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Re: *叶恋華* +実話+ 124話更新! ( No.487 )
日時: 2011/05/04 04:10
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Kkmeb7CW)
参照: 痛みを嫌うより 生きた証を残したい(by.ラセンナワタシ

第百二十七話『隣の笑顔』


**


給食時間が終わり、牛乳パックを持って水道へ向かう。
見れば、そこで牛乳パックを開いてる壱が居た。
——壱の隣、空いてる……。
私の心拍数は、一気に上がった。


「牛乳パック開いてってねぇ〜」
「あ、はい」


牛乳パックの係にあたっている班の人が、そう言った。
私は慌てて敬語で返事をしてしまいながらも、さりげなく壱の隣へ向かう。
う、うぉぉ近い……っ!!
自分で近付いたくせに、こんなにドキドキするなんて異常だ。
緊張で牛乳パックはうまく開けないし、心臓のドキドキが壱に聞こえてしまいそう……。
そう思ってると、


「……」


壱が開き終わった牛乳パックを軽い手つきでカゴに投げて、その場から去って行った。
おおう、行ってしまわれたぁ……。
ていうか素早く開いたのに綺麗ってどういうことですか、壱さん!!
こっちは意識しすぎて変なとこから破いたというのに……っ!!
私は壱の後姿に向かって、抗議した。


「——依麻ー!! 給食持ってくの手伝ってー!」
「あ、はいよー!」


廊下から由良に呼ばれ、私は失敗した無残な姿の牛乳パックをカゴに投げ捨てる。
そして小走りで廊下を歩いてる由良の元へ向かった。


その時——……。


「!?」


ちょうど階段の下の所で、壱らしき人とすれ違った。
……あ、れ!? さっき壱、牛乳パック終わって教室にいたよね!?
そう思いながら振り返ると、


「っ!」


ちょうど壱も振り返っていて、目が合った。
う、うわぁっ!!!!!
私は異常なほどに驚き、異常なほど慌てて逸らした。
今のって、偶然だよね——?
そんな胸のドキドキを抑えながら、由良の背中に追いついた。


「依麻、遅いんだけどー。もう給食置いちゃいましたよん」
「あ、ご、ごめん! ちょっと……」
「まぁいいのよん」


由良は笑みを浮かべて、私の背中を軽く叩いた。
私は軽くよろけながらも、笑みを浮かべる。
亜夢先輩と付き合ってから、機嫌いいなぁ……由良。
好きな人と付き合えたら、やっぱり毎日ご機嫌なのかな。
両想いになったこともないし、付き合ったこともないから私にはよくわからない。
でもきっと、好きな人と結ばれたら私は異常なくらいご機嫌になるだろう。
それは、なんとなくわかった。


失恋の痛みや片想いの辛さなら恐ろしいほどわかるのに——。
そう考えれば、私って幸せな恋愛をわかっていないな。


幸せな恋愛は、どんな気持ちになれるんだろう。



**


昼休みのチャイムが鳴り、廊下も教室も一気に賑やかになる。
教室に戻ると、壱は原田くんと中条と楽しそうに話していた。
あ、あら? やっぱりさっきのは幻覚だったのか——。
違う人? 見間違い?


「依麻、話そ」
「うん。——あ、ありがと」


由良は机に座り、私に椅子を進めてきた。
私はお礼を言い、椅子に腰を掛ける。
ちょうど私が座る位置では、原田くん達が見えた。


なので、由良と話しながら壱の事を見ていた。


「……あ、」


今、壱が笑顔浮かべた。
壱の笑顔、かっこ可愛いなぁ……。
キリッとした目が少しだけ細くなって、小さく歯を見せて笑う。
豪快じゃない、爽やかな笑い方。
なかなか間近で壱の笑顔見れないからなぁ——……。
授業中は伸びてるから、滅多に笑わないし。
男友達と会話してるときが、壱の笑顔を見れる時なんだよねぇ……。


『よくさぁ、笑顔が眩しいとか言うだろ』


突然疾風の言葉が、頭に過った。
壱の笑顔……眩しいね。眩しすぎて目が眩みます兄さん。
この笑顔で、他中の子を何人も落としてきたのか……とか言って。
でも他中で壱の事を好きって言う子は、絶対一目惚れだよね。
うん、私も壱に一目惚れしたから人の事言えないんだけどさ。
あの笑顔とスタイルなら、女の子の一人や二人簡単に落とせるだろう。
そして、あのクールな外見と天然な性格のギャップ。
女の子はイチコロなはずだ。
壱、かっこよすぎるからなぁ……。



私はその時間、壱を眺めながらしょうもない事を考えていた。