コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.154 )
- 日時: 2011/02/10 22:09
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 14pOvIO6)
- 参照: 素直じゃないの だって(by.メランコリック
第三十六話『恋にピンチはつきものです』
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福祉体験の時間がやってきて、私たちは体育館へ移動した。
今回の福祉体験の内容は、目隠し卓球という事であった。
その名の通り、目隠しをして卓球をやる……らしい。
「では——、これからこの競技の説明をしたいと思います」
卓球台の周りに皆丸くなるように集まり、説明を聞く体制になった。
その説明の時、卓球台を挟んで向かいに壱がいた。
私はなるべく視線を送り、壱と目を合わせようとした。
「……っ」
しかし、いざ壱と目が合うと、思わず自分から逸らしてしまう。
何やってんだ、自分!
そんな風に心の中で自分を叱っては、壱の方へ視線を送る。
その繰り返しが、数分間続いていた。
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「……ほら、依麻! 壱やってるよ!」
「ひぎっ」
試合中。
男子の方では、ちょうど壱がやっている番だった。
優と由良と愛奈は、私の事を無理矢理押す。
「ほらほら見なよ〜!」
押すな押すなぁぁぁ!!
そして声でかい!
バレるぅぅぅ!!
騒ぎに気付いた疾風とかこっち見てるし、あぁぁ!!
「なんで依麻見ないの? 別に恥ずかしくないしょ」
いやいや、恥ずかしいとかそういう問題じゃなくて!
「私も前、門倉ガン見したよ。大丈夫だって」
いやいや大丈夫じゃなくて!
そんな反応してたら、周りにバレるでしょーがっ!!!!
私はそう心の中で叫びながら、壱の方をチラ見していた。
*放課後*
今日はなんだか疲れた……。
やっと帰れるよ、やっと。
私はそう思いながら、玄関へ向かおうとした。
その時、
「依麻ーっ! 一緒に帰ろ?」
「いいよー」
隣のクラスの、町上まなが駆け寄ってきた。
私は頷いて、まなの方を見る。
すると、まなは怪しい笑みを浮かべた。
「依麻、珠紀壱とどうなの?」
「どうもこうも、発展ナシですよ」
「まじかぁ〜。話しかけてみなって〜」
まなも私の気持ちを知っている内の一人だ。
恋バナ大好きなまなは、私を応援してくれてるみたいだけど——。
なんだか、嫌な予感がする。
「で、珠紀壱どこいったの?」
「え、もう帰ったと思う。あの人帰るの早いから」
そうだよ。
いつも私より帰るの早いし。
部活だし。
帰り道、見事に真逆だしねあはっはは。
「そっか。今から追い掛けてさ、ばいばいしなよ」
「なっ」
『ばいばい』なんて……っ!
話したことないのに、いきなり出来る訳ないじゃないか!!
私にはそんな積極的に振る舞える勇気なんかないよ!
そう思っていると、
「てかさぁ、まじ俺ね——」
聴いたことのある馬鹿でかい声。
——この声は!
声をした方を見ると、近付いて来るあの丸くて小さいシルエットが見えた。
あの特徴的なシルエット……糸田だ。
誰か横にいるけど、きっと原田くんか疾風だろう。
壱は帰ってるはずだから——。
そう思いながら糸田の方を見ていると、糸田と目が合い、一瞬廊下は静かになる。
しかし糸田は「そういや壱さぁ、」と、また口を開く。
『壱』という単語に反応する私だが、気にせずにまなの方を見た。
しかし、
「……あ、あれでしょ。珠紀壱って」
「!?」
まなの発言に目を見開いた。
声でかぁぁ!
しかも、糸田達の方に指差してるぅぅぅ!?
バ レ る っ つ ー の !
てか、壱って帰ったんじゃ……!?
見たいけど、見たら駄目だ顔真っ赤なのバレる。
「ちょ、やめ」
「あれでしょ? ねぇ。あれが珠紀壱でしょ?」
新手の嫌がらせか、これは。
なんなのさ、今日は皆して……!!
私は壁に張り付き、糸田達の方を見ないようにした。
しばらく経ってから廊下がまた静かになり、糸田達が居なくなった事を確認する。
そして、私は小さく溜息をついて振り返った。
「……まな……」
「ん?」
「バレるじゃないか!!」
「あは、大丈夫だって! 珠紀壱さぁ、イケメンって聞いたし。あれかなぁって思って見てみたんだけど……。本当にかっこよかったね」
まなはそう言って、笑みを浮かべた。
糸田の横にいるイケメンなら、壱しか居ないだろう。多分。
よりによって、なんで今日に限って壱が糸田と……!!
「依麻! バイバイしてきなよ。壱君、ばいばぁいって!!」
「嫌だよ、もーっ!!」
完全終わった……。
あんなでかい声で珠紀壱なんて指差したら、絶対バレるじゃないか!!
もう、ちくしょーっ!
「……うぅ……」
だがしかし!
恋にピンチはつきものよ!!
水城依麻、開き直るぜ!!
明日顔合わせづらいけど……。
こうなったら、知らないフリしていつも通り過ごそう!
よし、そうしよう!
私は心の中でそう誓った。