コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 132話更新! ( No.508 )
- 日時: 2011/05/08 01:50
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: vVNipMyd)
- 参照: 前髪だけストパーかけたいんだが、上手くいくかな(は
第百三十三話『バレンタインの想い出』
「——ねぇ、壱って彼女居るのかな?」
音楽の授業中。
私は隣の席の優に、周りに聞こえないくらいの小声で質問してみた。
優は何かと情報通だし、もしかしたら知ってるかも知れない。
そう思ったけれども——……。
「あいつ彼女とか居なくない? 噂とかも聞いた事ないし」
「そっかぁ……」
情報通の優がそう言うなら、少しだけ安心。
いや、でもまだちょっと不安。
男子同士、極秘の恋バナとかもあるだろうし——……。
「……ていうか依麻! 十四日のバレンタイン、どうするよ」
「へ? ……あ」
バレンタイン。
それは恋する女の子が、好きな男の子にチョコをあげる日。
そうだ、もう季節は二月なのか……!!
気付けばもうちょっとしか時間ないじゃん!
「依麻、壱にあげるの?」
「……あげたいなぁ……とは思ってるんですが……」
「いいじゃん、あげなよー!」
ちゃんとそこまで考えてなかった。
『まだバレンタインまで時間あるから、その時決めよう』と思いながら過ごしてきた訳で——。
気付けば、二月。時の流れって本当怖い。
実は私、バレンタインはあんまり好きなものじゃない。
そりゃあ好きな人に気持ちを伝える絶好なチャンスだと思うけれど……。
私の今までのバレンタインの過去が……ねぇ?
『——はいっ!』
『あ、ありがとう……』
小五時代。
当時好きだった、荒島大君に。
緊張しながらも渡せて、大君も受け取ってくれた。
だが——。
『ひゅーひゅー!! 依麻あついねー!』
『大やるなーっ!』
『依麻よかったねー!!』
その現場を、大勢に見られていた。
二人っきりの密室になれる、放課後の空き教室で渡したのだが、皆ドアの隙間から見ていたのだ。
そして次の日先生までにも広がり、しばらく恥をかいて暮らしたもんだ。
大にした記念すべき初告白も、見事に振られるしね。
『——義理っ!』
『え?』
小六時代。
当時好きだった野沢流の机に向かい、チョコを投げつけた。
大本命なのに、大きな声で『義理』と叫びながら。
この時はさほど周りにバレなかったが、結局流にも振られる訳で。
でもここまでは、まだ序の口だ。
問題なのは、中一時代。
『好きです……っ!!』
今までの中で一番嫌な想いをした、バレンタイン。
ていうか、一番盛大なバレンタインだったと思う。
森野と望と城沢をバックにつけ、当時好きだった姫吉怜緒にチョコと共に告白をした。
怜緒はチョコを無言ながらも、チョコを受け取ってくれた。
だけどアイツは、アイツは……っ!!
後日に『告白されてない』だの言ってごまかし、あげくの果てに返事も思いっきり期待させられた。
なのになのに……っ!!
『普通』なんて曖昧な事言われて、振られて……!!
あぁ、今思い出せばなんだか腹が立ってきた。
私のバレンタイン歴史で、上手く行ったのなんか一つもない。
全部失敗だ、しかも見事に全部。
あげくに三人ともに振られると言うね、はははは。
だから今回は——。
なんだか、壱にチョコをあげるのが怖かった。