コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.168 )
- 日時: 2011/02/12 00:09
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kzjN7yPk)
- 参照: 現在の更新が、まだ十一月の出来事だ← 更新ノロすぎるあっひょ←
第四十話『焦る気持ち』
「なんかね、彼女つくらないみたいな事言ってたみたいだよ」
「……え?」
次の日——。
私はその衝撃的な由良の発言に、茫然としていた。
「それって、え、も、もう一回お願いします」
「だからぁ、壱が彼女つくらないみたいな事言ってたみたいだよ」
あれ、前『彼女募集中』みたいな事言ってたよね……?
ってことは、私がいくら頑張っても振られるのが確定ということじゃ……?
のぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
「大丈夫、そんな落ち込むな!」
「うぅ……」
ならそんな話題を持ち込まないで下さいよ、由良さぁん……。
朝から後味が悪い話を聞いてしまったよ……うぅ。
「……」
ふと、壱の方を見てみた。
壱は机に突っ伏して寝ている様子だった。
昨日の笑顔、また見たいなぁ……。
こっち、向かないかな。
私はそんな事を想いながら、壱を見つめていた。
**
ほとんど好き勝手出来る、楽な授業。
家庭科の時間が、やって参りました。
「愛奈〜ハサミ貸して!」
「はいよ」
私は裁縫道具を忘れた為、愛奈のいる班に近づいた。
ちなみに、出席番号順で座っているので愛奈と私は離れている。
そんな愛奈の班には、壱もいるんだよね〜……。
「すぐ返すからね」
私は愛奈にそう言った後、壱の方を少し見た。
一瞬だけ壱と軽く目が合うが、すぐに逸らされてしまった。
しかしめげません、水城依麻。
私はハサミを使う作業をさっさと終え、再び愛奈の方へ向かった。
「愛奈、ありがと!」
「え、もういいの?」
「うん」
愛奈に笑顔でハサミを返す。
その時に、壱が少しこっちをチラ見してきた。
が、すぐにまた視線を逸らして作業を始めた。
「……」
しかしめげません、水城依麻。
自分から無理矢理目を合わせるような感じでも、目が一回でも合えばそれだけで幸せ。
私にとっては、幸せだった。
「うおおおおおおっ!」
授業が終わり、教室に戻ると男子たちが腕相撲をしていた。
腕相撲流行ってるなぁ……うん。
そう思いながら辺りを見回すと、壱と一人の男子が腕相撲をしていた。
「うぬぬぬぬっ……」
壱と戦っている男子が声を上げ、周りの男子はじっくりと二人の戦いを見守っていた。
私や他の女子たちも、真剣になって観覧していた。
「——あぁっ、負けた!」
「よっしゃ!」
見事に壱が勝ち、壱は笑みを浮かべた。
壱が勝った……!
なんだか私まで嬉しくなった。
「壱強ぇー……。 ……もう一回!」
「おう!!」
男子は再び壱に勝負を申し込み、また対決が始まった。
しかし、またも壱が一歩リード。
「ぐぬぬぬぬっ……がっ」
男子、必死です。
顔が凄まじい事になっています。
ていうか壱、腕細いのに強いなぁ……。
そう思ってると、
「うぁぁっ!」
糸田が後ろから壱をこちょばし、壱が声を上げて椅子から落ちた。
しかしまだ勝負は続いていて、壱が凄い体制になりながら頑張っていた。
……が、負けてしまった。
「やったー! 勝った!」
「……くっそ……。糸田てめぇ」
「壱どんまーいっ」
壱は床に座り込んで糸田を睨む。
糸田は笑顔を浮かべて「どんまい」を連呼していた。
*昼休み*
「あー……」
私は自分の席で潰れ、空を見つめていた。
素敵な快晴ですなぁ……あは。
「きったねー、やめろや」
私が物思いにふけていると、壱の声が聞こえてきた。
壱の席の方を見れば、壱が思い切り愛奈のパーカーらしきものを床に投げ捨てた……って、えぇぇ!?
「ちょ、やめてよ!」
愛奈はイジられてます。
イジられ放題です。
「もう、優助けて〜」
「あっち行って、(放送禁止用語)」
「酷っ」
愛奈はパーカーを奪い返した後、優のところへ助けに向かった。
しかし、優にもイジられてます。
ていうか優さん、大声でそんな放送禁止用語を……。
あんな風に壱にからかわれる……っていうのかな、あれ。
まぁからかわれてるとして……。
そんな愛奈が、少し羨ましく思える。
あんなにイジられるのは嫌だけどね、うん。
そう思ってると、
「壱、彼女いるの?」
糸田の声が聞こえてきた。
私は慌てて愛奈から視線を逸らし、体ごと糸田の方に傾けた。
「い——……」
壱が何か呟いてるが、声が小さすぎて聞こえない。
壱よ、もう少し声のボリュームを……。
「お前も付き合うっていうものをさ、経験してみろよ〜」
疾風が笑顔でそう言った。
愛奈情報によると、疾風は他校に彼女さんがいるからね……うん。
羨ましく思えるよ、疾風君。
「——からのやつOKしちゃえよ!」
糸田がそう言って笑みを浮かべた。
一瞬にして、私の心の中は焦りに満ちた。
壱、誰かに告白された——……の?
私は必死で耳を傾けるが、壱の声は小さすぎてやっぱり聞こえなかった。
「……っ」
OKしちゃう……のかな。
でも朝の由良の話が本当なら、断るよね?
『なんかね、彼女つくらないみたいな事言ってたみたいだよ』
由良の言葉が、頭の中に響く。
今はそうであってほしい。
今は、彼女をつくらないでいてほしい。
誰かと付き合ったりしないで。
——そう、願ってしまった。
私、最悪だ。
私が決めることじゃなくて、壱が決めることなのに——。
私がなんと願おうと、壱の恋愛じゃん。
壱の視界にすら入っていない私が、そう思う資格なんてない。
私は大したアピールが出来ない。
壱を目で追って、無理矢理目を合わせる事しか出来ない。
目が合っても私から逸らしたり、壱が逸らしたりして何の進展もない。
壱と会話も出来ない。
話しかける勇気なんて、ない。
日々、平凡に過ごしているだけだ。
……だから私、焦ってる?
こういうときだけ『彼女つくらないで』とか、『好きな人つくらないで』とか。
そんなの、都合よすぎだよね——。
私、最低だよ。
最低だけど——……。
壱が好きだ。
好きだから、私なりに頑張ってみたい。
怜緒の時みたくならないよう。
後悔しないよう。
私なりに、頑張りたい。
「…………」
だから、神様。
どうか私に、少しだけ力を貸してください。
君に接近できるチャンスを。
君に話しかけれる度胸を——。
私に少しだけ、勇気を下さい。