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- Re: *叶恋華* +実話+ 107話更新! ( No.455 )
- 日時: 2011/04/24 19:36
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: udZFMs3r)
- 参照: 大 好 き で す 。
第百十一話『LoversXmas』
去年のクリスマス、私は泣いていた。
『今日は姫吉と愛可の、ラブラブ二ヶ月記念クリスマスデート!! の日です』
『……は?』
中学一年生の、十二月二十四日。
今からちょうど、一年前。
私がまだ、怜緒の事を好きだった時の話。
『今日のデート、どうすんのよ!!』
『……』
『怜緒聞いてる!?』
『勝手に決めろよ』
『はぁ!? 何よそれぇ!!』
二か月記念、クリスマスデート。
その単語は、当時の私にとって胸が痛いものだった。
愛可が怜緒を引っ張って、怜緒がそれに俯きながらも応える。
両想いになって付き合っても、二人はデートなんか一度もしたことがなかった。
だけど今日は、クリスマス。
恋人たちが幸せに過ごす、クリスマス。
二人がデートの予定を立てている、そんな光景が悔しくて。
『やっぱり二人はカップルなんだ』っていう現実が、悲しくて。
何も出来なかった、非力な中学一年生の私。
カップルの間に割り込めない、所詮でしかない私の片想い。
だって、自分の好きな人に彼女が居るんだよ?
怜緒は、私なんか見ない。見るはずがない。
君の視線は、いつもあの子しか映っていない。
それが、苦しくて。
あの日、私はその場から逃げ出した。
——あの時、私が頼れた場所は東玄関だけだった。
静まっていて冷たい東玄関は、なんとなく落ち着いた場所。
今より短い髪を揺らして、呼吸を乱しながら。
悔しくて、悲しくて、辛くて、切なくて。
何も出来ない、好きでいる事しか出来ない自分が惨めで。
ただただ、涙が溢れては止まらなかった。
『泣い、てる……?』
『っ!』
だから怜緒の声が聞こえた時、私は思わず肩を揺らした。
大好きだった、人。
怜緒の声と望の声が近づいてくると共に、鼓動の音が早くなったのを今でも覚えている。
『なんで泣いてるんだ……?』
『さぁ、俺に言われても……』
『……』
あの時、怜緒はどう思ったのかな。
愛可とデート出来なくて、きっと落ち込んでたはずだ。
そう、あの日落ち込んでたのは私だけじゃない。
怜緒も、落ち込んでいたんだよね。
『バカ依麻』
『?』
それなのに——。
その翌日、十二月二十五日。
ドアに寄りかかる怜緒が、私に話しかけてきた。
この日は、何故か怜緒に話しかけられるのが多い日だった。
冬休みに入る、終業式の日。
明らかにあの日、私はドキドキしていた。
『……何で泣いてたの?』
『なっ』
『なんで』
『だから、何でもないから……』
『教えろよ』
怜緒にだけは、悟られたくなかった。
嫌われると、思っていたから。
嫉妬なんて、醜いって思われる。
だけど、あの日の君は何回も私に聞いてきた。
泣いてた理由を。
だから、私は聞いてみたんだ。
『なんで——……、何で、そんなに私が泣いてた理由が気になるの?』
心配してくれてたら、嬉しかった。
今考えたら『自惚れてんじゃねぇ』って中一の依麻を殴ってやりたいところだけど……。
あの時は、単純に嬉しかった。
だから、
『さぁ……』
顔を逸らして、小さく呟く怜緒。
意味深だけど、些細な仕草。
そんな君が、本当に好きだった。
大好きだった。
「……」
——っとまぁ、去年のクリスマスを振り返りまして。
今年のクリスマスは、どうなるのかな。
学校は休みだし、壱には会えない。
でも今日、由良の家でクリスマスパーティーをする。
それはそれで、いいクリスマスだよね。
初めて家族以外と過ごす、初クリスマス。
それは嬉しいんだけど——……。
今 年 も 独 り 身 か
「……虚しい」
私はぽつりと呟き、バックを持って家を出た。
独り身だけど、もう去年の私みたくはならない。
何も出来ずに泣いてるだけの、クリスマスなんか願い下げだ。
……でも壱は、クリスマスをどう過ごすのかな。
今まで、どうやって過ごしてきたのかな。
気になっては、消えていく溜息。
ええい、今日はクリスマスパーティーだから楽しむんだ!!
私は考えを断ち切るように、走り出した。
雪降る聖夜。
それぞれの想いを抱え、
クリスマスへ——。