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Re: *叶恋華* +実話+ 87話更新! ( No.380 )
日時: 2011/03/30 06:07
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: HPru.2N2)
参照: ほそまっちょーっ(は

第九十二話『膨らむ気持ち』


次の日。
現在の授業は、理科。
今日は理科室で実験だった。
理科室の実験は、時間が経つのが早いし楽だし好きだ。
隣の班が壱だし——……。
そう思い、軽く壱を見ると——。


「っ!」


壱とばっちり目が合った。
……なんという、偶然。
壱が私を見てた訳じゃなくても、偶然でも目が合ったのは嬉しい。
目を逸らされたけれど、私は何回か壱をチラ見していた。
もう一回、目合わないかなぁ……なんて思いながら。


「……壱〜」


違う班の吉澤が、不気味な笑みを浮かべながら壱の名前を呼んだ。
やばい、私の行動気付かれた?
そう思ってると、壱の近くに来て何かを呟く。
あぁ、どうせこの人も『今、水城が壱の事見てたぞー』とか言ってるんだろう。
……なんか、昨日の出来事を思い出してしまった。


「ゃ、——……」


壱は吉澤の言うことを否定しながら、何かを呟いた。
あぁぁ、壱の声がもう少し大きかったらいいのに。
そう思ってると、




            「付き合ってんのー?」




「!?」


吉澤が大きな声で叫びだした。
理科室は、一気に静かになる。
吉澤がこんな事言うのは、多分私が壱の事何回もチラ見してるし、壱の事が好きだからだよね。
多分吉澤は、情報通だから私の好きな人を知っているはず。


ていうか、この静まった気まずい空気どうしてくれるんだ。


「……付き合ってないよー」


沈黙を破って、壱がそう大声で言った。
壱にしては、異常に声でかい。
更に教室が静まった。


「……」


誰か何か喋って。
吉澤も壱も、大声発した後に黙らないでよ。


「——ほら、吉澤に珠紀! 今授業中だぞ、静かにしろ」


いいだけ沈黙が流れた後、理科の担当教師——通称たこ焼き入りおにぎりがそう言った。
たこ焼き入りおにぎり、ナイス。
壱と吉澤が注意された後、一人二人と喋り始め、次第にまたうるさくなっていった。
……とりあえず、よかった……。


「——……れよ」
「ゃ、——……」


しかし、騒がしくなったらなったで吉澤と壱の会話が聞こえなくなった。
何言ってるんだろう……。
盗み聞きはよくないけど、気になる。
そう思い耳を傾けた時、


「ハゲたらこ」


——え、ハゲたらこ?
壱がハゲたらこって言った……?
いや、まさかそんなはずはない。
この声は——!


「おい、ハゲたらこ!」


健 吾 か よ !!
私は一気に気が抜ける。
健吾はそんな私なんか気にも留めず、私の横の試験管に指を差した。


「ハゲたらこ、試験管とって」
「……私、ハゲたらこって名前じゃないんですけど」
「いいから早く取れ、ハゲ」


誰がハゲだ、誰が。
試験管を健吾の頭目掛けて投げつけたい衝動に襲われたが、我慢。
本当に森野と健吾は、似てる。
似てるなんてもんじゃない、あれは森野だ。
見た目は全然違うけど、性格が本当に森野だ。


森野、望、そして怜緒——。
何やってるかな。
あんなに大好きだった、はずなのに。
大好きだったはずの怜緒の声も、大分思い出せなくなってきた。
怜緒の事、やっと本気で忘れてきてるんだって感じる。


それにつれ、私が本気で壱の事を好きになっていってる事も感じた。