コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *叶恋華* +実話+ 107話更新! ( No.454 )
日時: 2011/04/24 18:54
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: udZFMs3r)
参照: 大 好 き で す 。

第百十話『気まずい関係、』


「——依麻、最近元気ないよねー」


その日の放課後。
雪が降っていて寒い道を由良と帰っている時、突然そう言われた。
私は驚いて目を見開き、由良を見る。


「え? ……そう、かな」
「せっかく壱の隣なんだからさー。昨日だって、なんか一人で教室飛び出していったじゃん。何かあった?」


見透かされていた。
由良さん、その壱の隣って言うのが原因なんですよ。
冷たい雪が頬に当たり、それと同時に少しだけ胸が痛くなった。


そういえば、明日はクリスマスだ。




「……私って、壱に嫌われてるのかな」


口から出た言葉は、これだった。
由良に聞いても、そんなのわかるわけないのに。
溢れてしまった言葉は、もう止められなかった。


「壱、ね。私と隣の席になってから様子がおかしいの。昨日は溜息いっぱいついてたし、テンション低かったし……。『この席見ただけで疲れる』とか言ってて——。私の事、そんなに嫌なのかな……?」


やっぱり、あのメールの時も本当は私を許してなかったのかもしれない。
私は壱の優しさに甘えてた?
壱の気持ちも考えずに——?


「……席替えしてからだけの、態度じゃない。私の近くに居る壱は、なんか変だよ」


私が気まずくしているせいかもしれないけど、それだけじゃないと思う。
消しゴムを落として拾おうとしてもらった時、壱はなかなか拾ってくれなかった。
私が優の方見てたまたま壱を目が合うと、壱は何もなかったかのように、さりげなく目を逸らした。
壱は『俺よりもっと他にかっこいい人がいるよ』って、遠回しに諦めろって言ってるような事と同じような事を言った。
……もう、そこから始まってたのかな?
私が気づいてないだけで、壱は『さりげなく』私を避けていたのかな?
考えれば考えるほど、嫌な答えに結びつく。
事実だとしても、嫌だ。そんなの、認めたくない。


頬に当たる雪が、いつもより冷たく感じる。
泣きそうになるのを堪えていると、由良が予想外の言葉を口にした。












「照れてるだけじゃないかなぁ?」






「……ほ?」


思わず、拍子抜けた声を出してしまった。
由良は小さく笑みを浮かべて、私の顔を見る。


「結構前だけど——……。依麻が転校してくる前にね。壱、ホモ中の子から告られて、皆に冷やかされてキレてたから」
「ホモ中……? ——あ、」


『でも壱ってさぁ……前ホモ中に彼女いたんじゃなかったっけ?』
『ほ、ほも?』
『歩藻丘中の略!! その彼女と付き合ってたけど、壱から振ったらしいよ』


結構前、由良と優に『壱が好きになった』と言う報告をしたときの会話が、頭の中を過った。
結構前に、ホモ中の子から告白された。
その告白を、壱が受け入れた。
そしてホモ中の子と付き合って、壱から振った——……?
そう考えれば、つじつまが合う。


『——他中の人と、前にね。メール、してたんだけど……』


壱が前に理科室で言っていた、この言葉。
この『他中』は、きっと『前に付き合ってたホモ中の子』だと思う。
いや、絶対そうだ。
私は、この時『他中』を『壱に告白した三人の誰か』だと思っていた。
だけど、違う。


「しかもね、席替えの班長会議の時に、私居たんだけどさ。壱、『話せる人のとこがいい』『後ろの席がいい』って言ってたんだけどね」
「……うん」
「壱うるさいから前にされて、隣うるさい乙葉になったからさ。喋れる人がいないし、嫌なんじゃない?」


……なるほど。
由良のこの言葉は、なんだか説得力があった。


「だから、依麻が嫌な訳じゃないと思うよ。依麻、告白未遂しちゃったしさ、壱は依麻の気持ち知ってるし……気まずいだけだと思う! ほら、あいつシャイだしさ? 大丈夫だー!」


由良のその言葉がなんだか心に響き、心の中が少し軽くなった気がした。
由良の言葉が本当だったら——……。
嫌われて、ないのかな?
本当に本当に、気まずいだけなのかな?


まだ少し、不安だけど。
それでも、昨日の時より断然に心の中が晴れていた。