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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.83 )
日時: 2011/02/12 22:00
名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)

「ふむふむ、契約を成功させたのが昨日だって聞いたけど、もしかしてそれは≪企業≫がボクたちに流した嘘だったっていう可能性が高くなったね。一日でこんなに強力な【魔法】を所持することなんて不可能だと思うし・・・いや、もしかしたら【紅の魔術師】と契約したから?」

少女は考えるようなしぐさをしながら俺のことを眺め回す。俺はその感情のこもらない目・・・感情のこもらない声に・・・なにかを感じ始めていた。だけど、なにかがひっかかってくるだけで、わからない。この少女のことが・・・わかりそうで、わからない、どこかに忘れてきた記憶の中に————

「まぁいいか、対魔法コーティングしたあの子をだせば、そんなん関係ないよね」

「・・・対魔法コーティング?・・・っておいおいうそだろ?」

俺はその少女の言葉、正確には対魔法コーティングという言葉に反応する。それはたしか、ローラがいっていた。ローラは俺に、『私の本には対魔法コーティングがされています、たとえば、鎖牙さまの炎に燃やされないようにするためのコーティング魔法です。でもまぁ、力が強すぎればそれはアッサリやぶられてしまうわけで、私がエルシャロンさまに絶対に勝てない理由でもあります』といっていた。エルほどの力をもっていない俺は、ローラよりも強いと思われる、いや、確実に強いこの少女の対魔法コーティングは、やぶることはできないだろう。

「っておいおい、さっそくピンチですか?ヘタレ根性全壊ですかぁ?」

俺は自虐のようにそういう。左手に宿る炎ははたして、その対魔法コーティングのかかっている【魔法】に打ち勝つことは出来るのか?・・・まてよ?俺はどうしてこの少女が魔法を唱えるまで律儀にまってんだ?攻撃するなら今だろうが!!
体にムチをうって俺は走り出す。その速度はもはや人間がたせるほどの速さではなかった。滑り台近くまで来ていた俺は、結構はなれている入り口のところまで一瞬にして距離をつめる。だがしかし、俺の行動はすこしばかりおそかった———

「—————Hukkamoistu need nukud 丑 Ki—————『醜きものに人形達の裁きを』」

闇空を一閃する銀色の刃が俺におそいかかった。

「ぬお!?」

俺はすんでのところで中で後ろに一回転する。ちっという音がしたかと思うと、俺の今着ていた制服の端が・・・少しだけ切れていた。

「・・・へぇ、なかなかいい反射神経してるね」

そういう少女の近くには、さきほどまでいなかった、天使のような・・・いや、デフォルトされた天使、キューピーちゃんみたいな天使の人形が、禍々しく光日本刀をもってたっていた。さきほどの攻撃は、それによるものだと俺は悟った。

「ほら、さっきのように『イフリートティア』でサリエルを喰らってみなよ」

その言葉を合図に天使が動き出す。それは図体から考えられるスピードを軽く凌駕していた。小さな羽根を羽ばたかせながら、風を切り裂きながら俺にむかって文字通りすっとんでくる。まずいと感じたときにはもうおそい、俺は右手にまだ残していた『イフリートブレイド』をとりだして天使の、サリエルという名の天使の日本刀をうけとめる。普通なら触れたものを一瞬にして爆発させてしまう『イフリートブレイド』は、その対魔法コーティングに反応して、やはり爆発しなかった。
それどころかこの天使・・・力が強すぎ———
———ニヤアアアァァァ———
そう思ったとき、天使の顔が醜く歪む。半分は可愛らしい天使の顔、もう半分は・・・黒い、悪魔のようなも醜い笑みに、変わる。
そして俺は、本能的な恐怖を感じて『イフリートブレイド』を手放す。手放した方の手は後ろにひっこめる。
ザン!!
そしてそのすぐ後に、漫画やアニメなどでしか聞かないような効果音みたいなものが俺の手があったところを通り抜ける。上から下に振り下ろした日本刀は獲物をしとめられなかったといわんばかりに怒り狂っているように見えた。だが・・・今が好機、そう思った俺は左手の炎に意識を集中させて、自身の半分ほどの大きさしかないこの天使の人形に向かって振り下ろす。

「サリエル」

その俺の動きに少女は気がついていた。今までは自身の意思をもって動いているようだった天使の人形は、少女が遠く離れた場所で腕を後ろに、パントマイムのようにひっぱったことによって、俺が振り下ろしたときにはもうそこに天使はいなくて、少女の傍らに戻っていた。

「・・・ちっ」

そんな少女の動きを見て、また俺の頭のなかになにかが浮かび上がる、だけど、それを俺は無視して舌打ちする。

「ほんとにいい反射神経・・・。確実に右手はしとめたと思ったのにまさか反応するなんてね、驚いたよ」

淡々と少女はそういう。そんな中、俺は少女がなにかをしゃべるたびに、なにかを行動するたびに頭のなかに思い浮かぶ何かを必死に無視し続ける。・・・くそっ、なんなんだよ、俺にはもう隠された記憶なんてねぇだろうが!!ない・・・だろうが?

「ここはもうちょっと本気をださないとボクが殺されるかもしれないね。・・・あの人にもう一度会うまでは、死ぬわけには行かないし、うん、本気をだそう」

そのとき、『あの人』と少女がいったとき、一瞬だけ顔が曇ったことが分かった。感情がないこの少女は、その『あの人』という言葉に、顔を曇らせた。

「さあ・・・踊ろう、一緒に踊ろう、Te filloje nje top te nje populli te vetmuar i vetmuar i vetmuar?『寂しい寂しい一人と独りの舞踏会を始めよう?』」

それは【魔法】だった。言葉の途中に【詠唱】をいれていたからすこし気がつくのが遅かったが、少女の周りに大小さまざまな大きさの人形、大小さまざまの武器をもった人形が現れたことによって強制的に気がつかされた。