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- Re: *叶恋華* +実話+ 87話更新! ( No.382 )
- 日時: 2011/03/30 08:19
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: HPru.2N2)
- 参照: 頑張っても一日10話は無理だwww←
第九十四話『逃走思考』
*給食*
や、やっと給食だ……。
私は小さく溜息をついて、給食時間の喜びを噛み締めていた。
理科室の実験の後、教室でも壱の顔が見れぬまま……。
『恥ずかしさ』という重荷を背負って、数時間。
やっと自由になれる時間が来ましたよ!!
しかも今日は、はちみつレモンゼリーが出たという訳で——。
私は好きなものは最後に残す主義なので、先にご飯を食べて、お楽しみを取っておいていた。
そしてご飯もある程度食べ終わり、ゼリーを手にとった時——。
隣の班から壱の声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、それ食べる?」
「ん? どれ?」
壱はどうやら、班員に給食をもらおうとしているみたいだった。
班の人が聞き返したとき、壱はこう言った。
「はちみつゼロン。——……ぁ、」
ゼ ロ ン !?
今、ゼロンって言ったよね……!?
私は危なくゼリーを吹き出しそうになった。
「ちょ、ゼロンて」
「壱うけるんだけど!!」
壱の班のメンバーは、全員大爆笑していた。
優なんて、もうツボにハマっている様子。
「や、舌が回らなかった」
壱は笑いながらそう言った。
舌が回らなかったって……!!
なんか、可愛い。
私はそう思いながら、はちみつゼロン……じゃなくて、はちみつレモンゼリーを食べていた。
**
給食の片付けの時間。
私はトレーと牛乳パックを持ち、水飲み場の所に並んでいた。
その時、偶然前に居たのが叶汰だった。
……そう、本当に偶然。
「……」
私は叶汰の後姿を、眺めていた。
叶汰って、こんなに身長大きかったっけ?
私が転校してきた時、もっと小さかったような——。
あぁ、懐かしいな。学校祭準備の時。
短期間だったけど、叶汰を好きになった時の事——……。
「——ねぇ、」
「っ!?」
叶汰の背中を見つめてボーッとしていると、突然叶汰が振り返ってきた。
私は思わず声にならない声をだし、目を見開く。
な、何、私に話しかけてるの!?
頭の中がパニックになるのと同時に、叶汰が笑みを浮かべた。
「まだ壱のこと好きなんでしょ?」
「うえ!?」
思わず変な声が出た。
そ、そんな可愛らしい笑顔でそんなこと言われても……!
ていうか、なんで叶汰が知って……!?
と、とりあえず! お、落ち着け私!
「……は、な、なんで!?」
「いや、なんか疾風が、プロフィールに壱の名前書いただかって言ってたから……」
私、壱の名前プロフィールに書いてないぜ?
プロフィールに壱の名前を書いたのは、優じゃ……?
あぁもう、どっちにしても……っ!!
疾 風 こ の 野 郎 !!!!
「し、知らないし書いてないよ?」
心臓の音がうるさい。
自然に声が震えるし、頭が真っ白になる。
壱が好きなのは事実だけど、素直に『好き』なんて認めれる訳がない!
「え?」
叶汰は目を丸くして、驚いている。
私が驚きたいよ、叶汰くん……。
そう思うのと同時に、二人の間に沈黙が走った。
「……」
沈黙プレイやめてください。
私は何を言ったらいいのかわからず、ただ叶汰の顔を見上げていた。
思考回路は、もう空っぽだ。
多分今の私、凄く間抜けな顔だと思う。
それだけは、わかった。
そんな中で、数秒間経った後。
やっと叶汰が、口を開いた。
「——……まぁ、も、わかんねーっ!!」
ま さ か の 叶 太 逃 走
え、ちょ、兄さん!?
おぃぃぃっ!!!!
呼び止めようとしたが、さすが陸上部。
叶汰はすぐに見えなくなってしまった。
——何だったんだ、一体……。
私はその場で茫然と立ち尽くし、一人で唖然としていた。