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Re: *叶恋華* +実話+ 71話更新! ( No.326 )
日時: 2011/03/14 21:27
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 2awtZA.D)
参照: 期待するのを、やめました←

第七十二話『feeling』


それから、五時間目が終わり——。
教室では、クラスメートたちが帰りの準備をしていた。


私はバッグに適当に教科書を入れ、溜息をつく。
辺りを見回せばいつも通り賑やかで、いつも通り平凡だった。
だけど、由良と愛奈はまだ戻ってきてないし……。
優も教室にはいなかった。


これから、どうすればいいのだろうか。
由良と愛奈を探しに行く?
……いや、それは私がすることじゃないかな。
優に謝って仲直りする?
……いや、それはちょっと——。
なんて、なかなか決断することが出来ない。
変に私の中のプライドが邪魔をする。


壱の方を少し見ると、男子がたくさんいた。
いつも壱の周りには、一人か二人ぐらいしかいないのに……。
そう思ってると、


「ラブトークか、壱!」


疾風が壱の肩を叩きながら、そう言って笑った。
ら、らぶとーく?


「……や、ちげぇし! ——の前でそういうこと言うなよ」


ちょうど肝心なところが、周りの雑音によって聞こえなかった。
あぁぁ、もう!
……って、そういう細かいところを気にするから駄目なんだよ私。
うん、気にしないことが大事。
そう自分に言い聞かせ、平常心を保ちながら前を見た。
すると、


「——由良と愛奈、どこ言ってたの?」


女子たちに質問されている、由良と愛奈の姿が視界に入る。
二人は「いや、ちょっと……」とお茶を濁しながら席についた。


「……」


その時に見えた二人の顔は、なんだか泣いていたように見えた。


*放課後*


やっと、終わった。
私はバッグを持ち、心の中で溜息をつく。
そして逃げるように教室を出ようとした時、


「依麻ーっ!! 一緒に帰ろ!」


いつもの口調で、私を呼ぶ声。
いつもの口調で、そう叫ぶ大きな声。


いつも由良の、明るい声が聞こえてきた。


「……由良……?」
「一緒に帰ろ、依麻」


由良はそう言って、少しだけぎこちない笑みを浮かべた。
驚きながらも由良の顔を見ると、由良の目は少し赤くなっている。
……やっぱ、泣いてたんだ。


「……」


ていうか由良、私と一緒に居るところを優に見られたら——。
あぁほら、優がこっち見て睨んでる。


「……教室出よう、依麻」
「……うん」


それは由良も気づいたみたいで、小声でそう呟いた。
しかしそれよりも早く、優はこちらに近づいてきていた。
そして、すれ違いざまに私の方を睨み——……。


「——うぜぇ」


そう呟いて、教室を出た。
『きめぇ』の次は『うぜぇ』か。
ワンパタすぎる。
その二つしか言えないのか。
そう思っていると、


「……気にしなくて、いいよ」


横に居た由良が、そう呟いた。
大丈夫、気にしない。
刹那の時はこう……、もっと精神的に傷つく事を言われてきた。
それに比べたら、優のワンパタ悪口なんか全然気にならない。


「……依麻、悪くないから」
「っ!」


由良のその一言で、私は思わず驚く。
由良の顔を見ると、真剣だった。


「何も、悪くないから……」


由良は、少し声を震わせてそう言った。
違う。
私が悪いのに。
私が今回の全ての引き金なのに——。


私に、そう言ってくれるなんて。
由良は本当に——……、


「——由良、依麻。掃除終わったらちょっと残って」
「「え?」」


いつの間にか後ろに居た福野にそう言われ、私たちは声を重ねる。
福野の顔つきで、大体の事がわかった。


「愛奈も、連れて来て」


——あぁ、これで。
これで、今後の話が決まるんだ。


優のこと、そして——……壱の、ことも。