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Re: *叶恋華* +実話+ 50話達成! ( No.219 )
日時: 2011/02/14 22:28
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Q3zV8Sch)
参照: 触れあって全てが伝えられれば楽なのに (by.Bad Sweets

第五十三話『作戦、実行』


話せない壁を打ち消そう!
名付けて、『消しゴムで壁をぶち壊そう!』作戦〜!!
ぱふぱふ。


……馬鹿か、私は。
心の中でそんなツッコミを入れ、作戦に使うもの——……消しゴムを握りしめた。
前にふざけて書いた眉毛とまり○っこりみたいな目の変な落書きが書いてあったが、気にしない。


上手く、いきますように——。
握りしめたままそう願った。


「——じゃあ、黒板を参考にしながらレポート書いちゃえよ〜」


チャンス!!
今はちょうど、レポートの時間になったみたいだ。
こういう時こそ、さりげなく消しゴムを落とせるんだよねぇ……。


私は自分の横にファイルを置き、その上に消しゴムを置いた。
そして更にその上にプリントを置いて見えなくさせて、しばらく経ってからさりげなくプリントの上に腕を置いて、少し動かした。


消しゴムは上手くファイルの上を滑り、音もなく後ろの方へ転がって行った。


「——……おい、壱。拾ってあげろって」


後ろの席の龍が、そう呟いた。
……よっしゃ、成功した!
まず、第一ミッションクリア!!


「いや、なん……なに?」
「拾ってあげろって」
「え?」
「気付いてないし、早く渡してあげろってば」


あえて気づいてないふりをしている私。
真剣にレポートを書いている……演技をしていた。


「……龍が渡せば」


しかし壱は、小さな声でそう言い放った。
私は耳だけ傾かせ、二人の会話を聞く。


壱が拒否しても、簡単に諦める龍ではなくて——。


「なにいってんだお前、お前が渡せ」
「…………」

来ました、龍の粘り強さ!
それに対して、壱は無言。
無視してるのかも知れないけど、しかしまだ龍の先制攻撃が続いた。


「そんなことも出来ないのか、お前〜」


龍は馬鹿にしたように、壱に向かって笑いかけた。
それに対して壱も少しカチンと来たのか、声が少し大きくなる。


「いや、出来るけど、」
「じゃあやれよ、壱」


龍の攻撃は、まだまだ続きます。
龍ナイス、このまま順調に行けば——……。


「……わかったよ、渡せばいいんだろ!?」
「うむ」


よし、あと一歩だ!
あと一歩、あと一歩——。
このまま壱が拾って渡してくれれば、第二ミッションはクリアできる。


しかし壱は、そんな私の期待を見事に裏切った。


「……はぁぁ〜……はぁっ」
「何気合い入れてんだよお前! そんなやる気出さないといけないのか?」
「いや、そうじゃないけど……」


壱は謎の声を上げ、なかなか消しゴムを拾わずにいた。
すると龍もしびれを切らしたみたいで、壱の机を叩く。


「ほら、渡せ!」
「どこにあるんだよ」
「壱の近くにあるだろ」
「……や、ぇ……どこ」


どうやら消しゴムは壱の近くにあるようで。
だけど壱には見当たらないようで——。


「そこにあるだろ」
「あ?」
「そこ。手ずらして。——あ、違う。手、右! こっち。……そう、それ」


龍が指示し、壱は消しゴムを探しているようだった。
私は二人が消しゴムの方に視線を集中させてるうちに一瞬チラ見をして、二人の様子をうかがう。
壱は必死に手を伸ばし、消しゴムを探していた。


「——これか」
「じゃあ渡せ」
「……」


壱が無言になり、沈黙が流れた。
龍は小さく笑い声を漏らし、急かすように呟く。


「渡せよ」
「……ぇ、ゃ、龍、」
「早くしろよ」
「…………ゃ、」


壱はなかなか渡そうとせず、小さい声で何か呟いてばかりだった。
そんな事を何回か繰り返してるうちにチャイムが鳴る。
タ、タイムリミットが……。


「——……あぁぁもーう!」


すると龍がそう声を張り上げ、私の机に向かって思い切り消しゴムを置いてきた。




しかも、よりによって眉毛が書いてある方を上にして——……。




「……あ、ありがとう」


私は消しゴムを落としたのを気づかない設定で、驚くふりをしてお礼を言った。
一応途中までは成功したにはしたけど——……。
結局、壱は拾ってくれなかったという結果になった。