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Re: *叶恋華* +実話+ 74話更新! ( No.345 )
日時: 2011/03/21 22:07
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: ty0KknfA)
参照: 大丈夫、大丈夫 上手く笑えなくていいんだよ(byピエロ

第七十七話『君の気持ち』


休み時間、私は愛奈と由良の所へ行った。
二人は「た」と「さ」なので、席が近い。
それと同時に、壱との席も近いので——……。
ほんのちょっと近くに行くのは抵抗あったけど、水城依麻頑張ります。
えぇ、頑張ろうと思いますよ。


「——で、依麻は優に手紙をもらったわけね?」


優に手紙をもらって謝られた事を、由良と愛奈に話した。
由良は話をまとめるようにそう言った後、少しだけ顔をしかめる。
やっぱ由良の意志は固いよね……。


「とりあえず……。様子、みない?」


由良はそう言って、私と愛奈を見た。
私と愛奈は黙って頷く。
そうだよね、様子を見るのが一番だよね。
同じこと繰り返すの嫌だし——。


でも、まさか優が謝ってくるとは思ってなかったから。
ほんの少し……いや、かなり驚いた。


「……ていうか、次のテストなんだっけ?」
「社会じゃなかったっけー?」


私は黒板に書いてある時間割を見ようと、振り向いた。
そう、時間割を見ようとしただけなんだ。
見ようとしただけ、なのに——。


「……っ」


私が振り向くと同時に、壱もちょうどよく振り向いて目が合った。
偶然だ、偶然。
こっちも壱を見ようとした訳じゃないし、あっちも私を見ようとした訳じゃない。
うん、偶然しかありえない。
ありえないけど——……。
思わず壱を見つめたまま何秒か固まってしまったが、壱はさりげなく目を逸らす。
私もゆっくりと目を逸らした。


やっぱ、私は壱が好きだ。
こんなにドキドキするなんて、異常だ。
——もう、揺るがない。
私の気持ちは、本当に真剣だ。
簡単に諦める事なんか、出来ない。
絶対に——。


頑張る。
私は私なりの方法で、他人に何を言われても。
頑張って、見せる。
改めて、そう心に誓った。


**


「テスト終わったぁぁ!!」


五時間目終了のチャイムが鳴り響くと同時に、私は背伸びをした。
前に居る優が振り向き、「お疲れ」と笑みを浮かべる。
私は少し戸惑いながらも、笑みを返した。


とりあえず様子は見てみるものの、お互い悪い態度はしないで普通に接していた。
とりあえず、よかったかな……?
なんかこう、物事が一気に解決するとすがすがしいね!!
テストも終わったしね、うん。
見事惨敗したけどね、あひょひょひょ。


「でも六時間目あるよねぇ……。めんどくさ」
「なぬ」


優の言葉で、私は一気に青ざめた。
そう、この学校……。
テストで解放されて気が抜けた後に、六時間目の授業があるのだ。
天国気分から、一気に地獄行きだよ。
……まぁ、数学とか英語とかそういう授業じゃないからまだ楽だけどさ。
私はそう一人心の中で文句言いながら、座席の位置を元の場所に戻した。


「壱ー。寂しかったよ〜」
「あ、おう」


席を元の場所に戻すと、まず飛び込んできた声。
後ろの席の、門外龍の声だった。
龍の隣……私の斜め後ろに居る壱は、少し戸惑いながらも軽く笑った。


「隣にいなかったからね」
「は?」
「壱、隣にきてほしかった」
「え、」


どうやら龍は、壱が大好きらしい。
ごめんよ私みたいな変人が隣でさ。
壱は戸惑いながら、軽く笑っている。


「壱、隣にいたら本当よかったのに」
「いや、ごめん。ちょっとね」
「ちょっとってなぁにぃぃー? ねぇ、ちょっとってさぁー」


龍が突然、何かをねだる小さな子供のような声を上げた。
私はその龍の声に笑いそうになりながらも、二人の会話に耳を傾ける。
すると壱が、少し笑みを浮かべて小さく呟いた。


「……そういうんじゃねぇし」
「じゃあちょっとってなーにー? 壱、——……」


龍が壱に何かを告げる。
龍は壱の耳元で囁いたので聞こえなかったけど——。
壱が明らかに動揺した……、気がする。


「……お前、次そのネタ出したらどうなるかわかってんのか」


ほら、やっぱり動揺してる。
そのネタって、なんなんだろうか。
気になる、気になりまっせ兄さん。


「ちょっとってなぁにぃぃぃ〜?」
「や、りゅううぜぇ〜」


壱が笑いながらそう言った。
そしてすぐその笑いを止め、龍の耳元まで体を近づけた。
ちょ、壱との距離が近い……っ!!
私は心臓が張り裂ける勢いで、硬直していた。


「龍の好きな人——……するぞ」
「別にいいよー。つか好きな人いないし」
「うわ、そうやって」


好きな人……ってことは、きっと今までのくだりは恋バナって事だよね、多分。
壱も動揺してるし。
……ってことは、もしかして……。
壱、好きな人いるの!?


「だって壱下手なんだもん!」


龍が軽く頬を膨らまし、少し甘えた声でそう言い放った。
それはまるで、彼女が拗ねて彼氏に甘えた声で訴えるような——。
なに、それなら壱が彼氏で龍が彼女?
……彼氏より背が高くて、鍛えられたごっつい体の彼女……。
あ、なんか今龍がスカート履いた姿想像しちゃった。


「……は?」
「下手、下手すぎ」
「……っ、」


龍がそういうと、壱は黙ってしまった。
下手……って、何が?
好きな人に対する態度?
じゃあやっぱ、壱には好きな人が——……。


『前にほのかの事じーっとみてたから』


福野の言葉が、頭の中を過る。
やっぱり……。
壱の好きな人は、ほのか……なのかな。


確実に決まったわけじゃない。
そう福野も言ってたけれど——。
やっぱり、胸が苦しかった。