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Re: *叶恋華* +実話+ 104話更新! ( No.448 )
日時: 2011/04/23 02:16
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: MypRsCNC)
参照: 妓б 秀岨ン 筑・澁 審雰ュ 匏洙ネ 

第百七話『遠ざかる距離』


もう、どうすればいいのさ。


馬鹿、大馬鹿野郎。





「あー……、疲れたぁ〜」
「お疲れ、依麻」
「お疲れ〜」


総合学習も終わり、私たちはまた学校に戻ってきた。
五時間目の学活って、明らかにいらないよね。
このまま帰りたいよ。


「——そいや依麻、壱の隣だっけ?」
「……あー……、隣っていうか通路挟んでるけど」
「でもいいじゃんー。好きな人と席近いとか羨ましい」


由良と優が、私の腕をつつきながらそう言った。
席が近いのは、ありがたいけど——。
贅沢言っちゃいけないと思うけど、さ。
相手に嫌がられちゃ、贅沢も何もない。
なんだか素直に、喜べないもん。
あぁ、朝のテンションはどこへ。


「——はぁ……」


そう思ってると、壱が溜息をつきながら歩いてきた。
また溜息ついてる……。
私は少し胸が痛くなるのと同時に俯き、壱の方を見ないようにした。


その瞬間。
壱は、はっきりとした口調でこう言った。












          「この席見ただけで疲れる」












いつもより、ヤケに大きくはっきりと聞こえた壱の声。
——そんなに、私の隣が嫌なの?
私と隣の席だから、疲れるの?
やっぱ迷惑なんだよね、そうだよね。


私がいくら想っても、壱は気付いてくれない。
私の大きな想いは、壱を傷つけちゃうんだ。


そう思ったら、なんだか目頭が一気に熱くなる。
同時に胸の中に何かつっかたような感覚と共に、少しずつ何かがこみ上げてきた。


「……っ由良、愛奈、優!! 行こっ!!」


私は勢いよく立ち上がり、三人に向かってそう言った。
三人は少し驚きながら、私の顔を見る。
でも今の私は、そんな事も気にせず。
胸に何かこみ上げる感情を押さえつけられないままで居た。


「……私だって……」


怒りなのか悲しみなのか、よくわからない感情で震える声。
自分だけにしか聞こえないような、情けない掠れた声。
——もう、止まらない。
私は着ているジャージの裾を握りしめ、


「ここに居たくないし!!」


さっきの掠れた声とは違い、はっきりとした口調でそう言えた。
誰に言ってるのか、わからない。
よくわからない感情のまま、私は教室を飛び出した。


**


「……っはぁ、」


……やっちまった。
廊下を早歩きして女子トイレに向かったとき、我に返った。


何やってんだろ、私。
また壱との距離が広がった。
あんなムキになって、馬鹿みたい。
こんな事言うつもりじゃ、なかったのに。
いや、でも直接壱に言ったわけじゃないし…sな点。
そもそも、私はさっきの言葉を誰に言った?
きっと壱に言いたかったのは確かだ。
確かだけど——。


あんな嫌味みたいな形になるなんて。
最悪にも程があるぞ、私。


「……っ」


あー、もう!!
イライラする。
さっきまで泣きそうだったのに、もう涙なんか出そうにない。
めっちゃ悲しいし、めっちゃ辛いけど。
込み上げてきたものを一気に爆発させちゃったせいなのか……。
涙なんかでないよ馬鹿野郎!!


「……あー……」


普通、ここだったら展開的に泣くべきだよね。
漫画とかではさ、こうやって主人公が後悔して、泣いてる時に好きな人が——みたいな。
……こんな時に、そんなありえない事を考えたってしょうがない。
これは現実だ。人生なんかそう簡単にうまくいくもんじゃないって、痛いほどわかってる。


「…………」


これから、どうすればいいんだろう。
とりあえず、チャイムが鳴り響いてる。
このまま女子トイレに居る訳にはいかないし——。
教室に戻りたくないけど、戻らなきゃなぁ……。


そう思いながら、私は重い足取りでゆっくり教室に戻った。