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- Re: *叶恋華* +実話+ 98話更新! ( No.408 )
- 日時: 2011/04/16 23:58
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: MIiIBvYo)
- 参照: 君の気持ちが知りたい!
第九十九話『恋想色』
次の日——。
「壱のこと好きなの?」
——は?
授業中、健吾からの突然の質問で、私は固まった。
昨日の出来事のせいで、暗い気持ちになっていた最中だ。
なんだか、この質問は胸が痛くなる。
「好きなの?」
「……な、なんで」
ていうか、健吾って私が壱の事好きなの知ってるはずじゃないか。
なんで何度も聞いてくるんだ、そんなに私に恥をかかせたいのか君は。
「いや、好きなんだろ」
「は、え、な、なんでそんなこと……」
明らかに動揺してしまった。
好き、だけど——。
相変わらず、胸が痛い。
「——じゃあ壱のこと好きだったことある?」
「は、」
何故過去形?
私は素っ頓狂な声を上げ、健吾から目を逸らした。
「……否定しないって事はそうなんだろ」
「や……、じゃ、違——」
「じゃ?」
「じゃあ……、違う……」
自分でこう答えて、更に胸が痛くなった。
違う訳、ないのに。
なんで私、こう言っちゃったんだろう。
自分の言葉で傷つくとか、馬鹿みたいだ。
「じゃあってなんだよ。俺が言ったら否定し始めたし、好きなんだな」
「っ! ……もう、うるさい!」
健吾に図星をつかれ、私の顔は一気に熱が帯びる感覚がした。
健吾の馬鹿。
わかってるなら、そんな質問しないでよ……。
私は机に顔を伏せて、真っ暗な世界に飛び込んだ。
「——好きなの?」
またこの質問か。
そう思ってたけど、なんだか健吾の声よりトーンが低い。
……この声って——……。
「……は? 誰?」
「いや……、」
「龍、誰を?」
やっぱり、龍だ。
壱の声も聞こえる。
龍も壱に、健吾とまるっきり同じ質問をしていた。
龍は、なんて言うのかな?
そして壱は、なんて答えるのかな——……?
そう思ってると、
「……もー、いいや」
龍がそう言って、質問を放棄した。
……気になる。
傷ついたとしても、壱の好きな人が知りたい。
最近、こればっかり考えてる。
「や……、——……気になった」
龍と壱は何やら小声で話し始め、壱のこの発言が耳に入ってきた。
気になった?
気になったって、何を?
好きな人じゃなくて、気になる人がいるの——?
あぁ、モヤモヤする。
気になる。君の事が知りたい。
こんなに好きなのに、何も出来ずに見てるだけの恋なんて。
……イライラする。
こんな自分、嫌いだ。
**
放課後——。
私は人気のない静かな道を歩き、家に向かっていた。
頭の中は、もちろん壱の事。
あの後も結局、ひたすら考えてモヤモヤしているだけだった。
かと言って積極的になれないし。
壱と仲いい訳じゃないし。
私の片想い、だし——。
「……はぁ……」
めんどくさい、自分。
私は溜息をつき、ふと空を見上げてみた。
「……」
視界に入るのは、綺麗な茜空だった。
思わず見入っちゃうほどの、輝く夕焼け。
オレンジ色の光が私の姿を照らし、風が髪を揺らした。
中学一年生の頃、短かった髪の毛。
その好きな人の好みに合わせたり、失恋する度に短くしていた髪の毛。
今ではもう、こんなに長くなっている。
心の底で、ずっと憧れてた長い髪。
影に映る、揺れる髪の毛——。
「…………っ、」
なんだかふいに、泣きそうになった。
今の恋が終わってしまったら、私はまたこの髪の毛を切ってしまうのかな。
想いの数だけ伸ばした髪の毛を、一気に短くしちゃうのかな。
そんなの——、悲しすぎる。
どうか、どうか——。
この恋が、終わらないでほしい。
この想いが、消えないでほしい。
壱の隣に居たい。
この恋の華を、咲かせてみせたい。
振られるばかりの世界じゃなくて、好きな人と両想いになれた時の世界を味わってみたい。
まだ知らないその世界は、どんな感じなのかな?
好き。
二文字の言葉。
大好き。
四文字の言葉。
付き合って。
五文字の言葉。
想いが溢れる度、言葉の数も増えていく。
口に出すだけなら簡単の言葉。
どうして、君の前では言えないのかな。
夕焼けが見える茜空。
少しだけ、ピンク色がかった空。
綺麗すぎて。
君みたいに、眩しくて。
少しだけ目が眩む。
君を、知りたい。
——ただ単純に、好きなだけなんだよ。
吸い込まれそうな景色に向かって、言葉にならない想いを心の中で小さく呟いた。