コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 78話更新! ( No.351 )
- 日時: 2011/03/22 19:46
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 3lsZJd9S)
- 参照: 嫌われたくないからと 自分を放棄した(by.リフレクト
第八十話『天然lover』
「——あー、寒い……」
あれから数時間後。
さっきまで騒いでた龍が嘘みたいに押し黙り、弱弱しい声でそう呟いた。
「俺のジャンパー貸すか?」
「まじ? さんきゅー」
ちょうど立ち歩いてた健吾が、自身の黒いジャンパーを龍にかけた。
龍は頭にジャンパーを被せ、某アニメの黒いキャラクターみたいになる。
見た目はなんだかおかしかったけど、それでも龍は暖かそうだった。
それに対して、壱が一言。
「龍はハゲてるから寒いんだよ」
「うるせぇロング野郎、ワックスでツンツンしやがって」
龍は野球をやっているので坊主だ。
なので、頭が寒そうとは私も思う。
壱は坊主ではないし、ワックスで軽くふわふわ立たせれる髪がある。
なんだか龍は悔しそうな顔をしながらも、ジャンパーに顔を埋めた。
「いい匂いするー、健吾のジャンパーいい匂い〜」
「ファ○リーズ?」
壱のまさかの某置き型消臭スプレーの名前を出した。
私は思わず吹き出しそうになったがなんとか堪える。
龍は壱を無視して、言葉を続けた。
「暖かいし、まじいい匂い〜」
「ファ○リーズ?」
「なんで壱はいつもそのファ○リーズの方向に持って行こうとするの?」
某置き型消臭スプレーの二回目の登場に、ヒロは笑いながら壱にツッこんだ。
壱も軽く笑い、そしてまたもや珍解答を発した。
「ファ○リーズってさ、ベランダーの匂いするじゃん」
……ベランダー? ベランダ?
え、えぇぇ!?
龍とヒロは笑いを通り越し、ただ茫然としていた。
そんな二人の様子を見た壱は、
「——……あ、間違えた! ラベンダーだ」
自分の間違いに、気づいたみたいだ。
間違えた事に照れ笑いする壱は少し可愛かったけど——……。
ちょ、ベランダーの匂いって。
ラベンダーとベランダー間違えるなよ!!
私は盛大に吹き出しそうになるのを、歯を食いしばり抑えた。
**
壱の天然がいつも以上に凄まじかった時間も、もうあっという間に過ぎて。
放課後がやってきました。
今現在私のクラスは帰りの会の最中で。
さぁ、学校が終わる前に壱は何か天然発言をするでしょうか!?
そう思いながらチラ見しようとした時、
「っ、龍——……」
「……ん。壱、今なんか言った?」
「いや、——」
壱が何か龍に向かって呟いていた。
声が小さくて聞き取れないけど——。
この席になってから、龍とこういうやりとりが多くなったよね。
やっぱり、好きな人が出来たかもしれないからかな——……?
「……なに、俺何も言ってないじゃん」
「や、——……」
「……わかったよ、そのことでもう俺何も言わないよ」
龍はそう言って、小さく笑みを浮かべた。
『そのこと』ってなに?
やっぱり、『恋』の事——……?
気 に な る !
でも直接聞く訳には行かないし……ねぇ?
気になるけど我慢しなければ。
私は欲望を抑え、長い帰りの会が終わるのを待っていた。