コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 83話更新! ( No.374 )
- 日時: 2011/03/29 04:55
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: hzhul6b3)
- 参照: 自分磨き頑張る。あの子に負けない。
第八十七話『恋愛思考』
「ヒロ、水城さんの椅子じゃない?」
「「え?」」
それは、ある日の数学の授業中——。
龍の一言で、私とヒロは声を重ねた。
「だって、椅子の後ろに『水城依麻』って書いてあるよ」
龍が軽く笑いながら言った。
私は慌てて、ヒロの椅子の後ろを見た。
……『水城依麻』……。
あら、私の名前こんにちは——……って、
「え、えええ?」
私は顔を上げ、今度は自分の椅子の後ろを見た。
……『秋野弘人』——?
あらま、見事に反対。
「なん、なんで?」
突然の椅子入れ替わり事件で、私の頭は混乱していた。
後ろに居る龍は小さく笑ってるし、何故か壱は大爆笑しているし……。
壱、滅多に大爆笑しないのに何故。
何が彼のツボを刺激したと言うんだ?
「……とりあえず、椅子代わろう」
混乱する私はさておき、ヒロは冷静に私の椅子を返還してくれる。
私も授業中という事を忘れ、立ち上がってヒロと椅子を交換した。
……そのせいで、皆の視線がこちらに集中攻撃したのは言うまでもないだろう。
「……まぁ、誰にでもそのくらいの間違いはあるさ。うん」
壱は笑いを抑えながら、そうフォローしてくれた。
優しすぎる、壱!!
「俺、こういう間違いしてる人初めて見たんだけどな」
そんな壱に、笑いながら鋭くツッコミをする龍。
すると壱も笑いが堪えられなくなったのか、また爆笑し始めた。
……ていうか、これ私とヒロどっちが間違ったの?
それ以前に、いつからこうなってた?
そして壱は、なんで大爆笑?
なんだか大量の疑問が残ったまま、私は壱と龍を見ていた。
「依麻、いつ告白するのっ!?」
「えっ!?」
由良の突然の質問。
いきなりですか、由良さん。
「今日ね、壱さん部活ないんだって!」
「……っ」
「チャンスだよ、依麻!!」
由良は、満面の笑顔を浮かべる。
私は俯いたまま、言葉を詰まらせた。
「……っぃや……、駄目だよ……」
言えないよ。
やっと出た言葉は、自分でもわかるくらい情けない声だった。
私も、チャンスがあるならば告白したい。
今すぐにでも、この想いを伝えたい。
だけど、私と壱はまだ話したこともないし——。
何も接点がない。
それに、また告白未遂になって——。
壱の機嫌が悪くなったら、困る。
今回の恋は、前みたいなぐちゃぐちゃな恋愛にならないように。
ただ、がむしゃらに前に突き進むんじゃなくて。
ゆっくり、慎重に頑張っていきたい。
今回の恋こそ、大切に、焦らないで手に入れていきたい。
『壱と付き合いたい』。
この気持ちが強い限り、下手な行動は出来ない。
今度こそ、前の恋みたいな失敗はしないんだ。
私は馬鹿だけど、八回も同じことを繰り返せばいい加減学習する……はずだ。
うん。
協力してくれる由良には感謝してます。
だけど——。
「とりあえず、まだ告白しないよ」
まだ、告白しない。
この想いを、胸の中に留めておくんだ。