コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 124話更新! ( No.486 )
- 日時: 2011/05/04 01:14
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: xSFqyKL7)
- 参照: 痛みを嫌うより 生きた証を残したい(by.ラセンナワタシ
第百二十六話『大好きな気持ち』
本当に、大好きだって思える。
「——いちじく、壱〜〜〜じく」
授業が始まる時、疾風が何度もふざけて壱を呼んでいた。
壱は体を捻り向きを変え、私の後ろの席の疾風を見る。
疾風を見る為に壱は動いた為、少しだけ私と距離が近くなった。
だけどなんだか、さっきの休み時間の出来事が頭を駆け巡る。
壱に勘違いされてたら、どうしよう——って。
壱の事、まだ諦めてないのに。
好きで、居たいのに——……。
「イーチジーク」
「……あ? 疾風、何か言ったか」
その壱の声と同時に、授業の始まりの挨拶が重なった。
みんな礼をしてから座り始める。
そして壱も座ろうとしたとき——……。
「——珠紀」
英語の教科担当教師——……、壱をイジる天才とも言える先生が低い声でそう呟いた。
しかしこのクラスには『珠紀』が二人いるので、壱なのか犬ちゃんの事なのかさっぱりわからない。
すると、
「珠紀壱」
「——え?」
先生がチョークを持った右手で壱を差し、そう言った。
……どうやら、壱だったみたいですね。
壱は目を丸くしている。
「珠紀壱、立て。起立」
「えぇぇ……」
「はい、気をつけ」
「……」
「これから三時間目の授業を始めます」
「……はじめまぁーす」
先生は壱一人だけを立たせ、挨拶をさせた。
壱はいつものだらけた口調でそう言い、座ろうとする。
しかし、
「……本当に始められるのか?」
「え? んあぁ、はい」
「じゃあ座れ」
壱の曖昧な返事に、皆は笑い始めた。
壱も小さく笑みを浮かべながら、ゆっくりと席に着く。
「……」
ボーッとしているような天然なところも、クールな見た目も。
けだるけそうな雰囲気で、めんどくさがり。
だけど、優しいし面白い。
ギャップが凄いけど、やっぱり大好きだ。
壱の笑みを浮かべた横顔を見て、はっきりそう思えた。
『付き合えたらいいのにな』
ここ最近、そんな感情ばかり湧き上がる。
恋をすると、不思議だよね。
好きな人の言動で、毎日が楽しくなったり明るくなったり。
時には辛くなったり、悲しくなったり——。
それだけど、やっぱり簡単には諦めきれないよね。
そう思える位、壱が大好きだ。
怜緒の時みたくならないように、頑張らなきゃって思える。
本当に、大好きだから。
中学一年生の時、今までの中で怜緒の恋が一番『本気の恋』だと思った。
あの恋で、もう『本気』は終わったと思ってた。
だけど、今回のこの恋こそが一番の本気なのかもしれない。
——改めて、そう思った。