コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.133 )
- 日時: 2011/02/06 02:45
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: .MCs8sIl)
- 参照: 泣いてなんかないんだからね 大好きby.恋は戦争
第三十話『メアド交換』
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英語の授業中。
私は震える手で何回もメアドを書いては消していた。
壱が見ても変に思われないメッセージ付きのメアドの紙……あう、難しい!!
そう思っていると、
「珠紀壱、立て」
壱が先生に当てられた。
あ、そういえば今英語の時間だったか……。
私は一旦手を止め、壱の方を見た。
「珠紀壱君、こんにちは」
「……ハロー」
「お、英語意識高いなぁ。じゃあ今日の天気は?」
「イッツサニー」
壱はちょっと発音がおかしい英語を発しながら、先生の質問に答えていった。
先生は少し満足気な顔をしている。
「よし。じゃあ今日何時に起きた?」
「……七時半」
「英語で」
「英語? え、いご……」
壱は少し固まり、考え始めた。
皆は軽く笑いながら壱を見る。
注目を浴びながら、壱の出した答えは——。
「シチジハーン」
これが、壱なりの英語だったらしい。
真顔でそう答えた壱を差し置いて、皆大爆笑していた。
先生は満足気な顔から、一気に唖然とした顔になっていた。
「……じゃ、じゃあ珠紀壱。お好み焼きとタコ焼き、どっちが好き?」
「えー……、お好み焼き……あいらいくおこのみやき……? ペーター」
「……珠紀、ぺーたーじゃなくてべたーね。better」
「べ、べたぁ?」
「…………。もういい珠紀、座れ」
先生は茫然とした呆れた顔で、壱を座らせた。
……そりゃ、呆れるよね。
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授業が終わり、給食準備時間。
なんとか書けたメアドの紙を、優に渡してもらう事にした。
今度は由良もその現場に参戦するみたいで、優の後に着いて行った。
私はその場から離れて、知らない振りをする。
「——え、壱なにそれー」
「宮田のラブレター?」
「は、違うし!」
聞こえてくる糸田達の会話。
な、なんか勘違いされてますが。
あがばばば、そっち見たいけど見れないよ……!
耳だけで会話を聞きとらなければ……!!
そう思い耳を澄ませたとき、
「オラァ、お前ら仕事しろー!」
一気に会話がかき消された。
あぁぁ福野邪魔ぁぁぁ!
声でかすぎて糸田達の会話きこえねーじゃんかよ馬鹿ぁぁぁっ!!
「——壱、頑張れよ〜っ!!」
な、なんか壱が糸田に応援されてる?
え、ちょいちょいちょい。
もしやメアド渡したのは優だと完璧勘違いされてんの?
えぇぇぇぇぇぇ!?
で、でも私メアドの紙にちゃんと「水城依麻」って書いたよね!?
書いてなかった……け?
なんだか不安になってきたぜ、まぐなーむ!!
私は給食を食べるときもそのことばかり考え、食事なんか喉を通らなくなっていた。
*昼休み*
壱の方も見れないまま、昼休みへ。
すると優がやってきて、私の肩に手を置いた。
「壱に渡してきたよ」
「ありがとう……。どんな反応だった?」
そうだよ、大切なのは反応だよ!
私は真剣な顔で優を見つめた。
「んー。なんか、「えっ」て感じの顔だった」
が—————ん。
——そ、そりゃそうだよね。
話したことないキモ変人転校生のメアドを突然渡されても、「え何こいつキモ」ってなるだけだよね?
こ、これもストーカーになる……のかな?
うぇぇん、じゃあ私はどうすればいいんじゃいっ!
「でもちゃんと受け取って制服のポケットに入れてたから大丈夫だよ」
「う、うん……」
由良が笑顔を浮かべ、そう言った。
そうだと良いんだけど……ね……。
うん、大丈夫だといい……な。
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不安な気持ちのまま、放課後が来た。
私は今日、由良と寄り道をして公園のブランコに座って語っていた。
「……ねぇ、壱ってさ……。他中にモテるみたいだね」
私の頭の中は、壱の事しかなかった。
暗いオーラが漂う私を見た由良は、笑顔で元気づけるように私を見る。
「うん。でも全部振ったって! 壱、他中とかやだって言ってたもん」
全部振ったんだ……!
なんか、ちょっと安心。
だがしかし!!
まだ私の不安は完全にとれたわけじゃなくて。
「メール、くれなさそう……」
「絶対大丈夫だって!」
「だってさ、『えっ』って反応だよ、絶対引かれた」
「照れてたんじゃないの?」
由良は私を励ましてくれる。
私は少し考えながら、顔を上げた。
「そうかなぁ……。そうだったらいいけど……」
恋ってもんは、どうして不安がつきものなのでしょう。
不安とか悲しみがなければ、いいのにな。
そう思う私は、我侭なのでしょうか——?