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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.94 )
日時: 2011/02/17 01:44
名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)

・・・おーけーおーけー。今回、ていうかリーがおそってきたときは、たまたま俺が知り合いだったから・・・という理由で助かったものの、流石に【氷翼の魔術師】と俺が知り合いなわけないし、そもそも俺が一人でいるときみつかってしまったら、確実にしとめられてしまうといいたいのか。たとえそこにリーがいたとしても、それだけではダメだろう。ここに帰ってくる前もリーはいっていた、自分は【氷翼の魔術師】に勝てない、と。それにフナ虫級の実力しかない俺が参戦したところで、なんの意味もなさない。ならば、今このマンションの一室にいる中で一番強い、エルが起きるまで、ジッとしていてもらいたい・・・と、そういうことだな。
狙われている本人と、その護衛たち。俺たちの関係はそんなところだ。だけど、その護衛より狙われている本人のほうが圧倒的に強い今の状況、その本人が動くまで護衛たちは動かないほうがいいのだ。

「うーん・・・じゃぁしょうがねぇな。どうせ明日も学校だし、俺はここで少しだけ寝させてもらうわ」

実際は眠くないのだが、やることがないのでソファにこしかける。その間にもリーは俺の腕にすがりついていて、俺がこしかけたと同時にその俺の膝の上にのっかる。だが不思議と、重くは感じなかった。リーの体重は、圧倒的に一般のそれよりも低かったのだ。
・・・ま、身長が百四十もいってなければだいたいこんなもんかな?

「あ、なにか忘れてると思ったら学校・・・。あいつ、今頃どうしているんだろうねぇ?」

突如、リーが俺の膝の上でなにかを呟く。それに俺はん?と聞き返すが、リーは曖昧に笑い返すだけでなにも教えてくれなかった。気になるところだが———さきほどまでなかった眠気がソファに座ったせいで一気におそいかかってきたせいで、追求することは出来そうになかった。だから俺は———そのまま目をつむり、リーをおっことさないように抱きかかえながら、眠りに着くのだった。
ああ・・・一日、本当にいろいろあったな———。今頃昌子は、どうしているんだろうか———。




「・・・あの餓鬼、一体何なんだったんだ?」

明日の計画をよりうまく実行させるために、家にかえって準備をはじめていた俺だが、さきほど、学校でみた幻想的な少女のことを、思い出す。あの後あいつは、【紅蓮の契約者】だの【紅の魔術師】などの意味のわからない単語を繰り返した挙句、俺の目をのぞきこんできた。そこからなにかを感じたのか、あいつは満足げに頷いて・・・文字通り、その場から一瞬にしていなくなった。まぁ不思議には思ったが、別段気にするような内容ではなかったので、そのまま俺は帰ってきた。だけど今、なぜかあいつのことが気になる。あいつがなぜ俺のところに現れたのか、なんのためにきたのか、そして———なにが、【紅蓮の契約者】で【紅の魔術師】なのか———。

「くそっ・・・忌々しい、うぜぇ」

ああ、ああ、くそが!!あいつのせいで準備がすすまねぇ!!・・・いや、違う。全部あのくそやろうのせいだ。あのくそやろうが俺を馬鹿にしたから、俺がいちいちこんなふうに動かなければならないのだ。なにもかも、あいつが全部悪いのだ。だから———絶対に、殺してやる。
そして再び・・・なにかが、なにかの声が———俺の近くでなる。
そう・・・その声はさきほどの少女のものではなく、軽薄そうな、二十代というより少し三十代に近い男の声だった。そいつはまるでなにもかもを馬鹿にしているかのようで、なにもかもをあざ笑っているかのようで・・・なにもかもに失望しているような・・・そんな声で、俺にこういうのだ。

「・・・魔術師にかかわった≪契約者≫でもなんでもないやつの記憶は、消さないとなぁ?」

それに俺は振り返る。振り返った先には部屋の窓があり、そこから侵入してきたであろう・・・長髪の、夜なのにサングラスをかけている、かなり身長の高いスリムな体型の男がいた。そいつは俺が振り返ったのを見て、歯をむき出しにして狂気に笑う。それはまるで、笑う骸骨をおもいうかばせるほどの、恐ろしい笑みだった。それに俺は本能的な恐怖を感じた。あのやろうの時と同じ、本能的な死の恐怖を———感じた。

「・・・いいぜぇ?その顔、その怯えきった顔!!一人の男に対する憎しみがすげぇようだが、所詮お前はそいつに勝てねぇだろうよぉ。『下等な人種』が『神の力の持ち主』に勝つことなんて不可能だしなぁ」

ヒャハハハハハハハ————と、聞いているだけで吐き気を覚えるような笑い声を男は発する。背を仰け反らせ、本物の狂気に堕ちているかのように、笑い叫ぶ。深夜の住宅街に、その男の声だけが響き渡っていた———
すると突然、男は笑うのをやめる。笑うのをやめて、俺をサングラスごしににらみつける。それだけで俺はふるえあがってしまう。真っ暗な室内だから、実際サングラス越しの目線なんてわからないのだが、直感が感じ取ってしまっているのだ。いや違う・・・感じ取らされているのだ。俺はお前をにらみつけている———と。そう思わせてくるのだ。

「だがなぁ、お前は運がいいぜぇ?なんたってそのお前の恨みの相手はこの俺の獲物だしなぁ・・・。お前が知らないうちに死んじゃってるっていう展開になっちまうのが確実だからなぁ?俺に感謝してもいいんだぜぇ?感謝してもしきれないほどに感謝しちゃってもいいんだぜぇ?」

男は俺に歩み寄ってくる。俺はジリジリと後ろに下がる。なさけなくひっ、ひっ、とかいいながら、必死に逃げようとする。だが男は俺のすぐ近くまできてしゃがみこみ、俺のむきだしのでこにふれ———

「さぁ、もう寝ろ?今日お前がみた『俺たち』の記憶は消してやるからよ。だからお前は———【紅蓮の契約者】と【紅の魔術師】が消えたことを、何も知らずに喜んどけ」

そして、小さくなにかを口にした。それによって俺は———意識を失った。
そのあと、朝おきたとき———俺の中から記憶がスッポリと、ぬけていた。