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Re: *叶恋華* +実話+ 50話達成! ( No.228 )
日時: 2011/02/15 20:32
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: p17IpJNR)
参照: じゃがいもが♪ 迫ってくるよ♪ いつまでも♪ホイッ(どうした

第五十四話『とある理由』


*給食時間終了*


「……あー」


私は水道の傍で、給食トレーを回収していた。
そう、私は給食当番。
まぁ、今回の仕事はトレー集めるだけだから簡単だけど……。


「ん」
「はいよー」


中條がやる気のなさそうにトレーを差し出してきた。
私は素早く受け取り、トレー立てのところに置く。


「……」


振り返ると、誰かにトレーを差し出された。
その人は身長が高く、私の視界にはトレーしか入ってなかった為、顔を上げてその人物の顔を見てみた。


「……っ!?」


一気に心拍数が上がった。
壱……っ!?
い、壱がトレーを差し出している!?
私はドキドキしながら、壱とトレーを見ていた。


トレーがあるにしても、なんか距離が遠い……ような。
なんか壱、私と目合わせないようにしてクールな顔でトレー差し出してるし。


「……」


私は恐る恐る無言で受け取る。
すると壱はさっさとその場から立ち去り、私に背を向けて原田くんたちのところへ行ってしまった。


その時に、本当に一瞬だけ目が合った気がするけど——……。
私の気のせい、だよね。


**


五時間目、私は席に座って壱を軽く視界に居れた。
……またちょっと近い……気がする。
まぁ、目の錯覚かもしれないけど。


そう思ってると、


「壱イケメ〜ン」


吉澤が興奮し始めた。
壱に「イケメン」と連呼して、笑みを浮かべている。


「イケメンじゃないよ」


壱は無表情に近いクールな顔で、そう言った。
しかし、吉澤は変わらず連呼している。


「イケメンだべ、絶対イケメン」


吉澤は、授業中一人で下ネタ言って一人で笑う、変な人だ。
一応不良だから格好はチャラチャラしてるし、生活態度は最悪。
しかも、何考えてるのかよくわからない。


「イケメンイケメン〜(放送禁止用語)、まじ(放送禁止用語)〜あははははっ! 壱イケメン〜」


一体どうしたんだ、吉澤。
そう思いながら吉澤を見ていると、



「え、俺ざこめんだし」



壱がそう言った。
周りの人達は、壱の発言に笑い始める。
ざ、ざこめんって……。
新しい言葉を開発しましたね、壱。


私も小さく笑みを浮かべながら、壱の背中を見ていた。


**


その日の放課後——。
私は優にある頼みごとをしていたため、その事を聞く為に優を呼び出していた。
また騒がしい廊下の中、私たち二人は横に並ぶ。


「……あのさ、優に頼んだ事……聞いてくれた?」
「……あぁ、うん。聞いたよ」


優に頼んだ事、それは——。
『壱に私を振る理由をさりげなく聞いてほしい』ということだった。
頼める人は、壱の隣の席の優しかいないし——。
本当は自分で聞きたいくらいだけど、そんなこと聞いたら更に嫌われるだけだよね。
そう思い、優に頼んでいたのだ。


「理由、どうだった?」
「……」


優は少し俯いた。
ど、どうしたんだ優。
私は少しだけ焦る。


「……私の口からは言えない、言いたくない」
「……え」


言えない、言いたくない——?
それって、


「そんな酷い理由なの?」
「……うーん……」
「酷い、理由なの?」


思わず、二回聞いてしまった。
違ってほしい。
酷い理由じゃない、理由がいい。
勝手ながら、そう思ってしまった。


全部、壱の気持ちなのに——。
私が思ってもどうにもならない、のに。


私は、そう願ってしまった。


「……」


沈黙が、私たちの間に走る。
私は優の顔が見れず、俯いていた。


すると、優がゆっくりと口を開いた。





             「……うん」





たった一言の、言葉。
その言葉は、目が醒める位に私の頭の中を一気に真っ白にした。