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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.102 )
日時: 2011/02/05 00:58
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: f/UYm5/w)
参照: 揺られ酔って 逃げようと 足掻いてたby.愛迷エレジー

第二十二話『天然発動』


**


「——じゃあ、準備ヒートアップしてこー!!」


今日で最後の文化祭準備——。
私たち貼り絵グループは、素早く紙をちぎって貼って行った。


「……」


私はさりげなく、叶汰の横顔を見つめた。
今私は叶汰が好きだけど、壱が気になってるのも事実。
いずれかは一つに決めなきゃいけない、恋心。


今日の叶汰の態度次第で、この恋を決めよう。


私はそう決意し、作業をしていた。


**


「——壱、ちょっと来て」
「え? 俺っすか?」


二時間目終了後。
壱は当然福野に呼び出され、廊下に連れ去られていった。


「壱なんかやらかしたのかねー」


横にいた優がそう呟き、私は廊下の方を見つめていた。
なんかやらかした……?
まさか、煙草とか万引きとか!?
……いや、まさかね。


でも——。


私は少し不安になりながら、席に着いた。
次の時間は、嫌いな英語。
テンションが一気に下がり、私は机の上で突っ伏していた。





「——じゃあ、この英文を解きなさい」


英語の授業も中盤になり、私はあくびをしながら黒板を見ていた。
壱が呼び出されて、もう大分経っている。
本当何したんだろう——。
そんな悪いこと、したのかな?


そう思っていると、


「……よし、出来たな? じゃあ誰かに当て——」


教師の言葉を遮るように、ドアが開いた。
見れば、壱が立っていた。
教室は一気に静まり返り、視線が壱に集まる。


「……」


壱は固まり、先生沈黙。
教室中の空気もフリーズしていた。


「……」


沈黙状態が続き、壱は先生に向かって軽く頭下げた。
しかし沈黙は相変わらず解けない為、壱は軽く困りながら何回も小さく頭を下げた。


「立ち止まってないで、早く来いよ」


先生の鋭いツッコミに、皆軽く笑った。
壱は慌てながらも、ぽてぽてと足音を立てて先生に近づいた。
壱は先生の前に立ち、また軽く頭を下げる。
しかし、また軽く沈黙が走った。


「……先生と、話してました」


壱が小さく呟いて、先生を見上げるけど先生は無言。
壱は先生から目を逸らし、またまた小さく頭を下げる。
すると、


「……珠紀、お前なんか変じゃないか?」
「え?」
「……ちょっと、もう一回やり直してこい」


先生はそう言って、廊下を指差した。
壱はゆっくりと教室を出て、そのまま——。


消 え た


「ちょ、おい」
「どこまでいってんだ、あいつ……」
「あっちの部屋まで言ったけど」
「廊下まででいいのにね!」


先生も生徒も爆笑。
私もその中の一人だった。


「……あ、帰ってきた」
「……」
「どこまでもどってんのよ」


先生が笑いながら言うと、壱は苦笑いを浮かべた。
……どうやら、勘違いした壱は、さっき福野と話していた部屋までいってきたらしい。



「……お前、まだ何かおかしいぞ」
「え……?」


先生がそういうと、壱は目を見開いてきょとんとしていた。
そして、慌てて自分の服装見直し始める。


「? ……? ?? え、わかんない」


壱は自分の服装を見ながら首を傾げ、そう呟いた。
な、なんか可愛い……。


「——……あ」


すると壱は何か気が付いたようで、突然また廊下に戻って行った。
そして、突然横にずれてまた消え始める。


「なんか隠れたぞ、あいつ」


先生が笑いながら言うと、再び皆は笑い始めた。
私も壱の行動に爆笑していた。


「あ、出てきた」


出てきた壱は、ぺんぎんみたいな可愛らしい歩き方をしながら先生の前に立った。
なんだかその顔は、少し自信あり気。


「靴、踏んでました」
「……うむ。——お前さ、ずるずるちょこちょこ歩いてないか?」
「え?」
「ちょっともう一回戻れ」


何回戻されてるんだ、壱は!!
私は心の中でそう思いながら、大爆笑していた。
クラスも騒がしいくらい爆笑の渦が巻き起こっていた。
そんなことも気にしない様子の壱は、教室の外からまた先生の元へ向かう。


「四歩くらいで歩いてこいよ」


相変わらずゆっくりでちょこちょこ歩きの壱は、先生に鋭い指摘をされた。
壱は一回足止めて、大股で行進するように歩き出した。
そのぎこちない動きに皆また爆笑し始める。


壱は軽い笑みを浮かべながら、行進をやめた。
そして、先生の前にとまる。


「——よし、じゃあ戻って」


やっと先生から解放された壱は、席に戻ることが出来た。
皆は笑いながら壱を見る。
壱の顔は、ほんの少しだけ赤くなっていた。


「珠紀、お前さ。よく転ばない?」
「え?」


壱が無事席につくと、先生がチョークを持ってそう呟いた。
壱は驚いた顔をしながら、先生を見る。


「俺壱が転んだとこなんか見たことねぇ」


壱の周りの男子は、笑いながらそう言った。
壱がよく転ぶとこなんて……やばい、想像したらなんかうけるかも。


「扁平足っていうつちふまずがない人って、そういう歩き方だったりよく転ぶんだよ」


先生が壱の方を見ながら説明した。
しかし、当の本人……壱は——。







         「あ? ……なに? はんぺん族?」






は、はんぺん……っ!?
私はその場で思い切り吹き出した。
先生も飽きれたように笑い、皆も大爆笑している。


へんぺいそくをはんぺんなんて……。
なんか、壱って天然?


なんだか、壱の意外な一面が知れて嬉しかった。




——それと同時に、私の胸の鼓動は早くなっていた。