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Re: *叶恋華* +実話+ 56話更新! ( No.272 )
日時: 2011/02/20 03:40
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: VYCQ1KaR)
参照: いつも自分の事を守るだけで(by.嘘とタイムマシン

第五十七話『呼び出し』


ごめんなさい。


ごめんなさい、ごめんなさい——……。


弱い私は、心の中で謝る事しか出来ないから。





放課後——。
私は掃除当番の愛奈を待つ為に、由良と優と隣のクラスのまなと一緒に廊下で話していた。


「愛奈、まだかなぁ〜」
「遅いよね、愛奈」


そんなごく普通の会話をしていた。
そう、普通の会話をしていたはずなんだ——。


だけど、


「——ねぇ、ここじゃなくてさ! あっちの奥で話さない?」


このまなの一言で一気に事態は急変することとなる。
そんなの知らなかった私は、頷いて話を合わせていた。
廊下の奥は理科室の前でもあり、人通りが少なく、ある意味告白するには最適な場所でもあるんだけど——……階段とか降りるときに見えちゃうしね。
私はそう思いながら、まな達の後に着いて行った。


**


「ふぉうふぉうっ」


廊下の奥に着くと、私は何故かテンションが上がってマフラーを振り回していた。
由良は笑みを浮かべていたが、まなと優の顔は険しかった。
しかし私は気づかず、一人で騒いでいた。


すると、


「……依麻」
「ん? なにー?」


まながゆっくり口を開き、私はノリノリで返事した。
しかしまなは、


「……実はさ、ここに来たのは——……。うちら、依麻に言いたいことがあるからなんだよね」


真剣な顔でそう言った。
私はマフラーを振り回すのをやめ、皆の顔を見渡す。
優とまなは不機嫌そうな顔をしていて、笑みを浮かべていた由良も真剣な顔をしていた。


「……え? 何?」


嫌な予感がした。
でも私は、平然を装った。
気づかない、ふりをした。


「——あんたさぁ、うちらに聞いて聞いてばっかでさぁ、自分ではなにもしてないじゃん」


優が私を睨みながらそう言った。
一瞬思考が止まったかのように、頭の中が真っ白になる。
だけど、すぐわかった。


あぁ、これは壱の事で言われてるんだなぁ……って。


「相談ならいつでも聞くよ? でもさぁ、自分でもちょっとは行動すれば?」


優は腕を組んで、そう呟いた。
その発言に、私の頭の中で少しずつ何かが湧き上がる。
私は、何もしてない訳じゃない。
わかりやすい行動とかはできないから、私は私なりに影で行動してるつもりだ。
でも、それもうまく出来ないから頼ってるんじゃない。
そんな気持ちが、私の中で芽生えた。


「……聞けばさぁ、わざと消しゴム落として壱に拾わせようとしてたらしいんじゃん?」
「っ!」


優の発言に、私の心臓は飛び跳ねた。
な、なんで優が知ってるの——……?


「……ぁ、」


私は掠れた声しか出なかった。
言葉が、見つからない——。
でも、もしかして……?
そう思いながら由良の方を見ると、由良は私の方を見て私を睨んでいる。
その由良の姿を見た瞬間、私は悟った。


由良が、優に言ったんだ。
私があの作戦を実行した後、由良に報告したから——。
そうだよ、由良だけにしか言ってないもん。


「……」


言わなきゃよかった。
由良の事信じてたから、言ったのに——。
こう簡単に、裏切られるなんてね。
私は軽く頭をかき、心の中で後悔した。


「そんなんしてどうするの? そんなずるい手使ったってね、お前なんかに壱が振り向かないに決まってるから!」
「……っ」


優の怒鳴り声が、廊下中に響いた。
——わかってる……。
消しゴム落として拾ってもらおうなんて、周りから見たらずるいよね。
でも私、ただ壱と話す口実が欲しかっただけなんだよ。
私、壱と話したことなかったから。
話すきっかけが、欲しかったんだよ。


「……うちら、壱の親友だから言わせてもらうけど……」


そこで初めて、由良が口を開いた。
『壱の親友』。
その言葉が由良の口から出た時、私は信じられない気持ちになった。


「いや、親友とはいかないけど……友達、だね」


優が横で笑いながら由良の言葉に付け足す。
そして私の方を見て、また鋭い目つきで口を開いた。










        「壱さぁ、依麻のこと嫌がってるの」










大切だと思っていた、友達に告げられた言葉。
それは、私にとってとても冷たくて。
とても、残酷な言葉だった。