
「あれはやばい!!炎よ人形を喰らえ!!」
俺が左手を人形にむかってのばしながら、そう叫ぶ。あれはやばい、もしかしたら・・・一撃で死んでしまうほどの、毒かもしれないのだ。
炎は俺の腕から放たれるとき荒れ狂い、あたり一体に炎の粒子を残しながら竜の頭のような形になり、向かい来る人形にむかって口を大きく開き、その人形を文字通り———喰らう。
俺は内心、かなり驚いていた。一度目はとくにといってなんの変哲もない(自分ではそう思う)炎だったのに、さきほど、人形がかえしてきた俺の右手の炎を喰らって力を増した左手の業火は、圧倒的なまでに力をましていた。
そういえば、と思う、俺の体は深夜だというのにものすごく軽く、力を拳にためればそれまだありえないほどの握力になっていることに気がついた。それは、最初に吸い込んだ俺の劫火が、圧倒的なまでの力をもっていたということがわかる。
俺は人形を喰らい、さらに炎の熱をましたガントレットのような業火を見た後、少女のほうをむく、少女は、やはり感情のこもらない目で、驚きの言葉を口にした。
「ラークが喰われるなんて、思ってなかったよ。≪紅蓮の契約者≫は思ってた以上にできるようだね」
「そりゃどうも」
その言葉に平静を装いながら俺は返す。相手が一体次にどんな攻撃をしかけてくるかわからないから、今のはうまくいったかもしれないけど、次からはうまくいかないかもしれないから、とにかく集中して、集中して、それを悟られないように平静を装う。
ヘタレ根性がどこまでこの『化物』に通用するかわからない、だけど、俺のヘタレ根性はそうとうなものだ。なんとしてでも通用させてやる!!
「でも『解析』はできた。その炎はどうも、『自らより力の弱い魔法』を喰らうらしいね。厄介だ、実に厄介だね。相手の実力がどの程度かわからない今の状態だと、ボクのどんな魔法が喰われるか分かったもんじゃない。しかもその炎は喰らった魔法の威力ぶんだけ力を増すそうじゃないか、うかつに魔法を使うのはまずいね」
・・・一瞬で解析されてたか。これで俺の隠し球のひとつは公にさらされたってことになる。【魔法】を『形状固定化魔法』をあわせたらみっつしかもっていない俺にとっては、かなり痛いところだった。