コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 59話更新! ( No.279 )
- 日時: 2011/02/20 06:22
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: VYCQ1KaR)
- 参照: いつも自分の事を守るだけで(by.嘘とタイムマシン
第六十話『trouble』
私と愛奈は福野の後に続き、教室に入った。
教室の中は薄暗くて、視力が弱い私には少し見えづらい。
しかし窓の外の景色が反射し、少しだけ明かりに照らされている。
私はその照らされている机に座り、愛奈がその後ろに座った。
「……依麻、どうしたの」
福野は私の前に座り、そう呟いた。
私はバックを下敷きにして顔を伏せたまま、黙って泣いていた。
「……愛奈、依麻どうしたの?」
「え? ……依麻……」
愛奈は言っていいのか悪いのかわからないみたいで、言葉を詰まらせた。
それに気づいた福野は私に「話してもいいんでしょ?」と聞いた。
本当は嫌だったけど、この際仕方ない。
全部吐き出しちゃって、早く家に帰ろう。
そう思い、小さく頷いた。
「……じゃあ愛奈、話して」
「……はい。依麻、ごめんね。——えっと……」
「あ、ちょっと待った」
愛奈が話そうとしたときに、福野が止めた。
愛奈は言葉を止め、一気に沈黙が流れる。
「……優と由良、関係ある?」
「え? あ、まぁ……はい」
「まなは?」
「まなも……ありますね」
「じゃあ愛奈、悪いけど三人呼んできてもらえる?」
「わ、わかった」
話し合いでもするつもりなのだろうか。
別に話し合うことなんかない。
私はそう思いながら、愛奈が走って行く足音を聞いていた。
残された福野と私の間には、沈黙が流れていた。
**
「——お待たせしましたっ」
しばらくして、愛奈が息を切らしながら教室に入ってきた。
少しだけ由良と優を見ると、二人は不機嫌そうな顔をしている。
あー……、もう。
「……まなは用事あるので帰りました」
「あ、そう。じゃあ座って」
まな……逃げたな。
私はそう思いながら、再び顔を伏せた。
二人は私と離れたところに座る。
「……じゃあまず、あんたら何したの」
「え……。何もしてませんけど」
「何もしてないのに依麻が泣く訳?」
私と話すときは優が中心に話していたが、今回は由良が中心になって福野と話をしていた。
由良も福野も、イライラしている。
問題児の由良と福野は、元々相性が悪いからなぁ……。
そう思いながら、二人の会話を聞いていた。
「私たちはただ……。依麻に言いたいこと言っただけです」
「本当にそれだけ? それだけで依麻が泣く訳?」
「……。確かに、言い方はきつかったかもしれない。だけど——」
「大体、何のことを言ったの?」
福野は由良の言葉を遮ってそう聞いた。
由良は少し黙った後、ゆっくり口を開く。
「……恋愛。私はこんなに好きな人の為に努力してるのに。優だって、門倉に一回振られたのに、頑張ってメールしたり努力してんだよ? なのに、依麻だけ全部さ、全部私たちに頼って——。何も努力しないでへらへら笑って。そんなのずるすぎる。自分で行動すればいいのに!」
由良は一気に、少し震えた声でそう言った。
そして一息置いてから、
「……迷惑……、なんだよ」
そう呟いた。
——私、友達からそう思われてたのか。
好きな人にも『迷惑』って思われて——。
私の胸はまた締め付けられ、再び涙が溢れ出してきた。
「……それは、由良も優も積極的に誰とでも話せるからでしょ?」
「っ!」
「中にはね、依麻みたいに何も出来ない子だっている。あたしが学生の時にも必ずいた」
「……でも、」
「そういう子に無理言う方がおかしいと思うけど」
福野の口から、鋭い言葉が出る。
それと同時に、由良と優は黙ってしまった。
私は少し驚き、顔を上げる。
まさか、福野が私の方について話をしてくれるなんて思わなかった……。
「——じゃあ、由良と優は一回教室出て。その辺で時間潰してろ。逃げるなよ」
福野がそういうと、由良と優はカバンを置いて教室を出た。