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- Re: *叶恋華* +実話+ 122話更新! ( No.479 )
- 日時: 2011/05/01 02:10
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: s26dq553)
- 参照: うわまたボツボツ聞こえてk「細まっちょ〜」ギャアアアアってなった(は
第百二十三話『隣』
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やってきました、三学期!!
あの零の悪戯以来、冬休みに連続で起きていたハプニングは幕を閉じ——。
冬休みの間、どこにも出かけず平凡に過ごしていました。
「——俺、海外行ったさ〜」
「まじでー? 私はね〜……」
クラスの皆は、冬休み何処に行ったかなんて話をしている。
海外なんていいな、羨ましい。
私は皆の話を盗み聞きしながら、自分の席でぼーっとしていた。
「……」
そんな中でも、やっぱり何度も視界に入っちゃうのが珠紀壱。
うん、やっぱ壱の学ラン姿かっこいい。
冬休みに色々あって気まずいけれど、やっぱ目で追ってしまう……。
何度も何度も逸らしては追いかけ、逸らしては追いかけの繰り返し。
こんなんじゃキリがないので、気を紛らわせるために窓の方を見ようとした時——……、
「宮田、まだ門倉のこと好きなの?」
「一途だねぇ」
後ろから声が聞こえてきた。
チラ見をしてみると、健吾と疾風が優の手紙を見て笑みを浮かべている。
優は少し慌てながら、一生懸命に手紙を取り返そうとしていた。
「メールの返事返ってこない〜! だってさ。壱だな」
「は?」
疾風が笑みを浮かべたまま、壱の方を見た。
あ、あら、いつの間に壱は自分の席に——……。
「メールの返事返さない」
「違うって、俺は! だってメールし——……っ、」
疾風の言葉に、壱は何かを言いかけてやめた。
な、なんだ!?
めちゃくちゃ気になったけど、私が気にする事じゃないよね。
まぁ、壱からメールの返事が返ってこないっていうのは悲しいけどさ。
私はそう思いながらも、前を向いて授業の準備をした。
**
国語のビデオ鑑賞の時間——。
教室は電気を消して暗くなり、静かな内容のビデオと言うことで、寝ている人が続出だった。
私も机の上でリラックスモードに入りながら、ビデオを見ていたが——……。
どうしても、壱が視界に入る。
壱も私みたいなリラックスした体制のまま、ビデオを見ている。
横顔、かっこいい……!!
正面の顔も横顔もかっこいいなんて、犯罪だね。
そんな馬鹿な事を思っていると、
「!」
壱がこっちに顔を向けた。
……またすぐに正面向いちゃったけど。
いやいや、突然こっちを向くなんて反則だ。
だけど、またこっちを向いて——なんて思ってしまう。
「……」
でも、付き合えないんだよねぇ……。
そうだよね……。
話したことないし、メアド知ってるのにメールは出来ないし。
直接メールしないで、由良が間に入ってくれてお互い伝言し合う形だし。
手を伸ばせば届く位、席は近いのに——。
やっぱり、距離は遠いよ。
*放課後*
やっと放課後だ……。
始業式なのに、普通に授業あるとやっぱ疲れるよね。
私はバッグを持ち、由良に話しかけに言った。
「由良ー、一緒に帰れる?」
「あー……、ごめんっ! 今日、亜夢と帰るんだ〜……。でも、玄関まで一緒に行こ!」
「あぁ……、亜夢先輩かぁ〜」
由良は両手を合わせて、申し訳なさそうに言った。
——亜夢先輩。
私たちより一つ上、つまり中学三年生のこの先輩は、女の子みたいな名前をしているけど列記とした男の子。
そして、由良の彼氏サン……である。
話を聞けば、某携帯サイトで出会って友達になり、直メするうちに通学路をいつも歩いてる先輩だと知り、由良の仲のいい友達の兄の親友だと知り——……。
色々絡むうちにお互い気になる存在になったらしく、冬休み中に付き合ったらしい。
正直言って、いつの間にって思うけど——。
ごめんなさい、素直に羨ましいです。
「そういや、冬休み中に亜夢とメールした時に依麻の事話したのさ」
「え?」
「『転校生で友達が少ない子で、私と仲いいんだ』って言ったら、亜夢が『なら、俺が友達になってやろう』って言ってたよ」
「……まじですか」
友達が少ない子って。
事実だけど、亜夢先輩に同情されてるよね。それも思いっきり。
……まぁとりあえず、
「ありがとうございます」
「それを亜夢本人にお礼言ってきな!」
「いやいや、亜夢先輩と私、話したことないし——」
「じゃあ、私が言っておいてあげる」
「ありがとう!」
さっすが、彼女。
てか私、また由良を通して伝言しちゃってるよ。
心の中で自分に呆れながらも、玄関への道を歩いていた。
「あれ? 亜夢、いないなぁ〜……」
「どこで待ち合わせしてんの?」
「玄関らへんなんだけど……。外かな?」
「じゃあ外まで行こうか〜」
亜夢先輩、まだ見た事ないしね。
由良の彼氏はどんな人なのか、この目で見ようじゃないか。
「——……あ、亜夢居た!!」
「え? どこ!?」
由良が叫ぶのと同時に、私は色んな方向を見回した。
どの人? あの人じゃないし、あれは一年生だし——……。
そう思ってると、
「由良」
「!?」
近くで低い声が聞こえた。
私は振り返り、慌てて声がする方を見た。
そこに居たのは——……。
もはや腰パンを超えているケツパン。
着崩した制服。
ワックスで散らした黒い髪。
だるそうなスクバの持ち方。
なんだか不機嫌そうな顔。
とにかく……、全体的にけだるけな雰囲気の男。
「——うわっ、びっくりしたじゃん亜夢〜」
由良は笑いながらそう言った。
どうやらやっぱり、この人が正真正銘の渡部亜夢先輩らしい。
チャラチャラしてる……うおお。
私は目が点になりながら、一歩ずつ後退りした。
「じゃあ亜夢も来たことだし……。依麻、ばいばいっ!」
「うぁ、ば、ばいばい! 頑張ってね」
ぎこちなくなりながらも由良に手を振る。
由良と亜夢先輩は校舎から離れ、自然に隣で歩きだした。
いいなぁ……。
チャラチャラした先輩だけど、由良も派手な方なので釣り合っている。
似合ってるねぇ、二人とも。
いいないいな、二人の世界じゃん。
由良のオーラからピンク光線が見えますよ。
私も壱と付き合えたらなぁ——……。
『——依麻』
『……あ、壱』
『お待たせ。……行こうか』
あは、あはははは。
叶うことのない妄想〜。
でも実際にさ、好きな人と一緒に隣で帰れたらやばいよ!
ドキドキ罪で死ねる。
「……はぁ……」
由良と亜夢先輩の後姿を見て、小さく溜息をついた。
『今は付き合えない』
そんな壱の伝言が、頭の中を駆け巡る。
付き合えたら、いいのにな。
ずっと一緒に居て。
由良と亜夢先輩みたいにさ——……。
傍にいれたら、いいのに。