コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 134話更新! ( No.518 )
- 日時: 2011/05/09 18:28
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: lG2/Mifs)
- 参照: 小顔になりたいよぉぉぉ←
第百三十七話『マシな人』
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「——依麻、保健室着いてきて〜」
「はいよー」
体育の授業が終わり、由良に言われ保健室前に着いて行った。
どうやら亜夢先輩と合う予定らしい。
羨ましいね、このやろー。
そう思いながら廊下の方を見ていると、
「!」
ちょうど廊下を通りかかった壱を発見した。
壱は階段を上がったところで振り向き、軽く目が合った。
「……っ」
い、今こっち見たよね!?
いや、偶然だ偶然。
私が目で追ってたからだよ。
だけど——。
やっぱり、こんな些細な偶然でも喜んでいる私がいた。
**
「——壱、彼女にするなら誰なのか教えてよ〜!!」
教室に戻り、給食時間。
先ほどの出来事で少しだけテンションが上がっていた私だが、志保ちゃんの一言で一気にテンションが下がった。
なんで、そんな事を壱に聞くの?
少しだけ胸が苦しくなりながらも、二人の会話を聞いていた。
「そんな人いんの? ……ぁ、わかんない」
「何それ!」
「いきなり言われたってわかんないし」
「体育の前も言ったばっかじゃん!!」
志保ちゃんは、拗ねた様な口調で言った。
壱の『わかんない』って言葉が、胸に引っかかる。
なんだか、複雑な気分だ。
「俺、あんま話したことない女子ばっかだし」
「えー? じゃあ犬ちゃんは!」
「え!? 俺!? 俺も、壱と同じ……」
突然話題を振られた犬ちゃんは、焦りながらそう答えた。
そして話題から逃れようとするため、犬ちゃんはこう言った。
「てか俺付き合ったことないし、よくわかんない」
「俺も俺も!」
犬ちゃんの言葉に同意するように、弾むような声で壱はそう言った。
付き合ったこと、ない——?
壱の言葉に、いちいち胸が締め付けられる。
すると志保ちゃんは更に拗ねて、こう言った。
「壱、教えてくれなきゃ給食わけてあげないから」
「……わーっと、まじっすか」
壱を釣る方法、給食。
大食いの壱にそれは反則だ。
ずるいよ、志保ちゃん。
そう思う私は、やっぱ我侭なのかな——。
「じゃあもう、彼女にしたい人じゃなくていい!! マシな人は?」
「マシな人?」
「教えてよ〜」
志保ちゃんは声を張り上げ、そう言った。
その途端に壱の班は一気に静かになり、何か小さな話し声が聞こえてくる。
気になる、気になる——。
私は心臓の鼓動を押さえつけ、必死に耳を傾けた。
しかし、
「——ほら! 壱、マシな人言ったよ! 次は犬ちゃん!」
その志保ちゃんの一言で、一気に力が抜けた。
それと同時に、心臓は苦しいくらいに痛くなる。
「えー!? 壱なんて言ったの!?」
「や、言えない……」
『言えない』——。
その壱の言葉は、やめてほしい位に脳内に響いた。
マシな人なら、別に言ったっていいのに。
言えない人なの?
その人が、もしかして——。
壱の、好きな人なの?
「でも、マシなだけで付き合いたいってわけじゃないでしょ」
乙葉がそう言い、周りはまた騒ぎ始めた。
その乙葉の一言に、壱はなんて言ったのか。
もう、会話を聞く気にもなれなかった。