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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.86 )
日時: 2011/02/13 13:11
名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)

それは、俺がたまたまほしかった小説があり、しかし、それが近くには売っておらず、あきらめ切れなかった俺は隣町までいって買いに行ったときのことだった。このときの記憶は、なぜだか俺の頭の中からなくなっていた気がついたときには俺は家のベッドで寝転がっていて、本はちゃんと買えていたのだ。そのときは隣町までいったから疲れてすぐ寝ちまったんだろうと納得していたが、よく思えば、そんなのはありえないのだ、曖昧でも覚えていないなんて、そんなのありえないのだ。だから、それにはちゃんとした理由があった。
俺と少女が出会ったのは、俺が飲み物を買おうとして寄ろうとしたコンビニの外でだった。辺りはすっかり暗くなり、夜の七時半ぐらいにはなっていたと思う。そのときから両親ともども帰ってくるのは遅かったので、ちょっと観光気分でいろいろなところを回っていたのだ。
中学一年生だった俺は、隣町にくることなんてめずらしく、見て回りたい衝動にかられたからだ。そしてそれが終わり、帰ろうと思って喉が渇いていることに気がつき、コンビニによろうとしたのだ———だが、俺はその後コンビニに入ることはなかった。
そう、コンビニの目の前、一段の段差がある、入り口のすぐ近くで、白いゴシックロリータをまとった、どこか狂気じみているその少女をみつけたからだ。年のころは俺より一、二歳ぐらい下で、ウェーブのかかった金色の髪の毛が特徴の、人形のような少女だった。いや、それは、中学一年生だった俺が、本物の人形と間違えてしまうぐらいに感情がなく、希薄な存在だったのだ。だからだろうか、俺はその少女のことを、その人形のことを誰かが捨てて言ったのだろうと思って、コンビニにもちこんで、これ外に捨てて会ったんですけどといおうとしてしまったのだ。だが・・・俺が近づくにつれ、人形は俺に顔をむけて、あなた、誰?と聞いてきたのだ、感情のこもらない、ただたんに言葉を発しているだけの声に、俺はびっくりして腰をぬかしてすっころんで手首をグキってやってしまったのだ。
それに少女は少しだけ、クスと声をもらしたのだ。それを聞いた俺は、この少女は人形じゃない、人間なんだと納得して、コンビニに入ろうとした。だがしかし、少女が俺の服のはしをつかみ、クイクイとひっぱってきたことによって、それも止められた。

「ねぇ、ボクとお話しよう?」

それは、ひどく寂しそうな声だった、今まで何一人として少女を相手にしてくれなくて、一人になってしまったから、感情の出し方をしらない少女は、そんな声をだしたのだ。そんな声をきいてしまったお人よしな俺は———当然のように少女の隣に無言で腰掛け、お名前は?ときざなふうに聞いたのだ。それに少女はうれしそうな顔をして、俺が今までみた(記憶がうしなっていなければエルのほうが上だと思ってただろうが)中で一番可憐な笑顔を見せたのだ。それに俺は顔を赤らめさせて、何気もない、普通の会話をしたのだ。
そしてその後の記憶はない、だけど、その日から不思議なことに、その少女が俺の家に遊びに来るようになったのだ。聞けばどうも近くに住んでいるとのことで、俺とその少女はよく遊んだ・・・その少女の名前は———『リーナ・ディゼア』という・・・外国からきた少女だった。
よく遊んでいた俺たちは、自然とひかれあっていった。このときまだ空手を続けていた俺は、自分が人生の主人公だと思っていたし、この子は自分の人生のヒロインなのかもしれない、だとかそんなことを考えていた。だがしかし、その悲劇は当然のごとくにおとずれた。それが———そう、俺が人生の脇役として過ごすきっかけとなった、空手の終わりだった———。
あまりの悲しみ、空手をできなくなってしまった悲しみ、一番自分ががんばっていたことを失ってしまったショックから、俺は少女に、俺のことは忘れてくれ、俺はお前とはつりあわない、トモダチなんかじゃ・・・ないんだ、といった。少女はそのとき、泣いた、ボロボロと
涙を流し、泣いた。うわんうわんと声をだして、今まで泣いたこともない、泣くことを知らない子供のように、泣いた。俺は俺のことはもう・・・忘れてくれと、少女にいいはなち、去っていった。そして、俺はその後———一人の長身の軽薄そうな男に道をふさがれ———こう、言われたのだ。

「魔術師とかかわった人間、契約もしないでただたんに面白半分でかかわった人間の記憶は・・・いらないよなぁ?」

そしてそこで俺の記憶はなくなった・・・なくなったというより———封印された。エルとの思い出の記憶よりもさらに奥に、強すぎる力によって封印された。今の俺ならわかる、エルと契約した俺ならわかる、強すぎる魔力の流れによって———俺はリーナのことを、完全に忘れた。そしてリーナも———おそらく、俺のことを、忘れてしまっているだろう———。
でもどうして———今こんな記憶がよみがえるのだろうか、【孤独の人形師】とこの記憶はなにも関係しないだろう———ただかぶっているところは———金髪というところとゴシックロリータと人形のようだというところと魔術師だというところだけ———
そこで俺は再び、現実世界に引き戻される。