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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 ( No.87 )
日時: 2011/02/13 14:24
名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)

「・・・ふぅん?君、それなりに力はあるようだね、これを食らって頭痛だけですまされるなんて、どんな手を使ったのかな?でもま、力の差は本当にないようだ。『イフリートティア』がなくても君はボクよりも強いんだね」

俺の視界一体から炎が消えうせる。紫色の炎は俺の体何一つ焼き尽くすことなくなくなってしまっていた。なにがおこったのか、と俺は思いながら辺りを見回すが、別に目に異常があるわけでもなく、俺の後ろにあった滑り台以外はべつになんの異常もなかった。滑り台は元からそこになにもなかったかのように消滅していて、まぁ今の炎を直接見た本人でないかぎりなにがあったんだと疑問に思ってしまう光景だ。
さきほど少女は頭痛といったが、俺はその頭痛さえもない。頭痛ではなく、ただ記憶がいきなり呼び覚まされたから混乱して、頭をおさえていただけなのだ。体には何一つ傷もなく、服も焼けていない。圧倒的なまでの【禁呪】をうけてなお、俺は無傷だった。
『リーナ・ディゼア』突然呼び覚まされた記憶の中にでてきた少女、俺たちは友達として、一緒に遊んでいた。そのときの少女はまるで夢でも見ているかのようで、とても、とても楽しそうな顔をして遊んでいた。まるで誰かと遊んだことのないかのように、俺のことを、いつも、いつも、大好きだといってくれた。もう二度とはなれたくないと、もう二度と孤独になりたくないと、そういいながら、俺のことを少女は呼んでいた、それに俺は———うん、と頷いたのに———少女を再び、孤独に落してしまった。
だがその『リーナ・ディゼア』とこの【孤独の人形師】は関係ない。なのに、どうしてか、記憶の少女と【孤独の人形師】の影がかさなってしまう。まるで同じ人間であるかのように、重なってしまう。この【孤独の人形師】こそが、【魔術師リーナ・ディゼア】だといわんばかりに、【孤独の人形師、リーナ・ディゼア】だといわんばかりに・・・影が重なっていく。金髪、狂気が宿った、感情のこもらない瞳、140満たない小さな身長、可憐な声、ゴシックロリータ・・・孤独、影がかさなっていくにつれて、どんどんリーナと【孤独の人形師】の影が合わさっていく。俺は混乱してきて———わけもわからず、その名前を口にした。

「リーナ・ディゼア・・・」

そしてその言葉に少女は反応する———そう、それが『自分の名前であるから』当然のように、返事をする

「ん?なんだい?ていうかボクは君に名前を教えた記憶はないんだけど、どうやら調べがついているってことかな?おもしろいなぁ、ボクが襲ってくることがまるで分かっているみたいじゃないか」

しかし俺はそんな言葉をきいちゃいない、問題は、今この少女が・・・【孤独の人形師】が、エルを狙っている≪結社≫の人間が———俺の記憶の中にいる少女の名前、リーナ・ディゼアという言葉に反応した———というところだけだった。

「おまえは・・・リーナ・ディゼアなのか?」

「ん?わかってていったんじゃないのかい?」

確定した・・・影が完全に重なった。この少女は・・・そう、俺が昔、忘れた少女だった・・・そして、俺が無傷だった理由・・・それは、俺がこいつの捜し求めている———『あの人』だったからだ。生まれて初めて友達だといってくれた、『あの人』だったからだ。

「・・・そうか、お前が、リーナ・ディゼア・・・リーだったのか・・・」

「っ———!?」

俺が言った、『あだ名』に【孤独の人形師】は反応する。昔と違い、完全に自己中心的な感じとなってしまった彼女は、その言葉になつかしむような別れを思って悲しんでいるかのような———そんな表情を見せる。

「・・・気安くその名前で呼ぶんじゃない!!」

少女は再び顔を真っ赤にして俺を睨みつけて怒鳴る。それは、大好きな人にしか呼ばれていなかった名前で、その大好きな人以外には呼ばれたくない名前だったのだろう。どうやら、あいつのほうは俺が『あの人』だということがわからないらしい———俺は再会の感動と、昔の自分に罵詈雑言を頭のなかで並べ上げながらも・・・もしかしたらこれ以上、【孤独の人形師】と戦わなくてすむんじゃないかとか———うまくいけば、仲間にできるんじゃないかと———一考えをめぐらせた。

「それは『あの人』がボクに、トモダチになった証としてつけてくれたあだ名なんだ!!初めてトモダチからもらったあだ名なんだ!!それを・・・ボクの敵でしかない君が・・・気安くよぶんじゃ———」

「・・・敵でしかない、か。昔はあんなに遊んだのに、もう俺たちはそんな関係になったんだな」

「・・・は?」

「そういえば俺はお前に、名乗ってなかったな。名乗ってなかったのに自然と俺たちは仲良くなってったよな。お前が今『あの人』と呼ぶ理由は、名前を知らないからだろ?」

「———え?は?」

少女が目を見開く。感情のこもらない目を、見開く。だがしかし、続いて俺がいった一言によって・・・少女の顔に、感情が宿る。

「お前は覚えているか・・・?お前が俺につけた傷・・・。お前が公園でこけて俺が受け止めたときに、お前の爪が深く俺の腕に入ったよな。俺は覚えているぞ?なんたって今でもそれが、痕になっちまってんだしな」

実をいうとさきほどの記憶で思い出したのだが、今の今までこの傷は自分でつけたものだとばかり思っていた、だがしかし、よみがえった記憶の中で、俺はこの傷をつけられていた。

「・・・あ、ありえない!!ボクは君のことをしらないし君に今日始めて会ったんだ!!その傷は自分でつけたものだろ———」

一瞬、『あの人』と俺の影がかさなって、少女は泣きそうになる。だけど、すぐに俺は絶対に『あの人』ではないと思い直して、そんなことをいう。ならば、俺も絶対的な証拠をだすしかないようだな。

「うーん・・・この傷でも証拠になんねぇんなら———俺が背後から近寄って耳元で大声を出したせいでお前がおしっこもらしちゃったっていうのも証拠にはならないからいろいろな人にいいふらし———」

「わー!!わーわーわーわー!!な、なんでそんなことまで知っているんだ!!君は『あの人』じゃないだろ!!顔も似ても似つかないし———?あれ?」

少女が顔を紅くしてどなったかと思うと、警戒心なしに俺に近寄ってくる。会話をしている間になぜか少女は、俺のことを攻撃してこなくなってしまった。それは、少しでも俺と『あの人』の影とが重なってしまったからだろう。まじまじと上目遣いで俺のことを見上げた少女は、瞳に大粒の涙をうかべていく。あまりにもうれしくて、でも感情のだしかたがよくわからなくて———少女は、泣いてしまった。

「う、うそ?君は・・・本当に『あの人』なの?君の顔になんて興味がなかったからよく見てなかったけど・・・ちゃんと見てみれば『あの人』が少し成長しただけの顔だし———ちゃんときけば声も少し低くなってるだけだし・・・ほ、本当に君が」

「ああ、まことに残念なことだが、お前が殺そうとした≪紅蓮の契約者≫こそが、お前の友達で、俺が今殺されそうになった相手こそが、俺の中学時代、初めて出来た友達さ」