コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.21 )
- 日時: 2011/01/26 19:56
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: jSS95WES)
- 参照: ねぇ 嫌いになるから 僕を愛して 君に愛されたい(by.罪と罰
第三話『転校生』
早々と歩いていく豹変した先生の後を追い、私は新しいクラス——22HRの前に立った。
「……」
「じゃあ入るよ」
「えっ!? ……あ、あぁぁ」
ちょっと待ってくれよ、福野先生。
そんな叫びも虚しく、先生が豪快にドアを開けて私は教室に入った。
いや、入れられた。
いざとなると、あ、足が、震える……っ!
「はい、朝の会始めて〜」
「せんせー、転校生?」
「その人誰」
「え、なになに」
福野が指示をすると、静かだった教室が突然騒がしくなった。
コワイヨコワイヨ。
知らない人がいっぱいだよ、おおおおおお。
私は緊張しながらも、無理矢理笑顔を作った。
な、なんか皆でかくない?
え、ほ、本当に中二?
同い年? what?
しかもなんか、怖くない?
え、なにこのオーラ。
「……っ」
な、なんか急に泣きそうになってきた。
先生は豹変するし、転校初日で腹立つって言われるし、クラスの人達皆でかいし、なんかヤンキーっぽい人いっぱいいるし、誰って言われるし。
転校生ですごめんなさいすみません怖いよ帰らせてください。
「刹那市の刹那中学校からきた、水城依麻さんです」
「……っ」
「麻美だ……」
「麻美」
なんか、麻美って聞こえますが。
困った、目のやり場がない。
あれ、更に泣きそうになってきたよ私。
「じゃあ一言挨拶。はい!!」
「ひっ! っ、え、と〜……む、向こうから来たばかりで、わ、わからないことがお、多いですがよ、ろしく、お願いし、ます」
声が震えるよ。
どんだけ噛んでるんだよ、私。
グダグダな上、戸惑いがちに挨拶するが拍手が帰ってきた。
あぁ、なんかちょっと安心。
このまま「転校生入ってくんじゃねぇよ」みたいなオーラが出てたら……。
うん、心折れてたね。
「依麻の席は……、志保! 教えてやって」
「まじで? やっぱ海老っちゃんのとこ?」
「じゃあ依麻は、あそこの志保っていう子の後ろの席ね」
海老っちゃんってなんだ。
しかも、志保って子——……。
なんか、絵里那みたい。
てか、似てね?
私は戸惑いながら自分の席に向かう。
不良っぽい人が通路にはみ出してた足は、ちゃんと避けてくれた。
あぁ、足引っかけられなくてよかった。
からまれてたらたまんないよ、初日から。
「——麻美だ」
「水名麻美に似てない?」
「激似」
さっきから麻美麻美麻美麻美うるさいんですが。
私、依麻ですよ。
そう思いながら席に座ると、隣の坊主くんが頭を下げた。
私も小さく下げる。
「——ねぇ、志保って言うから」
「あ、よ、よろしく」
前の志穂って言う子が、振り向いてそう言った。
うひゃ、顔可愛いではないか。
でもやっぱ、なんか絵里那に似てるぞ。
「どっから来たの?」
「えと、刹那」
私が答えると、「刹那」「麻美」という単語が辺りから聞こえた。
だから、麻美って誰。
「依麻、覚えてる?」
志保ちゃんの前の席にいた幼馴染——かおんが、振り返って手を振ってきた。
おぉぉぉぉかおん!!!
私は手がもげる勢いで手を振りかえした。
**
朝の会が終わり、私はその場に座ったままでいた。
うん、誰も寄ってこない。
完璧転校デビュー失敗。
こんな出だしで、私これから先やっていけるのかねぇ……?
そう思ってると、
「依麻ちゃん」
「ふぁいっ!?」
いきなり後ろから声を掛けられたもんで、変な声が出てしまった。
慌てて振り返ると、三人の女子。
私は目を点にして、三人を見た。
「私、由良っていうから。で、こっちが優でこっちが愛奈」
「ぁ、あぁ、よ、よろしくね」
私の頭は一気に混乱した。
誰が由良ちゃんで誰が優ちゃんで誰が愛奈ちゃん?
あひゃ、顔と名前が一致しないよ。
「……あ、慣れるまで名前覚えなくても大丈夫だからね」
「あ、え、あ」
私の感情を察した一人の子がそう言い、三人は去って行った。
あぁ、行ってしまわれた。
一人にしないでうひぃひぃ。
「——あれ転校生!?」
「水名じゃん」
「水名麻美だな」
廊下にいてこっちを覗く違うクラスの人達は、私を見て次々と呟いた。
だから誰。
水名麻美って何!?
私は水城依麻だっつーの!!
そう心の中で叫び、とりあえずじっと自分の席に座っていた。
——さてさて、わたくし水城依麻。
新しい学校でうまくやっていけるのでしょうか?