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Re: *叶恋華* +実話+ 127話更新! ( No.494 )
日時: 2011/05/05 02:42
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: h7rqA5xU)
参照: 痛みを嫌うより 生きた証を残したい(by.ラセンナワタシ

第百二十九話『視線の先』


*六時間目*


今日を締めくくる最後の授業は、理科だった。
そして今日は理科室での実験だった為、クラスの皆のテンションは上がっていた。


「なんで龍、制服なの」
「上忘れたからって言っただろうがぁ」


なんだか壱のテンションも高い。
今日はジャージ登校なのに制服を着て来てしまった龍をからかっている。
理科室では、壱の班は私の隣。
つまり教室で私と隣の壱は、私の後ろに居る訳だ。
いつもより声が近いし、テンションが上がってる為に壱の声はいつもより大きい。
や、やばい。


「——じゃあ、実験開始しろ〜」


先生がそう言った途端、理科室は騒がしくなった。
それと同時に皆班の人と協力して実験をし始める。
私は健吾たちに任せ、その場でボーッとしていた。


そんな時、


「ちょっとこっから見づらい」


壱が立ち上がり、壱の班の実験している隣の机へ向かった。
龍も実験を健吾たちに任せているので、壱の方を見る。


「ここ来れば?」


そう言って龍が差したのは、私の隣だった。
……え?
私は見なかったことにして、実験の方に集中する。


——それでも耳と眼中の端は、龍と壱の方に集中していた。


「え、……」
「ここに来いよ、壱」
「……や、うん、いいよ」


壱はそう断って、私たちの班から少し遠ざかった。
すると龍が小さく鼻で笑う。


「ふっ、そういって狙いは……」
「なんだよ?」
「ん」


龍が首を振って、何かを差していた。
その龍が首を振っている視線の先は——……、


「……」


………………。
……え、私?
なに、なんなんだ。
龍とバッチリ目が合ってしまったが、気付かないフリをした。


「は、……や、見づらいから来てるだけだし」


そう言った壱は、軽く笑っていた。
龍も笑みを浮かべる。
……状況が掴めないんですけど。
龍は私が壱の事を好きって言うのを知っているから——……。
もしかして、気を使って壱を隣にしようとしてくれた……とか?
もしそうだとしたら、龍ナイス。


私はそう思いながら、着々と繰り広げられる実験を見つめていた。


**


「——では、どんな実験結果になったか——……」


一回目の実験が終わり、先生が黒板の前に立って説明し始めた。
体の向きを変えて黒板見れば、壱が視界に入る。


「……」


私は黒板を見てるフリをして、壱を見ていた。
いつも教室では横顔を見てるけど——。
教室より近いので、いつもよりはっきり見える。
うん、理科室に感謝。


そう思った瞬間、


「っ!!」


壱が軽く振り向いて、こっちを見た。
私は慌てて逸らす。
……やば、見てたの気付かれたかな……?


「……」


数秒の間を置き、また少しだけ壱の方を見る。
壱はいつも教室で寝ている時のようなだらけた姿勢をとって、顔を伏せていた。
どうやら気付かれてなさそうなので、安心。


私は視線を逸らし、もらったレポートを書いた。