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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.126 )
日時: 2011/02/05 23:51
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: .MCs8sIl)
参照: 泣いてなんかないんだからね 大好きby.恋は戦争

第二十六話『恋想』


学校祭が終わり、昨日は学校が休み。
今日はいつもより遅い九時登校だった。


「——あれ、壱と糸田来てなくね?」


長沢疾風の声が聞こえ、私は辺りを見渡した。
確かに、壱来てない……。
もう時間とっくに過ぎてるし、休み!?
それとも遅刻……?


「おら、朝の会始めるぞー」


福野が教室に入ってきて、朝の会が始まった。
それと同時に、ドアから壱の姿が見えた……って、え!?
私が驚いていると、一人の男子がこう言った。


「先生、壱廊下にいますけどー」
「あぁ、壱は遅刻したから朝の会終わるまであのままでいいの」


な、なんだ……。
壱遅刻したんだ……。
欠席じゃなくてよかったぁ……。


「——これで朝の会を終わりまーす」


朝の会が終わり、壱が教室に入ってきた。
隣に居るはずの糸田は……いない。


「あれ、壱。糸田は?」
「糸田死んだ」
「つーか壱、お前なんで遅刻したんだよ?」


疾風が壱の肩に手を置き、そう呟いた。
壱はその場で立ち止まり、少し黙った後口を開く。


「一回七時四十分に出たんだけど、なんか学校開いてなくて戻って寝たらこうなった」


今日は九時登校ですよ、壱君!
ていうか、天然すぎ!!
私は心の中で笑いながら、壱と疾風の会話を聞いていた。


**


やってきました、英語たーいむ。
あの壱の天然発動以来、すっかり英語の先生に目をつけられたようで。
英語の先生の視線は、壱の方をずっと見ています。


「——じゃあ、この問題を……珠紀——……」


英語の先生が、壱の方を見ながらそう呟いた。
あーあ、完璧狙われてますねこりゃ。
しかし、


「——……健太にしようかな」
「壱の方は?」


壱が当てられると思いきや、珠紀健太……犬ちゃんの方へ。
当てられた犬ちゃんはともかく、皆も驚きながら壱の方を見る。
見れば、壱は机に伏せていた。


「あれ、壱寝てんの?」
「いや、寝てないよ」
「あいつ、珠紀って言って当てようとしたら勢いよく伏せたぞ」


先生の発言に、皆笑い始める。
壱は相変わらず、机に伏せたままだ。


「寝たふりだな。ヤドカリみたいに隠れて」


先生がそう言いながら壱を刺激する。
すると、壱の隣の席の淡井ほのかが笑いながら壱を指差した。


「壱笑ってるよ〜」


再び壱の方を見ると、壱は伏せながら軽く動いていた。
なんかもぞもぞして、可愛い……。


壱の行動で教室は笑いに包まれ、和やかな空気が流れた気がした。


*給食時間*


給食を食べ終わり、片付け。
並んで食器を片づけていると、たまたま横にいた叶汰が人にぶつかって牛乳パックを私の足元に落としてしまった。


「「あ」」


私と叶汰の声が重なる。
牛乳パックから視線を外して顔をあげると、叶汰と目が合った。


「へへっ」


叶汰は軽く頭をかきながら、無邪気で可愛い笑顔で笑った。
思わずその笑顔に、私は怯んでしまう。


「落としちゃった。……あ、拾うからいいよ」


私が拾おうとすると、そう言ってもう一回微笑んだ。
私が両手塞がってるのを、気遣ってくれた——?
そう思ってると叶汰は牛乳パックを拾い、去ってった


——あんな笑顔見せられたら、誰だってときめくはずだ。
でも、揺るがない。
前は叶汰が好きだった。
でも今私は、壱が好きだ。
この気持ちは、本物だから——。


そう思いながら私は、水道の方へ向かう。
すると、ちょうど壱がいて目が合った。
しかし壱は何事もなかったかのように、原田くん達のところへ戻って行ってしまった。
それでも、目が合えたことが嬉しくて。


壱、やっぱ綺麗でかっこいい顔してんなぁ……。
やばい、めっちゃドキドキする。


怜緒を諦めて失いかけてた恋の気持ちが、戻っていく。


*放課後*


秋風が木の葉を揺らす、殺風景な帰り道。
愛奈と落ち葉の道を歩いていると、志保ちゃんと男子——。
同じクラスの松村一輝と二人で帰っているのを見かけた。


「志保と一輝、付き合ってるんだよねぇ〜……」


隣の愛奈が、ぽつりと呟いた。
あの二人、付き合ってるのかぁ……。


「ラブラブだね」
「うん、ラブラブだわ」


私と愛奈は、頷きながら二人の背中を見ていた。
いいなぁ……。
彼氏とあんな風に横に並んで歩くなんて、もう夢のまた夢以上の夢やん!


私も壱と並んで歩けるようになりたいなぁ……、なんてね。
そんな事を想像したら、自然と笑みが浮かんだ。