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Re: 仮名【紅の魔法】※誤字脱字多数 ( No.9 )
日時: 2011/01/23 22:52
名前: だいこん大魔法 (ID: AEu.ecsA)

「そういえば・・・近くで見てみれば顔つきがそっくりだし・・・瞳に宿る力強さも同じ・・・髪の色も同じだし・・・ほ、本当に、本当の本当に裕介なの?」

だんだん確信に近づいててきたのだろう。エルの瞳に涙が光始める。俺はそんなエルの顔をみながら、どうして俺はエルのことを忘れていたんだろうと、つくづく思う。こんなに美しい少女を、どうして忘れていたんだろうと思う。

「あー・・・その、なんだ。どうしたら信じてもらえるんだ?」

俺は戸惑いがちにそういうと、エルが少し驚いたような顔になる。その後頬を赤らめて、両腕を前につきだし、俺の目の前までもってくる。
・・・見覚えがある。これはたしか、契約の段階だ。記憶の中では、エルの力は俺の中に入っているのだという。だとすれば、俺に契約と同じような手段をとって確認すれば、確実にわかるはずだ。
・・・でも、俺には自身がなかった。本当に俺の中にエルの力は入っているのか?平凡だと思っていた人生を過ごしているうちに、俺の中からなくなってしまったんじゃないのか?もしもそうだった場合・・・俺はエルに誤解をあたえ、えーと・・・なんだ、さっきエルがいっていた≪企業≫の刺客だとか≪機関≫の刺客だとかと間違えられて殺されてしまうだろう。そう思った瞬間、俺の体に一筋の恐怖が生まれるが、次の瞬間、俺は別にそれでもいいか、と考えた。エルに殺されるならそれもいい。俺は一度死んでいる。それをおそらくだが・・・エルに生き返らせてもらった。ならば、この命はエルのものだ。エルがすきかってしていいものなのだ。
覚悟を決めた俺は、両手を前に差し出し、エルの手に重ねる。それを確認したエルは、手に力を込めて、目をつぶる。すると、エルの手に昔見たのと同じ、黒い、何語か分からない文字が幾千も浮き上がる。その文字は、半分だけ俺のほうに流れるようにして入っていき、俺は無言でそれを受け入れる。自分の中になにかが入ってきて、自分の中の何かを探っていることが不快に思ったが、俺は目をつぶってそれをたえる。
・・・エルが突然、重ねていた手を握ってくる。俺はそれに反応して目をあけると、すでにもうエルは目を開けており、とてもいとおしそうに、愛するものを見るかのように・・・涙を流しながら、美しい笑顔をうかべて、俺のことを見つめていた。

「すごい・・・本当に・・・本当に裕介だ。私の力が・・・、契約の力が・・・はいってる」

手を離し、エルは涙をふくことなく俺に抱きついてくる。・・・どうやら、信じてもらえたようだな。

「・・・裕介・・・裕介ぇ・・・会いたかった・・・」

俺の胸に顔をうずめて泣きじゃくるエルの頭をそっと撫でながら、俺も再会に心を震わせる。目じりには涙がうかんできて、一筋だけ、涙をこぼす。
まだ五月・・・春だといってもまだまだこの季節は寒い。ましてや屋上にいれば誰だってそう感じるだろう。だけど俺たちは、晴天に祝福されるように、再会を果たした。
しばらくエルの頭を撫で続け、泣き止むのを待った後、俺たちは屋上のドアに寄りかかるようにして座った。エルは俺の手を握り、俺は空を仰ぐかのように天を見つめる。
俺たちはそれから何分間、そうしていただろうか。さきほどHR終わりのチャイムがなり、今一次元目の始まりのチャイムが鳴り響く。だが俺は、一時間目はさぼってやる勢いでここに来たのだ。うるさいチャイムなんてきにしない。
せっかく再会したのに、かける言葉がわからないヘタレ男な俺は、どうしていいか迷う。エルはずっと俺のことを探してくれていたのだろう。そのために力を使ってここまで入ってきたのだ。それなのに俺は、エルが必死に俺のことを探してくれている間俺は———平々凡々グーグーダラダラ過ごしていた俺は、一体どんな言葉をかければいいのだろうか。