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Re: *叶恋華* +実話+ 74話更新! ( No.338 )
日時: 2011/03/21 17:37
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Go.89if1)
参照: あの夢に君が出てきた時から スネオじゃないの(は

第七十五話『気持ちの真実』


私たちは学校から出た後、由良の通っていた小学校に来た。


「なっつかし〜」
「グラウンド広いね」
「でしょ? こっち行ったら遊具とかあるから、そこで座って語ろう!」
「うん!」


私と愛奈は由良に引っ張られ、遊具のある場所へ向かった。
そこにはジャングルジムや鉄棒などがあって、由良は本格的にはしゃぎ始めた。
そしてそのままジャンパーを脱ぎ捨て、ジャングルジムのてっぺんに上る。
私と愛奈は、その場で茫然と由良を見ていた。


「愛奈と依麻もおいで!」
「え……、あ、うん」
「でも、寒くない? ジャージだけとか」
「寒くない寒くない! ほら脱げー!!」


北海道の冬は寒いんだぞ、由良さんよ。
私と愛奈は脱ぐのを戸惑っていると、しびれをきらした由良が降りてきた。
そして、無理矢理ジャンパーをひっぺがす。


「ほら、早く上るぞ!」
「ちょ、ジャングルジム冷たっ!」
「手袋、誰か手袋ーっ」


十二月になったばかりだからか、思っていたよりは寒くなかった。
だけど、すっかり冷え切ったジャングルジムを触ると凍えるほど冷たかった。
私と愛奈は叫び声をあげながらも、なんとか無事にてっぺんに上ることに成功した。


「いやぁ……。なんか三人で学校の外で語るのとか初めてじゃない?」
「あぁ、確かに!」


私たちは、次々に口を開いていく。
初めての三人での寄り道。
家族のこと、優のこと——。
他愛のない会話をしていた。


「——そういや、依麻さぁ」
「ん?」
「壱のことまだ好きなんだよね?」


由良からの突然の質問。
壱——……。
少しだけ、胸が締め付けられた。


「……好き……だけど、諦めなきゃいけないから……」
「え、なんで?」


由良は、目を丸くして私を見る。
……由良さん、あなたたちが言った言葉をお忘れですか。


「壱は私の事迷惑がってるし……。これ以上好きでいたら、余計壱に迷惑かけちゃうもん」


私は変わらず壱が好きだけど——。
諦めなきゃ。


「……あぁ、それねぇ〜」


由良は何かひらめいたように私を見た。
私はその由良の態度に疑問を覚える。
そして次の言葉で、


「なんか、付き合うかやめとくかしか聞いてないみたいだよ」
「……え」


私の思考回路は、止まった。
……な、え、あ?


「で、——って感じで——で——……。だから大丈夫だよ!」


由良が笑顔でそう言うが、頭が真っ白になって話の意味がよくわからなかった。
でも、ただ一つ思ったこと。
優がそれしか聞いてないなら——……。
迷惑、って言ったのは、作り話?
それとも……?
いや……。私は壱じゃないし、壱の気持ちなんてわからない。
だから確信は出来ないし、真実がどうなのかはわからないけど——。


でも、由良の話からいけば。
まだ、諦めなくても大丈夫なのかな?
迷惑かけるかもだけど……。
好きでいて、いいのかな?


無理して諦めなくても、いいのかな——?




そう考えたら、気が楽になった気がした。
それと同時に、今までのモヤモヤが消えたような——。
そんな気が、した。