コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.99 )
- 日時: 2011/03/10 22:40
- 名前: だいこん大魔法 (ID: 00biOyrM)
「あ、あ、あのあのあの、う、うちのクラスになんの御用で?今はこの私めとなんの変哲もないただの平凡男しかいませんですよ?」
完全に緊張しきっている西野を見て、昌子は苦笑をする。それを見て俺は立ち上がって、ドアのところまでいく。
「えーと・・・西野君、だったっけ?しばらくだけど、君のお友達を借りるね〜」
「・・・どういうことか説明してもらおうかくそ平凡にんじんくそったれやろう」
「すさまじい勢いで態度を豹変したなぁ。お前って結構単純・・・」
西野に、俺とこいつは幼馴染なんだとてきとうにいって教室からでる。今はちゃんと事実をいっておいたほうがこいつの憤りはおさまるだろうし、なによりも隠す気はあまりなかったのだ。
その言葉にたいして西野は、口を唖然とさせていて、この平凡がうちの学校のアイドルと幼馴染?といわんばかりの顔をしていた。・・・お前失礼なやつだなぁ。ほっとけよ、たしかに俺はなんの特徴もない平凡そのものの顔立ちだけど、べつにいいじゃねぇか。
「えっと・・・昨日はなんで帰ってこなかったの?」
廊下にでると、昌子は歩き出す。どこにいくのだろうとついていってみると、突然昌子が口にする。
「昨日は大事な話があったんだよ?ひどくない?」
「・・・っていわれてもなんも聞かされてないし、俺の事情とお前の事情がたまたま運悪く重なっただけだろ」
「・・・運悪くかぁ、そういえば昨日、転校生が裕介のクラスにきたんだよね?」
「ああ、まぁきたな」
「私はその子のこと知らないんだけど」
「え?」
突然そういった、怒りの孕んだ声でそういった昌子にたいし、俺はまぬけな声をだすしかない。
「だから、私はその子のことしらないんだけど?裕介は知り合いだったってごまかしたらしいね。だけど私はその子のことなんて知らないよ?何年か幼馴染やってきてるけど、裕介に女の子の知り合いがいるなんて聞いたことないもん」
「・・・んだよそりゃ?」
その昌子の言葉に、つい俺もイラッとしてしまう。俺は語気を荒らげ、昌子を睨みつけるように見る。いつのまにか俺たちは・・・昨日のように、立ち止まっていた。
「それに仲がいいなんておかしいよね?ご両親には友達の家にとまるって理由で家をあけたって聞いたけど、実際はその子の家にでもいったんじゃないの?」
「・・・だからそれがお前になんの関係があるんだよ?俺とお前はただの幼馴染、それ以上の何でもねぇだろうが。なのになんで俺がやる行動をいちいちお前に説明しなきゃなんねぇんだよ?お前は俺のなんだ?恋人か?友達か?違うだろ?ただの・・・ただの幼馴染だろ?」
俺は昌子を本気で睨みつける。内にある力を少しだけだしてしまうほどに、俺の心は乱れていた。突然、昨日突然俺と一緒に学校にいこうとかいいだして、それまでは俺のことを別段気にしている風もなく、そう、本当に突然俺と仲を深めようとしてきた。それに俺はふざけるなと思う。その上、今まで俺の私生活なんてなんにも気にしていなかったくせに、聞いてくるのだ。俺を離れさせるような理由をつくり、俺がかまって欲しくないときにもうざいほどからんできて、前に俺はいってやった。これ以上俺にかかわるんじゃねぇと。それ以来昌子は俺と話すことをやめた。それが中三のころの出来事だった。まぁそのことは俺から謝ったからいいんだ。だけど昌子はやはり———そのことを反省しようとせず、さらにもっと深く俺にからんでくるようになった。・・・本当にふざけるなよ?俺はこれ以上お前とからんで、お前に人生を左右されたくはないんだ。俺は俺のすきな道を進みたいんだ。お前にかかわることのない・・・化物の道を。
「・・・」
ただの幼馴染だろ・・・という言葉に、昌子がひどくつらそうな顔をする。だけど俺はそんなとこでは止まらない。今までこいつらたまらされたストレスを今解消させてもらう。今まで俺がどんな思いでこいつと接していたのかを、吐き出す。
「俺が今までお前とどんな思いでせっしていたのかわかるのか?俺が今までお前のことをどう思っていたか分かるのか?わからないだろ?それは俺とお前が幼馴染というつながりしかもってねぇからなんだよ!!友達同士とならば、つきあっているだけでこいつは俺のことを友達と思ってくれてるんだなとかなんとなくわかるもんだし、恋人同士ならつきあっているだけでこいつは俺のことが好きなんだなってなんとなくわかるようなもんだ。たしかに俺に恋愛経験はないし最後のやつは曖昧だが、これだけはいえる。俺とお前はただの———たまたま隣同士の家になった、ただの幼馴染だ。それ以上のなんでもねぇ」
俺はいってやった。俺たちはただの幼馴染だと。深い関係なんてなにひとつもない、自然と仲互いしていく幼馴染なのだと。それに昌子は、今まで俺に見せたことのないような、ひどく、ひどく悲しそうな顔をする。めには涙をうかべ、口元を大きくゆがめ、ほろりと、涙をながす。それに俺は再び怒りを募らせる。こいつはどうして、なんのために、俺なんかと話ているのか、なんのために、俺なんかと仲良くしようとしているのか———そして俺は、なんのために、こいつから距離をとり、幼馴染という言葉を使って深いところにはいろうとしないのか。どうして・・・こいつの話を、聞いてやろうとしないのかと、自分に対する怒りょ募らせる。自分のいいたいことをいって、俺は冷静に考えたのだ。昌子は・・・なぜ突然俺との仲を深めようとしたのか、と。それにはなにか・・・絶対に理由があるはずだった。それで昨日も、曖昧な雰囲気で終わってしまったのだ。
だから俺は、優しく昌子を見つけて、微笑をうかべる。それに昌子は不思議そうな顔をしながら俺のことを、弱弱しく見つめる。それはまるで・・・大好きな人が、自分のことを嫌いだと言ったときみたいに・・・失恋したかのような、表情だった。
「・・・でもま、そんなことは今はどうでもいいんだ。なにか理由があるんだろ?俺と急に仲良くなろうとしたわけがあるんだろ?」
そういいながら、俺は再び歩き始める。そういえば、この道のりは体育倉庫に行くまでの道のりだった。体育館やグラウンドからはなれている体育倉庫は、今現在はただの倉庫とかしてしまっているが、誰もそのことを気に留めず、教師までもそれを撤去しようとしたりはしない。ドアにカギもかかってはおらず、毎晩そこでカップルがイチャイチャしているんじゃないかと噂がたっていたりもする。まぁ現実的には不良の溜まり場になっていそうなんだけどね。
顔をうつむかせながら昌子は俺についてくる。ついてきながら、俺のことをチラチラと見てきて、タイミングをうかがうかのようにして口を開く。
「・・・裕介は、私のことが嫌いなの?」
うーん・・・さきほどの、俺が怒鳴ったときの剣幕は相当なものだったのだろう、昌子が若干怯えたような顔でたずねてくる。それに俺は、
「・・・嫌いだったなら幼馴染なんてやってないさ」
そう、できるかぎり優しくいってやる。そのことに昌子は少しだけうれしそうな顔になり、すぐに真剣な顔にもどる。それから俺の顔をまじまじと見てきて———なにかを決意したかのように、声をだす。
「・・・裕介、真剣に聞いて欲しいの」
「おう」
「・・・実は、今日の朝、中西君が私の家にきたの」
「・・・中西が?」
中西がどうして昌子の家に?ていうかいままでの話となにか関係しているのか?それ?と思いながらも鸚鵡返しに聞き返す。昌子は少しだけ戸惑ったような顔になりつつも、再び真剣な顔になる。
「・・・うん、そのとき、私はこういわれた。『鎖牙裕介を体育倉庫にうまくよびだせ、さもなければ族の仲間に頼み込んでお前らの家族両方とも殺す』・・・っていわれたの」
・・・おい、昌子。昨日の大事な話ってやつを今するんじゃないのかよ?なんで今日の出来事になってんだよとか俺はいろいろなつっこみを頭の仲でうかべながらも、うなずく。
「それで私、怖くなって・・・、警察に電話しようとしたの。だけど———中西君が突然言えの仲に入ってきて、さらにガラの悪い男の人たちが数人はいってきて・・・どうすることもできなくて、私はそれに従ったの。今でも・・・、お母さんとお父さんが人質にとられてる」
「・・・大事な話だなぁ」
「・・・本当に大事なんだよ!!今は私の親だけしか人質にとられていないから大事にはなっていないけど、裕介の家には・・・麗帆ちゃんが入るんだよ?あんなに可愛い子に、男が手を出さないわけがないじゃない!!」
「それで・・・お前は俺を呼び出したってわけか。んで?そっちはわかったけどよ、昨日の大事な話ってのはなんだ?」
「そ、そんな私個人のことなんて今はどうでもいいの!!」
「んじゃなんで転校生のこととか聞いてきたわけよ?」
「それは———中西君が、裕介とその転校生が仲がいいのが許せない・・・とかわけのわからないことを言っていたから、すぐにでも裕介からその真意をたしかめたくて」
ああ・・・そういうわけか。なぁに誤解してんだよ俺は、誤解したあげく怒鳴って、かっこわりぃなぁ・・・。それが俺のもてない理由なんじゃないのか?勝手に突っ走ってしまう癖があるからこそ、俺はだめなんじゃないのか?
「・・・まぁそっちの話は後で聞いてやる。んで、相手は何人いる?」
「・・・ふぇ?」
「だから、相手は何人いるかっていってんだよ、中西と、後その仲間は何人だ?」
「ゆ・・・裕介?一人で喧嘩しようとなんてしてないよ・・・ね?」
「ん?どこに俺の仲間がいる?」
その言葉に昌子は愕然となる。深い悲しみの色が顔にうかぶ、後悔の色が顔にうかぶ。もしかしたら昌子は、先生か誰かにたのんで警察を呼んでもらい、事態を収拾するつもりだったらしい。だけど、こういった類の連中は、だいたい檻の中からでてくるとまたこういったことを簡単にやってしまう。だからこそ、実力行使でいくしかない。そもそも・・・その連中と俺の力の差は大きすぎるのだ。人間レベルで最強の強さをほこるやつであろうが誰であろうが、化物レベルで最弱の俺に、勝てるわけがないのだ。人間と化物、その力の差はでかすぎるから———。
「んじゃま、ちょっくら殴られてきますかね?」
「ま、まって・・・このことは先生に———」
「あー、男には拳で殴りあわなければならないときがあるんだよ」
「か、かっこいいセリフをいったって誤魔化されないんだからね!!いくら裕介が昔空手で強かったからって喧嘩慣れしている人には———」
ズバシン!!という音が、空気を切り裂き、昌子の目の前で止まる。内に秘める力を全解放して、今俺は、昌子にむかって寸止めをはかった。その速度に、その空気を切り裂く音に、昌子は目を見開き、言葉を失ってしまう。俺は苦笑いをして、昌子につきだしていた腕をひっこめて
「なぁに、心配すんな。一回は五十回の法則で少し成敗してきてやるだけだからな」
そう冗談めかして言う。実をいうと、少し我慢の限界だった。昌子をつかい、俺を誘い出すところが気に食わない、昌子の家族を人質にとるのが気に食わない。なによりも、正面からこないでねちねちとやってくるところが気に食わない。いい加減殴ってやりたい。我慢の限界なのだ。俺の幼馴染をこんなに辛そうにしたことに対して、苛立ちが募ってくるのだ。俺とエルが仲がいいだけでどうして忌み嫌われなければならない。昨日負けたものがどれほど悔しかろうが、脅迫という犯罪に手を染めていいものではない。いくら平凡でグーダラしている俺だって、やるときゃやるんだ。不良でもそこらへんはわきまえて欲しいものだぜ。
そして俺は体育倉庫まで歩きだす。後ろから昌子がついてくる気配は———なかった。