コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.156 )
- 日時: 2011/02/11 00:07
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 14pOvIO6)
- 参照: 素直じゃないの だって(by.メランコリック
第三十七話『天然観察』
「依麻ぁ〜! 昨日、壱にメールしたぁ?」
次の日——。
由良が笑みを浮かべながら、そう言ってきた。
メール……。
昨日の状況のままメールしたら、変に思われるかな? と思ったし——。
私から頻繁にメール送れる程、積極的じゃないもので……。
「……してない」
「しなきゃだめっしょー」
由良は口を尖らせながらそう呟いた。
無理っす、由良さん……。
私は小さく溜息をつき、頬杖をついた。
「……」
でも、何かアピールしなきゃ駄目だよね。
ましては、相手は天然四天王……。
何もしないでいたら、好意にも気づかれないし、他の女の子に先越されちゃうかもしれない。
「……はぁ……」
頭で思っていても、なかなかそれを実行できない。
恋って、難しいよね——……。
私は再び、深い溜息をついた。
**
退屈な時間が刻々と過ぎていき、英語の時間。
「珠紀、糸田! 横向いてないで前向け! ちゃんと問題解きなさい」
「すいませーん」
「すいませんっしたー」
壱は、英語の教師に怒られていた。
原因は、右隣に居る綿津と後ろの席の糸田と話をしていたからである。
壱は慌てて黒板の方を向き、糸田もやる気なく口を開いた後、あくびをして伸びをした。
正直、毎日壱の周りの席は騒がしい。
集まってるメンバーが、疾風に原田くんに綿津に糸田という比較的話が合う四人に、いじられキャラの愛奈、そして明るいほのか——。
壱とほのかが仲いいのがちょっと気になるけど、まぁ隣の席同士だしね。
そう思っていると、ちょうどチャイムが鳴った。
号令し終わった後、英語の先生は壱を呼び出した。
「珠紀、早く来い」
「あ? 糸田連れてこなくていいんすか」
「あいつはどうでもいい。お前だけ来い」
完璧先生に目つけられてますね、珠紀壱君。
英語の教師の説教は長いぞ……うん。
そう思いながら壱の方を見ると、壱と目が合った。
「……っ」
私は思わず目を逸らし、愛奈を引き連れて由良達のところへ逃げた。
何やってんだ、自分!!
もう……自分が嫌になる!
「あー……」
「依麻、ちょっと聞いて〜! あのね〜……」
私は自己険悪を抱きながら、由良たちの話を聞いていた。
*六時間目*
今日の六時間目は、学活。
前期の反省&委員会決め……らしい。
司会は叶汰と百江。
二人の進行はスムーズで真面目な人達がどんどん意見を出し合って進んでいくので、クラスの大半の人達は何もすることがなく、暇そうな顔をしていた。
半分以上寝てるし……。
あぁ、私も何か眠くなってきた。
よし、寝よう。
そう思い、寝る体制を作った時——。
「——これ誰かやってくれる人居ないのー?」
空いている一つの委員会を見て、叶汰はそう呼びかけた。
しかし、手の上がる人は誰もいない。
「じゃあ委員会に当てはまってない人に聞いてくよ? ——依麻、やってみない?」
「ひぎっ」
突然百江に言われ、私は飛び起きた。
な、なななな!?
委員会なんて重要な仕事、私に任せたらクラスがめちゃくちゃになりますよ。
私は慌てて横に手を振った。
「お言葉ですが、遠慮しときます!」
「えー? ……じゃあ、誰か〜……」
「百江、壱は? 壱も委員会に当てはまってないし」
悩む百江に、叶汰がそう言った。
クラスの皆は、一斉に壱の方を向く。
しかし、肝心の壱は——。
寝ている。
「壱ーっ」
叶汰が呼ぶが、壱は反応ナシ。
あれ、壱ぅてついさっきまで元気に会話してたよね——?
もしや、
「寝たふりすんなって、壱ー!」
……やっぱりか。
壱の必殺技、寝たふり。
それを見抜いていた叶汰は、何度も何度も壱の名前を呼んだ。
「いーちー、寝るなー」
疾風が壱に向かってそう言うが、壱は反応なし。
疾風は少し肩をすくめ、叶汰の方を見た。
「ガチで寝たかも。こいつ」
「まじかよ! ……じゃあ違う人、誰か〜」
寝たふり通り越して、ガチ寝ですか壱さん。
ていうか、壱の寝方がかっこいい。
これ絶対寝顔かっこいい!
私、男子の髪濡れてる姿と寝顔に弱いからねぇ……。
壱の寝顔なんか見たら、もう……!!
——って、なに想像してんだ私。
慌てて自分を危ない世界から連れ戻し、私も眠ろうと再び寝る体制を作り始めた。
**
学校での長い一日が終わり、放課後。
私はカバンを肩にかけ、教卓の近くに立ち止まって由良の姿を探していた。
「由良ー……っ!?」
由良の名前を呼んで振り向くと、たまたまそこにいた壱とばっちり目が合った。
壱が少し目を見開くのと、私が目を逸らすのはほぼ同時だった。
教室という、狭い空間での一瞬の出来事。
一気に周りが見えなくなって。
君しか視界に入らなくて。
一瞬にして、時が止まる。
「……っ」
私は慌てて廊下に出て、カバンを床に落とした。
瞬間的に目、逸らしちゃったよ……。
「……あぁ、もう……」
自己険悪が、増えていくばかり。
もう、どうして私はこうなんだ……!!
——誰か、積極的になれる度胸と勇気を下さい。