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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.176 )
日時: 2011/02/12 02:31
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 3iZuTr1t)
参照: 溺れるのが 怖かったの(by.愛迷エレジー

第四十三話『逃走思考』


「……あー、だるい」


次の日——。
私は自分の席で縮こまりながらそう呟いた。
なんだか寒気がして、具合がすぐれない。
うん、風邪かな?


「……」


なんだか壱が、一瞬だけこっちみた気がするけど気のせい?
——うん、気のせいだ。
風邪引いてるから、幻覚が見えたんだなきっと。


思い込みが激しい私……。
こういうのをなんていうんだっけ?
えーと、自意識過剰?
……あー、なんかもうわかんなくなった!!
とにかくだるい、なんで今日学校来たんだろう私。


私はさえない頭でそう考えながら、時間が過ぎていくのを黙ってみていた。


**


「あぁ……、だるい」


昼休み。
私のだるさのピークは、最高潮に達していた。
さっき保健室行ったけど、早退させてくれない上にベッドさえも貸してくれなかったし……。


「はぁ……」


あと一時間、かぁ……。
長い、長すぎる。
あぁ、頭も目も回転してるよあーははは。


……駄目だ、確実に風邪だ。
私はそう思い、どこにも行かないで自分の席でだらけていた。
すると、愛奈が私の元へ駆け寄ってきてくれた。


「……依麻、大丈夫?」
「……なんとか……」
「無理すんなよ」


愛奈はそう笑って、私の頭を撫でてくれた。
ちょっと、かっこよすぎじゃないですか愛奈さん。
いい子や、いい子……。
愛奈、優しい子や。


そう思っていると少し気分が楽になったので、顔を上げた。
そして黒板の方をみると、珍しく壱含む草食系男子たちが落書きしていた。
壱は、その落書きを椅子に座って観覧していた。


「……」


私は壱の後ろ姿を見つめた。
こっち向かないかな……、なんて。
もし今目が合えたりしたら、絶対元気になれる自信がある。
そんな馬鹿な事を考えてると、昼休み終了のチャイムが鳴った。


チャイムが鳴ると同時に、壱は自分の席に戻っていった。
それと同時に、私の頭はシェイクされる。
な、何事だ!?


「あ、あうあうあう」
「大丈夫かぁ、依麻!」
「大丈夫かー」


私の頭をシェイクしているのは、由良と優であった。
あぅ、脳みそが揺れる〜。
そしてその会話を聞いていた糸田は、愛奈の方を見て笑みを浮かべた。


「愛奈は頭大丈夫かー」
「うっさい糸田」


この光景を見てると、糸田は愛奈の事が好きそうに見える。
だっていつも愛奈にちょっかいかけてるし……。
まぁ、今はそんな事置いといて——。



とにかく、シェイクされてだるさUPしました。


**


やってきました、放課後!


「や、やっと帰れる……」


私はいつも以上に重く感じるバックを廊下に置き、一息ついた。
あぁ、廊下の壁が冷たく感じるよ……あはは。


そう思ってると、壱が教室から出てきた。
一瞬にして胸が高鳴って、思わず目で追ってしまう。
……あぁ……。
見てるだけの片想いって、辛いよ。


そう思っていると、一瞬だけ壱と目が合った。
が、壱も私もほぼ同時に逸らす。
……また少しだけ、壱の方が早かった気がするけど。


「……っ」


風邪を引いてるせいなのか。
具合が悪いのか。
なんだか、よくわからないけど——。


何故だか無性に、泣きたくなった。







「壱クンとはどーですか? 水城さーん」
「どうだろう……ね」


その日の帰りは、由良と帰っていた。
外の空気が少しだけ、私の体調をマシにしてくれている。
それなので、恋バナ出来る気力がなんとか残っていた。


「メールしてる?」
「メールしてないなぁ……」


なかなか返事返ってこないしね……。
ズバリ、由良さん。
見てるだけの片想いですよ、私。


「頑張って、依麻」
「うん。……でもさ、私ね。壱と目合わせようと必死でチラ見してるんだけど、目が合ったら合ったで逸らされるんだよね……」
「それは、相手もテレてんじゃない?」
「いやいや、そんな」


そうだったら嬉しいけどね……。
私は黙って空を見上げた。


あぁ、なんかまた頭がボーッとしてきた……。


「……」


なんか今は、何も考えたくない。
私はそう思い、壱の事も一旦考えるのをやめた。


「——じゃあ、私こっちだから。じゃあね、依麻!」
「ん、ばいばい〜。気を付けてね」
「依麻もね! 倒れるなよ〜」


由良はそう笑って、去って行った。
私もそのまま真っ直ぐ家に帰り、何も考えないまま眠りについた。