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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.117 )
日時: 2011/02/05 18:17
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: bFAhhtl4)
参照: フタエノキワミ、アーッ←

第二十三話『好きの気持ち』


胸がドキドキしている。
君を見るたび、ドキドキが止まらない。


怜緒を好きになった時も。
叶汰を好きになった時も。


同じ感情が走っていた。




この感情は、きっと——……。




「……ねぇ、愛奈!」


私は授業が終わった後、私は愛奈のところへ飛び込むようにして向かった。
愛奈は少々驚きながらも、私の顔を見る。


「どうした? 依麻」
「あのさ、……壱の性格ってさ、天然?」


私は小声で愛奈に質問した。
愛奈は軽く笑みを浮かべながら私を見る。


「天然だね、かなりの」
「やっぱそうだよね?」
「……さては依麻、さっきの時間で壱に惚れたな?」
「っ!?」


愛奈の言葉で、私は固まった。
み、見破られた……っ!?


どうやら、私の心は移り変わったようで。
壱は気になる人なんかじゃなくなって。
完璧、好きな人に昇格したみたいです。


「図星だね?」
「……はい、図星です。図星ですとも! 完璧、好きになってしまいました……」


叶汰を好きになった時の気持ちよりも、更に大きな気持ちが心の中に芽生えて。
頭の中は、いつの間にか叶汰じゃなくて壱ばっかり考えていて……。
これは完璧、恋だ。


「じゃあ更に詳しく壱の性格を教えてあげよっか?」
「なぬ! お願いします」
「えっとねー、俺様で強引でめんどくさがり……で、たまに優しい……かな?」


やばい、どこまで壱の性格は私をドキドキさせるのでしょうか。
この性格+天然なんて……っ!
ギャップが凄すぎる!!


「不良と普通の人の狭間? で……。うーん、少し問題児って感じかな。話を合わせてくれる人が好きだと思う。私的に。特別な事がない限りあまり自分から女子に話しかけなくて、プリント回すときとかも『おい、ちょっと』って肩をとんとんするくらい……かな」


か、肩をとんとん……!?
壱にそんな事されたら……!!
いいなぁ、愛奈……羨ましいぜ。


「まぁ、後は依麻が行動して探しなさい!」
「なっ……」
「行動あるのみ! 頑張ってね〜」


愛奈は私の背中を押しながら言った。
私は少し顔が赤くなるのを感じながらも、頷いた。


そうだよね、行動しなきゃだよね!!
よ、よし……! 頑張ろう!!


**


「やばいって、あと十分!!」
「焦らすな、手元が狂う!!」


学校祭前、最後の作業——。
私たち貼り絵グループは、皆焦っていた。


そう、作品展示締切まで残り十分。
締切時間を守らないと、受け付けてもらえなくなる。
そうなったら今までの苦労は水の泡……となるし、クラスにも迷惑がかかる。


しかし。
貼り絵はまだ半分貼るところが残っていた。


「やばいって、これ!!」
「あぎょーっ」
「ちょ、依麻うるさい! 気ぃ散る!!」
「秘儀! 大雑把貼り!!」
「ぎゃーす」


私たちは、とにかく大騒ぎ。
私は奇声を発してパニくってたし、男子は必殺技とか生み出しちゃってるし、皆紙ばらまいて大雑把に貼ってるし……。


「あと五分ー!!」
「ええい、叶汰うるさい!! 焦らすなボケ!!」


皆のイライラも、MAXに達していた。
女子なんか、叶汰に向かって牙を向けている。
あーあ、叶汰落ち込んでるし。


「……なんかさ、貼り絵グループ暑くない?」
「熱いし暑いね……」
「言葉じゃ違いがわからないから、依麻」


熱いは熱血だよ、うぬ。
暑いってのは——。
皆、熱血モードで貼り絵の周りを固まりながら慌てて貼っているから、空気が密集してとにかく暑いのだ。


「——出来た!! 出来たよね!?」
「うん、もうこれでいいし!!」
「やばいって、あと二分しかない!!」


なんとか完成したが、残り時間はあと二分。
端にある理科室まで——……結構距離がある。


「走れ!!!」


男子が貼り絵を抱え、叶汰の声と共に皆勢いよく走って行く。
貼り絵グループの皆が廊下を走るもんだから、吹っ飛ばされる人もいるし転んでる人もいた。


「うあぁぁっ!!」


叶汰が叫び、皆理科室に飛び込む。
私たちの貼り絵は、先生が持っていた。


「はい、お疲れ様! 22HR、受け取りました」


先生の笑顔と共に、私たちは一気に力が抜けた。
時計を見ると……残り一分ちょい。
あ、危なかった……!


「じゃあここで締切ね。22HR、教室から出てくださーい」
「22HRが一番最後だったみたいだね……」
「うん、間に合ってよかった……」


由良と私は、顔を見合わせて安著の溜息をついた。
そして教室に戻ると、皆写真撮影をしていた。


「依麻と由良も入って!」


福野に言われ、私たちは慌てて入った。
写真撮影が終わり、掃除タイム。
だったが——。


「お疲れ様ーっ!!」


貼り絵の残った紙を使い、打ち上げとしてクラスの皆は紙吹雪をまき散らした。
私もそれに参戦し、教室中は紙まみれになる。


「お疲れ、依麻ーっ!」
「お疲れ、由良!!」
「オラァァァァお前ら!!! 紙まき散らすのはいいけどちゃんと掃除しろよ!!!」


福野のでかい声が教室に響きながらも、皆笑顔で楽しそうにしていた。
……これが平和というものなんだなぁ……。
久しぶりの『平和』という光景に、私は笑みを零した。


「叶汰ーっ! お疲れ」
「おう、お疲れ」


由良と叶汰は、笑顔でそう言った。
だけど私の心は、叶汰を見ても前みたいにドキドキは訪れなくて。
そんな時に思い浮かぶのは、壱の顔。


「……」


いずれか一つに絞らなきゃいけない、二つの恋心。
いつの間にか、それは君じゃなくて。


         貴方に向かって突き進んでいた。